自殺防止対策が急務

公明新聞:2012年10月4日(木)付

注目集める“命の門番”研修
東京・足立区

自殺防止対策が急務だ。今年1~6月(上半期)の全国の自殺者数は、昨年同期比で11.7%減の1万4154人(警察庁発表)だったが、それでも通年で3万人に迫る数だ。こうした中で、NPO(民間非営利団体)「ライフリンク」と提携し、自殺防止に力を入れる東京都足立区の取り組みが注目を集めている。


「これほど身近だったとは」  受講後、スタッフの意識が変革

ゲートキーパー研修を受講する参加者=東京・足立区「この10年間で自殺によって失われた人数は1616人。区内の町会が丸々1つ消滅した数に匹敵する」―。東京都足立区がライフリンクと提携して開催する「ゲートキーパー(命の門番)研修」の会場は、参加者の緊張した雰囲気に包まれていた。そして、研修を終えた参加者は、一様に口をそろえた。「自殺がこれほど身近な問題だったとは……」「周囲で“SOS”のサインを送る人の手助けをしたいと考えるようになった」。

足立区は2006年、区内の自殺者数が東京23区内でワースト1になった。事態を重く受け止めた同区は、09年からライフリンクと提携協定を結び、(1)「気付き」のための人材育成(2)当事者に対する支援策(3)関連団体とのネットワークの構築強化(4)区民への啓発・周知―という4本柱で、自殺対策の取り組みを強化した。

同区の取り組みでひときわ重要なのが、「気付き」のための人材育成だ。窓口で相談を受けても、スタッフの側が「まさか自殺はしないだろう」という感覚であれば、自殺予防にはつながりにくい。

ゲートキーパー研修を受講する参加者は終了後、「自殺は身近な問題」と意識が変わっていた=東京・足立区このため、同区は研修を通して「『まさか』ではなく『もしや』という意識を持つことを重視している」(同区こころといのち支援担当課)という。研修内容は好評であり、同区人材育成課と連携して全職員の必修研修と決めた結果、区役所職員全体の9割が3時間にわたる研修を受けた。また、民生・児童委員は、同研修を「全員研修」と位置付けて、今年度末までに560人全員が受講する。

研修は3段階に分かれている。初級では、自殺の実態や予防支援の重要性について学ぶ。中級では、相談窓口のスタッフ向けの内容で、相手の話や考えを否定することなく受け止めて聴く「傾聴」の技術などの講習を受ける。そして、上級では、中小企業経営支援や就業促進支援など、行政の支援策を学び、相談者の悩みと各支援策に結びつけるためのレクチャーを受ける。

同課の馬場優子課長は、「研修参加者の多くは、自殺が身近な問題であり、その予兆を意識的にキャッチしようという意識に変わっている」と指摘する。


相談窓口で“SOS”をキャッチ
行政と民間の連携で適切な支援へ


「最近、眠れていますか?」「正直、寝付けないことが多い……」。これは、同区内の相談窓口で行われているスタッフと相談者のやり取りだ。スタッフによると、「眠れていない場合は、複数の悩みが重なり深刻な状態になっているケースが多い。中には自殺を考えている人も少なくない」という。

同区の「雇用・生活・こころと法律の総合相談会」の例を見ると、2011年に相談会を利用した233人のうち、約13%が自殺を考えている状態だったという。馬場課長は、「相談会に訪れる人は『生きたい』と思っている一方で、『もう終わりにしたい。死にたい』という気持ちも秘めている人が少なくない」と指摘する。

このため、同区は行政と民間の相談窓口が連携し、相談者にとって適切な支援に結びつけることで、「相談者の悩みや自殺要因を早期に断ち切る」(同課)よう取り組んでいる。これが「都市型モデル」といわれる足立区の対策の特徴だ。

こうした取り組みを続けた結果、10年には179人だった同区の自殺者数が、翌11年には30人減(17%相当)の149人となった。東京都全体で自殺者数が増加している中で、注目すべき数字だ。

ライフリンクの調査によると、自殺者のうちの約72%は、亡くなる前に何らかの相談機関に訪れているという。ライフリンクは、「自殺は心の弱い人が選んだ死だと思われがちだが、実際は生きたいと願う人が追い込まれた末での死だ」と指摘する。

自殺する前段階での生きる支援を充実させるため、同区のように相談窓口で区民の“SOS”を受け止め、適切な支援策に結びつける取り組みが求められている。


自殺対策基本法の制定を推進。
うつ病対策も

公明


公明党は、自殺対策基本法の制定(2006年)を推進するなど、自殺防止対策に努めてきました。

また、自公政権時代の09年度補正予算で「地域自殺対策緊急強化基金」(3年間で100億円)の設置をリードしました。各都道府県が同基金を活用することで、電話相談窓口の充実や自殺未遂者への訪問事業など、具体的な取り組みが進められてきました。

さらに、同基金事業は、昨年度末に終了予定でしたが、公明党の要請で今年度も事業が継続されています。

一方、自殺との関連性が強い、うつ病への対策として「認知行動療法」の保険適用も実現しました。公明党の重点政策案(9月22日現在)でも、職場や地域で、うつ病の早期発見・早期治療体制を整備するほか、認知行動療法や適切な薬物療法の普及を推進し、訪問支援体制を拡充することを訴えています。

公明党は、党内に設置している自殺防止対策プロジェクトチームを中心に、自殺予防に全力で取り組んでいます。

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