霧島山を中心に地域振興

公明新聞:2012年5月6日(日)付

関之尾滝を視察する党都城市議団関之尾滝を視察する党都城市議団

世界ジオパーク認定めざす
行政区域を越えて課題解決へ
宮崎、鹿児島県山麓7市町

日本最初の国立公園である霧島屋久国立公園(現在は霧島錦江湾国立公園)。その霧島山をふるさとの山と捉える宮崎、鹿児島両県の5市2町(都城市・小林市・えびの市・高原町=以上宮崎県、霧島市・曽於市・湧水町=以上鹿児島県)は2007年11月、行政区域を越えて協働し、地域の活性化を図ることを目的として「環霧島会議」を設立、環境・観光・防災など分野別に設置した各専門部会を開き、連携している。10年9月には、日本ジオパークに認定され、その連携が加速し、現在、世界ジオパークネットワーク(GGN)への加盟をめざした取り組みが進んでいる。

世界ジオパークは、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が支援する世界ジオパークネットワークが進める活動で、世界的に美しく貴重な地形や地質に触れ、学ぶことのできる自然公園づくりが狙い。

現在、世界27カ国の87地域が加盟し、日本では洞爺湖有珠山ジオパーク(北海道)、糸魚川ジオパーク(新潟県)、島原半島ジオパーク(長崎県)、山陰海岸ジオパーク(京都府・兵庫県・鳥取県)、室戸ジオパーク(高知県)が世界ジオパークの認定を受けている。

霧島山は、新燃岳や高千穂峰など宮崎県と鹿児島県にまたがる20余りの火山でなっている。韓国岳や高千穂峰の頂上からは、多くの火山が列をなす南九州の火山フロントを一望することができる。1934年に日本初の国立公園に指定され、その景観は雄大で美しく、世界ジオパークの資格は十分と指摘される。さらに、歴史的に見ても、高千穂峰は天孫降臨の舞台として「古事記」や「日本書紀」など日本神話にも取り上げられ、古代史との関わりも深い。ノカイドウなど霧島山でしか見られない多種多様な植物が生育していることでも知られる。

この霧島山の火山活動の歴史や自然の多様性を生かすために、2007年には、都城、霧島両市など県境を越えた5市2町で「環霧島会議」が設立された。各自治体は、観光・環境対策だけでなく、防災対策など共通する課題や目的に向かって協働している。世界ジオパークへの指定は、その中で生まれた課題。第3回会議で、地域住民と行政などが連携する「霧島ジオパーク推進連絡協議会」が設置され、世界ジオパークの指定に向けた取り組みが本格化した。

ジオパークであるためには、ジオ(地球)を学べる教育プログラムやジオサイト(地質遺産)を解説する設備などさまざまな要素が求められるため、同協議会が中心となり、霧島ジオパークガイド養成講座やジオサイトの看板整備などに力を注いでいる。

10年9月、霧島ジオパークは日本ジオパークに認定され、第一段階の関門を突破。世界ジオパークへの道が一歩前進した。

先日、世界ジオパーク認定を推進している公明党都城市議団の大浦覚、佐藤紀子、音堅良一の各議員は、日本の滝100選である「関之尾滝」(宮崎県都城市)を訪れた。滝の上流には、長さ600メートル、最大幅80メートルにわたって、河底や河岸の岩石面上にできる円形の穴の集まりである“甌穴群”が広がる。一帯には数千個の穴が散在しており、その規模の大きさと甌穴の数は世界に類がなく、国の天然記念物にも指定されている。

滝の駅「せきのお」の店長でもある藤澤正さんは「日本ジオパークの認定後、地元の人が喜んで案内をするようになった」とジオパークの効果に期待を寄せる。同市議団も関之尾滝をジオパークの拠点としてPRに取り組みたいと地域との連携を訴えた。

世界ジオパーク認定にはネットワークの充実が不可欠。その上で、同会議は各自治体をつないで一周する観光列車の運行を提案し、試行運行も決めた。

JR肥薩線の山麓の駅「真幸駅」(宮崎県えびの市)は“真の幸せに入る”と古くから観光客に親しまれている。昨年、開業100周年を迎え、名物の“幸せの鐘”を鳴らす観光客は後を絶たない。

美しい自然や景観を持つ霧島山。だが、11年に新燃岳が噴火したように火山活動が活発になる恐れが消えない。同会議に参加する自治体は、降灰除去のボランティア協力をしたほか、霧島火山防災マップを作製し、安全な街づくりの推進役も担っている。

今後、世界ジオパーク認定には、ガイドの充実や拠点施設の整備などの課題を乗り越えることが必要となる。

党都城市議団では音堅議員が、課題となっている不法投棄の問題を10年12月議会で取り上げ、監視を強化させた。

「霧島ジオパークを通じて地域住民のつながりが強くなっている」(都城市商業観光課の大崎直樹副主幹)との指摘があるように、ふるさとを愛する住民や自治体の連携強化が、さらに世界ジオパーク認定への道を大きく開いていく。

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