主張震災関連死 生き延びた命を守りたい

公明新聞:2012年6月12日(火)付

今もなお続く悲劇 心のケアと生活支援の拡充を

「せっかく生き延びた命なのになぜ」。遺族ならずとも、そんな無念の思いが込み上げてくる。傷ついた命の救済策を急がねばならない。

東日本大震災から1年3カ月。長期にわたる避難生活の過酷さや将来への不安などから、体調を崩して死亡したり自殺したりする「震災関連死」が後を絶たない。

復興庁によると、3月末現在、震災関連死として認定された死者数は10都県で1632人を数え、既に阪神・淡路大震災の921人を大幅に上回っている。未審査分や4月以降の死者なども含めると、その数はさらに増える。

1632人の内訳は、福島761人、宮城636人、岩手193人などで、東北3県で全体の約97%を占める。死亡時期別では、震災から「1週間超~1カ月以内」が510人と最も多く、次いで「1カ月超~3カ月以内」が459人。早い時期での死亡が大半を占め、時間の経過とともに減ってきてはいる。

だが、楽観は許されない。復興が遅れる中、被災者の経済的、精神的負担は以前より増している。医師や保健師ら専門家は「不便な仮設暮らしが続き、避難者の心身の疲れはピークに達している。今後、関連死が急増する恐れは否定できない」と指摘する。

中でも気になるのは福島県の避難者だ。データを見ても、震災発生から「3カ月超~6カ月以内」の死者が全体の7割以上を占め、半年後以降の死者数も他県より多い。先月28日にも同県浪江町で、一時帰宅した62歳の男性が首をつって自殺している。

背景に、一向に収束のメドが見えない原発事故の影響があるのは間違いない。生活環境の激変によるストレスや、先の見えない将来への不安が想像以上に積み重なっていると考えられる。除染や賠償問題の解決など、帰還に向けた環境づくりを急ぎたい。

それにしても、あれほどの惨劇をくぐり抜けた命がここに来て死に追いやられるのは、いかにも残念で悲し過ぎる。地元自治体はボランティアや医療機関などと協力し、これまで以上に心のケアと生活支援に努めてもらいたい。

復興庁も今月末に東北3県で実態調査を行い、8月に対策を取りまとめる方針を示しているが、もっとスピード感をもって取り組めないのか。後手後手の対応では死者と遺族の無念は浮かばれない。

目に見える形での復興の加速も求めたい。被災者にとって、それが何よりの“元気の素”であり、最大の関連死防止策に違いないのだから。

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