防災・減災ニューディール

公明新聞:2012年5月23日(水)付

石井啓一政調会長石井啓一政調会長

石井啓一政調会長に聞く

災害に強い国づくりと経済活性化をめざし、公明党は10年間で100兆円を集中投資する「防災・減災ニューディール」を提唱しています。その狙いやポイントについて、石井啓一政務調査会長に聞きました。

狙いは何か
大地震などに備え、老朽化した橋や道路などの修繕を加速させる。
公助を軸にした防災力を強化するとともに経済の活性化を促す。


—防災・減災ニューディールの狙いは何ですか。

石井政調会長 防災力の強化には、自助・共助・公助の取り組みが重要ですが、公助の基盤になっている橋や道路などの社会資本(インフラ)の多くは今後、急速に老朽化し、防災力の低下が心配されています。

一方、リーマン・ショック以降、ヨーロッパの金融不安も重なって景気の低迷が続いており、経済の活性化も急務です。公助を中心とした防災力の強化と経済の活性化の両方を実現するために、公明党は防災・減災ニューディールを打ち出しました。

—バラマキにはなりませんか。

石井 ムダな公共投資を行うのではありません。国民の生命を守るため、社会資本の老朽化対策や防災・減災対策を計画的に行うのです。橋などは予防的に修繕して寿命を延ばした方が、コスト(費用)を抑えることになります。実際に震災などが起きた場合にも、補強されていれば被害を減らすことにつながります。

具体的な進め方は
推進基本法を制定し10年間で100兆円を計画的に投入。
高速道路や新幹線の整備、学校、住宅の耐震化を大きく前進させる。

—どのような分野に100兆円を投資するのですか。

増大する社会資本の維持・更新費の見通し 「防災・減災ニューディール推進基本法」(仮称)を制定し、国に基本計画を作らせ、10年間の集中期間を設けて、老朽化した橋や堤防などの修繕・改築を計画的に行います。また、東日本大震災では三陸縦貫自動車道が避難・救援道路として役立ちました。まさに“命の道路”です。東北新幹線の早期復旧も被災地の復興に大きく寄与しましたので、高速道路網や新幹線網の整備も図っていきます。

津波対策としては、津波避難ビルの設置や建物の高台移転を進め、大都市の密集市街地対策としては、避難道路や火災の延焼を防ぐ広場を整備していきます。

—民間住宅や学校などについては。


石井 耐震上の問題が懸念される1981年以前の建築物に対して、補助金や税制優遇を充実させて、耐震改修を加速させます。学校や災害拠点病院など公共施設の耐震化も進め、防災拠点としての機能を強化します。電線類の地中化や電気・ガス・上下水道・通信網などをまとめる共同溝化も重要です。災害時も通信がつながるよう高速化、大容量化などのインフラ整備を進めます。

経済活性化の効果
国内総生産(GDP)を年2%程度押し上げ、100万人超の雇用創出が見込める。
物価が下落し続けるデフレ克服の突破口に。


—経済に期待できる効果は。

石井 毎年10兆円の公共投資は、多くが現存する社会資本に再投資するので、用地費がほとんど必要ありません。10兆円の大半が修繕・改築など仕事の発注に回ります。そうすると、国の国内総生産(GDP)が500兆円規模ですから、年間2%程度、GDPを押し上げる効果が期待できます。

公共投資額は、ピーク時には国と地方を合わせて年間約30兆円でしたが、現在は約15兆円にまで落ち込んでいます。これを10兆円増やせば、ピーク時の公共投資額に近づくことになります。

—雇用は改善できますか。

石井 建設業界の就業者数はピーク時から180万?190万人減りましたが、防災・減災ニューディールの波及効果を考えると、100万人超の雇用拡大が見込めます。

日本経済には、企業などの供給力に対し、需要がどれだけ不足しているかを示す需給ギャップが年間15兆?20兆円程度あり、これがデフレ(物価の下落が続く状態)を引き起こしています。しかし、10兆円の公共投資で需要不足分の半分以上を埋めることが可能になり、デフレ脱却への効果は大きいと考えています。

財源をどうするか
赤字国債には頼らない。建設国債や地方債に加え、「ニューディール債」を発行。
現役世代と将来世代の負担のバランスを取る。


—財源について。

石井 財源は、まずは建設国債と地方債。それから、返済財源を確保した上で発行する、返済期限25年を想定した「防災・減災ニューディール債」。さらに民間資金を活用した社会資本整備の手法であるPFIなどを考えています。いわゆる赤字国債には頼りません。赤字国債は将来に何も残さず、借金のツケだけを将来世代に残すものです。建設国債は、社会資本を残すことで、将来世代にも恩恵が及びます。それと、現役世代で返済するニューディール債でバランスを取ることが重要になると考えています。

—財政を悪化させるのでは。

石井 財政再建は経済成長と一体で進めないと難しい。財政再建のために増税と歳出削減を行うと、経済に強いマイナスの圧力がかかります。このため、かえって経済を悪化させて税収を減らしかねません。経済全体を大きくすることで、増税の痛みを吸収することが必要です。信用不安の真っただ中にあるヨーロッパでも“財政緊縮一本やり”から成長戦略を重視する方向に軌道修正が進められています。

防災・減災ニューディールで経済活性化を図るとともに、財政再建を進めることが重要です。

キーワード 

ニューディール

1929年に始まった世界大恐慌を克服するため、33年から米国のフランクリン・ルーズベルト大統領が実施した総合的な経済対策。「新規まき直し」を意味しています。

この経済対策では、テネシー川流域でのダムや橋の建設など大規模な公共事業が実施され、多くの雇用を生み出し経済再生を促しました。さらに、国を挙げて文化芸術の振興策も推進し、世界的に知られるミュージカルや映画などの礎を築きました。

需給ギャップ

「需給」とは需要と供給のことで、「ギャップ」は差という意味です。日本経済の現状は、モノやサービスを供給する経済力に比べ需要が大幅に不足しており、最近のデータでは、その差(需給ギャップ)が年15兆円に達しています。需要が乏しいとモノが売れず、物価が継続的に下落するデフレの要因になります。

コンクリートの寿命
建設後50年以上経過する社会資本の割合
高速道路や橋などの社会資本(インフラ)にも使われているコンクリートの寿命は、条件によって異なりますが、一般的に50?60年とされています。日本では、1950年代以降の高度経済成長期に集中的に整備された全国の社会資本が、一斉に更新時期を迎えることになります。

安全性を確保するには、最新の耐震技術も取り入れた適切な補修などを急がなければなりません。

国債

政府が必要な資金を調達するために発行する債券で、政府の“借金”といえます。国債には主に建設国債と赤字国債(特例国債)があり、建設国債は道路や橋など国民の資産として後世に残るものを整備する際に発行されます。将来世代も恩恵を受けるため返済期限は60年と長くなっています。

一方、赤字国債は単に財源不足を補うもので原則は認められておらず、発行には特例法の成立が必要です。

公明党が提唱する防災・減災ニューディールの財源は、赤字国債に頼らず、建設国債などに加えニューディール債を発行します。将来世代の負担を抑制するため、ニューディール債の返済期間を25年とし、民間の資金と知恵も積極的に活用します。

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