日本の難民政策

公明新聞:2012年4月17日(火)付

「第三国定住」制度延長へ
現状と課題

ミャンマー難民来年以降も受け入れ
言葉・文化の違い克服へ 研修の見直しなど不可欠
総合的な“内なる国際化”策も


紛争や迫害を逃れて別の国で暮らす難民を支援する「第三国定住」制度に基づき、日本がタイのキャンプで暮らすミャンマー難民の受け入れを試験的に開始してから3年目を迎えた。政府は先月、同事業を来年以降も継続する方針を決めたが、その一方でさまざまな課題も浮き彫りになっている。日本の難民政策の現状と課題を考える。

来日家族の今

第三国定住制度は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が「自主的帰還が困難な難民の恒久的救済策の一つ」として実施しているもので、その名の通り、難民を第三国が半永久的に受け入れる仕組み。日本は自公政権時代の2008年、アジアで最初の試みとして導入を決め、10年度から3年間のパイロットケース(試行的事例)としてスタートした。

受け入れの対象は、タイ北西部のメラキャンプに暮らすミャンマー難民。10年に来日した第一陣の5家族27人は、半年間の定住支援プログラム(日本語研修や職業訓練など)を受講したあと、昨年3月から三重県と千葉県でそれぞれ新たな生活を開始し、昨年秋に来日した第二陣の4家族18人も先月、研修を終えて埼玉県三郷市で自立への道を歩み始めている。

パイロットケースは3年間で90人を受け入れる計画で始まったが、今年度の来日希望者は2家族10人しかおらず、当初目標の6割程度にとどまる見込み。このため政府は先月末、事業の2年間延長と、対象キャンプをメラキャンプと同じタイ北西部にあるウンピアム、ヌポの両キャンプに広げることを決めた。

■自立阻む“壁”

第三国定住制度が導入されて3年目、来日した難民が日本の地域社会で生活を送る上でさまざまな課題が浮かび上がっている。

最大の問題は言葉の壁だ。事実、第一陣5家族のうち、千葉県で暮らしていた2家族はその後、言葉が通じないことを主な理由に東京に移ってしまった。

文化・習慣の違いも大きい。第一、第二陣の家族はいずれも、ミャンマーの山岳地帯で暮らしていた少数民族のカレン人で、独自の風習や文化を持つ。そんな彼らに日本の考え方を押し付けるだけではうまくいかないのは当然だろう。今年度の来日希望者が2家族10人にとどまっているのも、第一、第二陣の家族が日本での生活に難渋していることがキャンプに伝わっているためと見られている。

これらの課題を克服するにはどうしたらよいのか。UNHCR駐日事務所は「来日する家族にとって最初の半年間が最も大切な時期」として、受け入れ態勢の見直しがまず必要なことを指摘する。具体的には、研修のあり方の見直しだ。

来日後、難民は政府が提供する定住支援施設で研修を受け、日本語や社会生活適応指導、職業相談などの“必須科目”を学ぶ。だが、キャンプ外での生活経験がほとんどないミャンマー難民が、この膨大なプログラムをわずか半年間で習得するのは容易ではない。研修期間をもっと長くするか、研修後も地域社会で継続的に日本語などを学べる機会を設ける必要がある。

実際、多くの第三国定住難民の受け入れに成功しているオーストラリアなどでは、研修終了後も政府と自治体、市民が協力して、語学研修や保健・医療などさまざまな面で支援を継続しているほか、通訳・翻訳のサービスも行っている。

共生社会へ

より困難で重要な課題として、「内なる国際化」の問題もある。難民や移民など外国人の受け入れに慣れていない日本の社会に「多文化・多民族共生」の風潮をどう醸成していくかだ。

この点で重要な役割を担うのが、経験豊かなNGO(非政府組織)だ。第二陣の4家族を受け入れた三郷市でも、支援ボランティアたちが市当局と協力して市民の理解と協力を促す活動を幅広く展開している。

ただ、民間団体や自治体の力だけでは限界があるのも事実。外国人の人権問題に取り組む専門家らは「難民問題だけに限らず、定住外国人や外国人労働の問題も含めた総合的な“内なる国際化”政策を国の主導で構築する時期が来ている」と指摘している。

難民・ 避難民 世界に4370万人
第三国定住 欧米豪がリード
メラキャンプからの国別出国者数
UNHCRの報告書「グローバルトレンド」によれば、2010年末現在、世界の難民・避難民数は約4370万人。憂慮されるのは、その数字もさることながら、難民救済の最終目標である母国帰還者が年々減少していることだ。長期のキャンプ生活が常態化していることをうかがわせる。

第三国定住制度は、難民を取り巻くこうした厳しい環境を背景に考案された仕組み。難民の約75%が母国と隣接する国に避難している現状を改善し、難民問題を国際社会で適正に分担するという観点からも、同制度が持つ意義は大きい。

同制度に基づく難民受け入れをリードしているのが欧米とオーストラリアなど。タイのメラキャンプで暮らすミャンマー難民に限っても、06年以降、2万3000人以上を米国やオーストラリアなどで受け入れている=グラフ参照=。

公明、対策拡充を一貫して推進


国際社会から「難民鎖国」と揶揄されるなど、日本の難民政策は欧米諸国より“一周回り”で遅れてきた。1981年の難民条約加盟以降、これまで30年余りで受け入れた難民数は数百人。毎年、数千人を受け入れてきた欧米諸国との格差は今も歴然としている。

こうした中、公明党は「難民政策はその国の人権感覚を映す鏡」(山口那津男代表)として、その拡充に全力で取り組んできた。

04年には入管・難民認定法の改正を実現し、難民申請・認定の仕組みを大きく改善。その後も党内に「難民政策プロジェクトチーム」(遠山清彦座長=衆院議員)を設置して、第三国定住制度の導入など難民政策の拡充を訴えてきた。

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