主張世界難民の日 人道危機の連鎖阻止を

公明新聞:2012年6月20日(水)付

国内受け入れ態勢の拡充急げ

きょう6月20日は、国連が定める「世界難民の日」。世界中で、また日本でもさまざまなイベントが行われる。積極的に参加し、「難民が感じている孤独や絶望感に思いを馳せ、私に何ができるかを自問する日」(2000年12月の国連総会決議)としたい。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の最新報告書「2011年グローバル・トレンド」によると、11年は難民がこの10年間で最も多く発生した記録的な年となった。

10年末の内戦勃発で始まったコートジボワールの人道危機はその後、リビアやシリア、チュニジア、さらにはソマリア、スーダン、マリなど中東・アフリカの国々へと波及し、わずか1年間で430万人もの難民・避難民を生んだ。昨年末時点での世界の難民・避難民数は4250万人を数える。

中東・アフリカ地域での人道危機の連鎖は、今に至るもやむ気配がない。

つい先月、子ども49人を含む100人以上の一般市民が虐殺されるという事件があったシリアでは、難民数は昨年の2倍の7万人を超えた。戦闘が激化しているスーダンと南スーダンの国境地帯でも、この数カ月間で20万人近い難民が発生。マリでも31万人、コンゴ民主共和国でも30万人が新たに故郷を追われた。

「グローバル・トレンド」を見て気になるのは、その数字もさることながら、ここ数年、難民・避難民を生む要因が複雑化していることだ。A・グテーレス高等弁務官も「近年は紛争だけでなく、気候変動や人口増、食糧危機、水不足、資源争奪など多くの複合的要因によって難民が生まれている」と指摘している。

事実、スーダン難民発生の背景には、武力衝突以外に食糧不足があり、多くは“飢餓難民”だ。マリ難民も、国内紛争と大規模干ばつと食糧危機の三重苦にあえいでいる。

もう一つ、憂慮されるのは、難民キャンプでの長期生活が常態化していることだ。母国帰還の困難さが増していることをうかがわせる。

これらの課題を克服するには、国際社会の結束が欠かせない。民主政治の実現や食糧確保など息の長い取り組みが求められる。

日本はタイの難民キャンプで暮らすミャンマー難民を対象に、「第三国定住」制度による受け入れを試験的に実施している。だが、欧米諸国に比べて受け入れ数は格段に少なく、依然として敷居は高い。

「難民政策はその国の人権感覚を映す鏡」(山口那津男代表)だ。拡充を急ぎたい。

公明新聞のお申し込み

公明新聞は、激しく移り変わる社会・政治の動きを的確にとらえ、読者の目線でわかりやすく伝えてまいります。

新聞の定期購読