主張攻めの企業経営の好機

公明新聞:2013年5月13日(月)付

将来見据えた戦略的取り組みを

相次ぐ黒字決算

2009年4月以来、約4年1カ月ぶりである。ニューヨークと東京の両外国為替市場で円相場が、ついに1ドル=100円の大台を突破した。

大胆な金融緩和の浸透効果に加え、米国の雇用改善が好感されてドル買い・円売りが進んだためだ。欧州経済の低迷が長引く中で、米国の景気回復は世界経済の下支え役を担う。

日本の経済界にとって歴史的な円高から脱却した今が、攻めの企業経営へ転じる好機である。超高齢化社会の到来で、国内市場の縮小は避けられない。民間企業が試行錯誤し、付加価値の高い製品や技術、サービスを生み出していかなければ日本経済の生き残りは厳しい。積極的な財政政策から民間主導の経済成長に移行していくタイミングかもしれない。

円高の是正で、輸出産業を中心に黒字決算が相次いでいる。自動車分野を筆頭に、円安で輸出や海外販売の採算が大きく改善したことが寄与した。

円安の恩恵は、スマートフォン(多機能携帯電話)に組み込まれる電子部品、太陽光発電など再生可能エネルギーといった世界的に市場が拡大する分野にも広がり始めている。いずれも日本の高い「ものづくり」の技術力が際立つ分野だ。

リーマンショック以降の円高は日本企業に防戦一方の戦いを強いてきた。現在の局面は、これまで手控えてきた人材育成や設備投資の方針を転換して、攻めの戦略を描いていく貴重な“追い風”になる。各企業の将来を見据えた取り組みを大いに期待したい。

政府が果たすべき役割も忘れてはいけない。円安効果で、海外からの旅行客数が急速に回復している。日本政府観光局(JNTO)によると、3月の外国人訪問者数は、前年同月比26.3%増の85万7000人となった。3月としては過去最多である。

世界文化遺産への登録を勧告された富士山をはじめ、日本の魅力を国を挙げて伝え、観光立国実現への音頭を取ってほしい。

政府は6月に、金融緩和、財政政策に続く“3本目の矢”を放つ。経済成長戦略である。海外でも人気の高い日本の農産物が、円安を生かして新たな海外市場を開拓できるぐらいの画期的な内容を望みたい。

輸出産業の業績回復は、日本経済にとって久々に明るい材料となった。取り戻しつつある勢いを加速させ、デフレの脱却に向けて、官民協力して知恵を絞る時である。

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