主張再生医療 実用化に向け厚い支援を

公明新聞:2012年10月12日(金)付

ノーベル賞受賞を機に 規制緩和や法整備進めよ

今年のノーベル医学・生理学賞が、京都大学の山中伸弥教授らに贈られることが決まった。

山中教授の受賞は「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を世界で初めて開発した業績が高く評価されたものだ。その栄誉を心から祝福したい。

iPS細胞は、体中のさまざまな組織や臓器の細胞になる能力がある万能細胞だ。人の皮膚細胞などから作ることができ、生命倫理の問題が少なく、拒絶反応の心配もないことから、病気などで失われた組織や臓器の再生をめざす「再生医療」の“切り札”になると期待されている。

例えば、将来、脊髄を損傷した患者にiPS細胞から作った神経細胞を移植して治療できるようになるかもしれない。難病対策や新薬開発なども含めて、実用化に向けた研究を進展させていきたい。 

一方、こうしたiPS細胞や、受精卵から作る「胚性幹細胞(ES細胞)」などを使った再生医療をめぐる国際競争は激しさを増しつつある。

日本の再生医療は、iPS細胞の研究では世界でトップレベルに位置しているものの、培養皮膚などの再生医療製品の実用化件数は、欧米や韓国に比べて著しく少ない。

これは実用化に対する規制の違いが影響している。

欧米や韓国は、再生医療製品への優先審査制度など柔軟な規制を設けているが、日本では行われていない。そのため、例えば培養皮膚の場合、再生医療製品の治験申請から製造販売承認までにかかる期間が、韓国では1年9カ月で済んだのに対し、日本では約7年もかかったケースもある。

安全性は厳しく確保されなければならないが、研究者などからは、再生医療の実用化を促す規制緩和や新たな法整備を求める声が上がっており、対応が急がれる。

また、欧米は多額の研究資金を投じており、研究者の層も厚い。日本も、そうした面での支援をさらに強化していく必要がある。

経済産業省によれば、再生医療の世界市場規模は2010年の約650億円から、10年後の20年には約8700億円に急拡大すると予測されている。再生医療は新たな成長分野であり、日本も産官学が一体となって研究の推進に取り組まなければならない。

公明党は、自公政権下で科学技術振興予算の大幅増額を実現し、iPS細胞の研究などを後押しした。先月には党再生医療推進プロジェクトチームも発足させた。“夢の医療”前進へ、今後も全力を挙げていきたい。

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