解説 音楽・映像の違法ダウンロード

公明新聞:2012年5月16日(水)付

深刻化する著作権侵害
「罰則化」などの対策検討を

インターネット上で著作権者の了解なしに配信されている音楽や映像などの“海賊版”による権利侵害が深刻化している。

2010年1月に施行された改正著作権法では、こうした海賊版だと知りながらダウンロード(複製)することは、「私的使用」であっても違法とされたが、罰則がなく、後を絶たないのが実態だ。

11年3月に日本レコード協会が公表した調査結果によれば、音楽関連の違法ファイルなどの年間ダウンロード数は43.6億ファイルと推計。正規の音楽配信の販売価額に換算すると6683億円にも及ぶという。

動画サイトの利用による音楽支出の変化有識者らからなる「動画サイトの利用実態調査検討委員会」のアンケート調査(11年8月報告)でも、動画共有サイトなどの利用により、CDなどの購入量や金額が「増えた」とする人よりも「減った」とする人の割合が多い傾向が判明【グラフ参照】。業界関係者は危機感を強めている。

映画分野も状況は厳しい。日本国際映画著作権協会の調査(11年10月発表)では、インターネットなどでの映画の著作権侵害により、映画産業界だけで年間235億円の損失が発生し、日本経済全体で564億円の損失につながったと推定する。


海賊版のダウンロードが止まらない背景には、ここ数年間のインターネット環境の変化も大きく影響している。

高速で大容量の通信ができる回線網の整備が進んだことで、映像などの情報量の多いデータも短時間でダウンロードが可能になった。さらに、「ユーチューブ」などの動画共有サイトから簡単な操作でデータをダウンロードできる手法も登場。ユーザーが気軽にパソコンや携帯電話などに取り込んでしまう事情がある。

だが、こうした海賊版の違法ダウンロードは、音楽・映画業界で働く人々の生活の糧を奪うだけではなく、一つ一つの作品を生み出してきた苦労を無駄にさせてしまう行為である。

米国やドイツ、フランスなどの先進国では、すでに違法ダウンロードに対する罰則を設け、対策を進めている。

日本の音楽・映像業界からは、海賊版の流通への抑止効果を高めるため、違法ダウンロードに対する罰則化を求める切実な声が高まっている。加速する情報通信技術の進化に対応した法整備が急務だ。

文化芸術振興を掲げる公明党は、知的財産権を保護する観点から違法ダウンロード対策を重視。3月9日の参院決算委員会では、松あきら副代表が違法ダウンロードへの罰則規定を設けるよう訴えている。

もちろん、罰則化だけで全てが解決するわけではない。

広報・啓発を通して、著作権に対する意識を高めていくいくことも大切だ。例えば、日本レコード協会では、小・中・高校生をレコード会社の職場に受け入れるなど、教育を通して著作権への理解を深めてもらう活動なども行っている。

海賊版による著作権侵害を根絶するためにも、さまざまな取り組みを、さらに推し進めていくことが不可欠だ。

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