主張児童虐待問題 「早期発見」へ連携強めよ

公明新聞:2012年8月1日(水)付

児童福祉司の増員など 孤立する親への支援拡充を

父母らによる暴力やネグレクト(育児放棄)などの児童虐待が深刻さを増している。

厚生労働省によると、全国の児童相談所が昨年度に対応した児童虐待の相談件数は、前年度を3478件上回る5万9862件(速報値)となり、21年連続で過去最多を更新した。児童虐待に対する住民の意識が高まり、通報が増えたことも一因と見られるが、多くの子どもたちが苦しんでいる事態を重く受け止めなければならない。

虐待は発見が早ければ早いほど、事態の悪化を抑えることができる。地域はもちろんのこと、虐待に気が付きやすい学校や医療機関などが、児童相談所との連携を一段と強めていくことが重要だ。

ただ、残念ながら支援の手が間に合わず、子どもの命が奪われてしまう悲劇もまだまだ多い。

厚労省の専門委員会の分析によれば、2010年度に児童虐待で亡くなった子ども51人(心中を除く)のうち、0歳児は23人と最も多く、3歳以下の事例を合わせると8割超を占めている。

注目すべきは、虐待死した子どもの実母の多くが「若年妊娠」や「望まない妊娠」などの問題を抱え、医療機関での健診や行政のサービスも受けていなかった点だ。育児不安を抱えながらも誰にも相談できず、孤立を深めていることが虐待を生む原因になっているといえ、行政による積極的な支援が欠かせない。

それだけに、児童相談所の体制拡充は待ったなしだ。

児童相談所に寄せられる相談は、児童虐待の他に不良行為や不登校などさまざまで、現場の児童福祉司は多忙を極めている。

また、児童虐待防止法が施行された2000年度と昨年度を比較した場合、虐待の相談件数は約3.4倍も増加したのに対し、児童福祉司の増員は約2倍にとどまっており、人手が追いついていないのが実情だ。

これまで公明党が児童福祉司の増員を繰り返し訴えてきたのは、そのためだ。

一方、今年4月からは新たな試みが始まっている。虐待する親が「親権」を盾に介入を拒んだ場合、子どもを守るために最長2年間、親権を停止する制度だ。実際、6月までに7件の事例があったという。今後、親が更生して子どもが家に帰った時、親子関係が回復できるような支援が重要になろう。

公明党は子どもの命を守る観点から児童虐待防止策をリードしてきた。今後も課題の解決へ全力を挙げる決意だ。

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