再評価される「自治体災害協定」

公明新聞:2013年5月28日(火)付

市の関係者の案内で、がれき処理場を視察する甚野県代表ら=25日 相馬市内市の関係者の案内で、がれき処理場を視察する甚野県代表(左端)ら=25日 相馬市内

公明党相馬支部主催「防災・減災フォーラム」から

福島・相馬市

東日本大震災を機に災害時の自治体間協力のありように対する関心が高まる中、公明党福島県本部相馬支部(高橋利宗支部長=相馬市議)が25日、「自治体災害協定」をテーマにした防災・減災フォーラムを相馬市内で開催した。同市と協定を結ぶ東京都稲城市や栃木県日光市、新潟県三条市の公明市議のほか、井上義久幹事長、甚野源次郎県本部代表(県議)、立谷秀清・相馬市長らも参加した同フォーラムでの討論から、災害応援協定の意義や課題について考える。(東日本大震災取材班)

“つながり”で国土強靱化
井上幹事長 「公明のチーム力で推進」


自治体間の災害協定の在り方をめぐって活発に討論した防災・減災フォーラム=25日 相馬市役所内フォーラムの会場となった相馬市役所3階の会議室は、大震災発生の“あの日”いらい、立谷市長を本部長とする同市の災害対策本部が置かれてきた部屋。室内の一角には今も、「あの日の記憶を忘れないために」との同市長の提案で、震災直後の被災状況などを書き記したホワイトボードがそのまま残る。

そのボードを前に、まず高橋支部長が開会のあいさつ。「震災の風化が進む中、公明党が盾となって、防災・減災意識を全自治体で共有し合う環境を築いていこう」と呼び掛けた。

続いて登壇した甚野県代表は、この日のフォーラムが立谷市長の発案で実現したことを紹介した上で、「自治体間の災害協定は安全・安心のための大切な装置だが、その中身に不備な点が少なくないことも事実」と指摘。全国のモデルともなる協定の形をこの相馬の地で検討し合い、全国に発信していきたいと訴えた。

この後、立谷市長が「災害対応は義理と人情」と題して講演。この中で同市長はまず、災害協定をテーマにしたフォーラム開催を思い立った経緯に言及し、「3.11を通して、自治体間協力の大切さを身を持って感じたゆえ」と強調した。

立谷市長によると、同市が3.11以前から災害協定を結んでいた自治体は全国に7自治体。3.11では、これらの自治体から「感謝し切れないほどの支援を受けた」が、同時に「多くの教訓も得た」という。

そこで、この問題意識を共有できるのは「全国的な広がりを持ち、国会・地方議員が密接につながっている公明党しかない」との思いから、高橋支部長に打診してこの日のフォーラムに至ったと説明した。

続いて立谷市長は、3.11直後から現在までの相馬市の復興の歩みをスライドを使って振り返るとともに、自治体間協力の強化に向けた市の取り組みを説明。(1)複数の自治体との新たな「災害時相互応援協定」の締結(2)提携先自治体が被災した場合、即時支援できる態勢の確立(3)そのための基地となる「大型防災備蓄倉庫」の建設―などを紹介する一方、「支援をスムーズに行うにはタフな道路の整備が不可欠」として国や県の対応を求めた。

この後、参加者全員による意見交換を経て、締めくくり討論に立った井上幹事長は、防災・減災には「社会資本整備などのハード対策と、防災教育や避難所運営のノウハウ、災害協定などのソフト対策の両方が欠かせない」と指摘。

その上で、災害協定の在り方については「形式を排し、実をめざすことが重要だ」として、そのために「自治体と自治体」の枠組みを超え、「自治体と企業」「自治体と大学」、さらには「異業種の企業間」など、より幅広い“つながり”づくりの可能性も探っていきたい、とも強調。さらに、「こうした挑戦ができるのは、全国に3000人の議員ネットワーク力、チーム力を持つ公明党しかない」ことも力説した。

記者の目
協定締結3つのポイント

▼具体的な内容に
▼日頃から交流を
▼遠隔地も“隣人”


消防庁によると、災害協定を結んでいる自治体は全国で約9割。大半の市町村が既に締結済みというわけだが、数字だけを見て満足するわけにはいかない。“掛け声倒れの約束事”で終わっているケースも少なくないからだ。東日本大震災の際にも、せっかくの協定が効果的に機能しなかった事例が少なからずあった。

党相馬支部主催のフォーラムは、こうした問題意識に立って開かれた。参加した公明党地方議員たちは「一市町村議会の一議員」という枠を超え、全国レベルの視点から「あるべき災害協定の形」を摸索し合った。その「真摯な討論」(立谷市長)から浮かび上がった「実効性ある災害協定」の要件は、大きく3点に絞られよう。

第一に、ともすれば抽象的、総花的な表現が並びがちな協定を具体的、個別的な文言を盛り込んだものにすること。指揮系統から物資・人員支援の手順、情報提供の在り方、さらには避難者受け入れ態勢や費用負担の方法に至るまで、細部にわたってきめ細かい取り決めを交わすことが重要だ。

第二には、日ごろから共同防災訓練を実施するなど交流と連携を深め、信頼関係を築き上げておくこと。「相手の自治体をよく知っておかないと、いざというときに腰砕けになりかねない」(井上幹事長)。

第三に、提携先の自治体を遠隔地にも求め、複数の市町村で重層的に支援し合う体制を築きたい。近隣自治体同士だけの協定では、共に被災するため、3.11のような広域災害には対応できないからだ。

各自治体に求められるのは、こうした点に配慮して、既にある協定を、あるいはこれから結ぼうとしている協定を今一度精査してみることだろう。そうして、「横の連携による“生きた相互支援網”」(井上幹事長)を列島全域に張り巡らし、ソフト面からも国土強靱化を強烈に推し進めていきたい。

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