主張ドクターヘリ 広域運用で救命率向上を

公明新聞:2012年11月1日(木)付

今月中に40機体制 全国ネットワークも視野に

医師が乗り込み、救急現場に飛んで患者を治療する「ドクターヘリ」が、今月15日に山形県が県立中央病院を拠点に配備することで、全国40機の運航体制(東京都は独自の東京型ドクターヘリ7機で対応)となる。

救命救急の切り札として、公明党がいち早く全国配備の必要性を主張し、2007年のドクターヘリ法制定を主導して5年余、いよいよドクターヘリの全国ネットワーク構築も視野に入ってきたことを歓迎したい。

日本航空医療学会によると、ドクターヘリで治療を受けた人は昨年度だけで1万2239人に上る。東日本大震災でも17道府県から18機が集結し、孤立した宮城・石巻市立病院の入院患者約90人を搬送するなど機動力を発揮したことは記憶に新しい。

ドクターヘリの運航は01年に岡山県で始まったが、1機当たり年間2億円近い予算が掛かるため、多くの自治体が導入に“二の足”を踏んでいた。この状況を打開したのが、基金による助成で自治体の負担を大幅に軽減する仕組みを整えたドクターヘリ法の制定だった。

これを機に導入が進み、特に今年は新たに11県での導入ラッシュとなった。

だが、まだ道半ばであり、課題もある。

重症患者の救命率を上げるには、15分以内に現場に到着し、適切な治療をすることが必要だ。この「15分ルール」を確立するには、ドクターヘリによる全国カバーが欠かせない。そのためにも、50機程度の全国配備を急ぎたい。

また、どのドクターヘリも県境に関係なく、災害時のみならず日常的に広域圏単位で運用できる「広域運用」ネットワークを構築することが、さらなる救命率向上の鍵を握っているといえよう。

例えば、鳥取、京都2府県は10年4月、兵庫県が導入したドクターヘリでの共同運航を開始。青森、岩手、秋田の北東北3県も県境を越えた広域運用へ検討を進めている。こうした動きを全国で広げていきたい。

一方、ドクターヘリの拠点病院から委託された運航会社が受け取る運航費用は現在、1機当たり年間400回の出動を想定し、約1億9000万円が上限だ。だが、実際の出動回数は想定よりも多く、出動するほど運航会社の赤字は増えてしまう。この問題も改善が急がれる課題だ。

公明党は今後も、国会議員と地方議員のネットワークを生かし、これらの課題解決に全力で取り組んでいく。

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