主張穀物価格の高騰 食料危機の再発を防げ

公明新聞:2012年8月28日(火)付

政府は飼料価格安定に総力を

穀物の国際価格が高騰している。

トウモロコシ、大豆の世界最大の生産国である米国が56年ぶりの大干ばつに見舞われ、被害は国土の6割以上に及ぶほど深刻化している。作柄の急速な悪化により、トウモロコシと大豆の価格が上昇し、トウモロコシは史上最高値を更新した。連動して小麦も値上がりしている状態だ。

穀物の価格上昇は、開発途上国の社会不安や世界経済の足かせとなる恐れがある。2008年の食料危機では、アフリカなど世界各地で暴動が頻発し、多くの死傷者を出した。こうした危機の再発は防がなければならない。

先進国の金融緩和を背景に、投機資金が市場に流れ込んでいることも高騰に拍車を掛けている要因といわれる。

価格安定に向け主要20カ国・地域(G20)の緊急会合も検討されている。各国が連携し、影響を最小限に抑えるための取り組みに期待したい。

日本の食卓への影響も心配だ。

農林水産省は22日、小麦の国際価格の上昇を受け、政府が製粉会社に売り渡す輸入小麦の価格を10月から平均3%引き上げることを発表した。日本は国内で消費される小麦のうち約9割を輸入に頼っており、今後、パンやめん類などの食品が値上がりする恐れが出てきた。

畜産・酪農への影響も看過できない。

輸入されるトウモロコシの大半は、牛や豚などの餌となる配合飼料に消費されている。飼料価格の上昇は、食肉や乳製品、卵などの値上がりへと波及する。

実際、乳牛大手メーカーは相次いでバターなどの値上げを発表しており、既に影響は出始めている。今後の動向への注視が必要だ。

こうした状況の中で、畜産・酪農家からは経営悪化への不安の声が上がっている。

公明党の井上義久幹事長が「政府は責任を持って飼料価格の安定化に総力を挙げるべきだ」として、飼料購入費を補助する「配合飼料価格安定制度」の財源確保や弾力的な運用などを求めたのも、そのためだ。

今、中国など新興国では食肉の消費量が増え、飼料用も含めた穀物需要が増加しつつある。日本の食料自給率は39%(カロリーベース、11年度)であり、食料を海外からの輸入に頼れば頼るほど、そのリスクは高まる。「食料の安全保障」の構築が急がれる。

公明党も食料自給率の向上に全力を挙げて取り組んでいく決意だ。

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