主張デフレの脱却急ぐべき

公明新聞:2012年5月2日(水)付

日銀が追加緩和策 政府も一体で政策実行を

日本経済の自律成長

日本経済の自律的成長を促す政府の戦略が見えない。

原油高騰が中小零細を含む広い範囲の企業業績を悪化させており、景気は本格的回復から程遠い状況にある。

また、収束するかに見えた欧州不安の再燃や米国経済の不調で、円高圧力が高まっている。1日午前には東京外国為替市場で2月24日以来約2カ月ぶりに1ドル=79円台後半に上昇した。急激な円高は輸出産業に打撃を与えることから、政府は影響を注視することが必要だ。

そして、さらに懸念されるのは、頼みの輸出が韓国のサムスン電子や中国の家電大手ハイアールといった海外の有力企業の台頭で、世界で苦戦していることだ。こうした中、電機大手のソニーは業績不振から、国内外のグループ全体で1万人規模の人員削減に踏み切ることを明らかにした。

少子高齢化で縮む国内市場の開拓を諦め、新興国に戦略拠点を移転する「産業の空洞化」も顕著になっている。勢いを増す海外企業による優秀な日本人技術者の引き抜きも深刻だ。

新興国経済は世界経済のリード役である一方で、豊富で安価な労働力から生み出される製品は、日本が得意としてきた物づくり分野の強力なライバルとなる。これを踏まえれば、他国がまねできない高付加価値を創出するための産業基盤の整備が欠かせない。

公明党が強く訴えているように、イノベーション(新たな価値創造)の源泉となる基礎科学力の強化などに国を挙げて取り組むことが急務だ。

日本経済の自律的成長のためには政府の具体的行動に加えて、日本銀行(日銀)による金融政策も重要である。

日銀は先週末、国債などを買い入れる基金を5兆円増やし、70兆円とする追加の金融緩和を決めた。市場に流通する資金量を増やし、景気回復を後押しする狙いだ。

追加緩和は、消費者物価の前年比上昇率1%をめざして金融緩和の方針を打ち出した2月14日以来となる。日銀の白川方明総裁は会見で、金融緩和の強化を「物価安定のもとでの持続的成長経路に回復することを、さらに確実にする」と強調した。

また、日銀は追加緩和の決定に合わせて公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、消費者物価の前年比上昇率1%が、2013年度後半以降「遠からず達する可能性が高い」と明記したが、この意味は大きい。

デフレの脱却に向け、政府と日銀が一体となった政策実行を重ねて求めたい。

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