「AIJ」をどう見るか

公明新聞:2012年4月7日(土)付

坂口力副代表坂口力副代表

公的年金は揺るがず
企業独自の上乗せ分の問題
坂口力副代表に聞く

AIJ投資顧問による年金資産消失問題を受け、NHK番組「週刊 ニュース深読み」(3月31日放送)が公的年金にも「大きな影響がありそうだ」などと報道したことから、年金加入者の間に波紋が広がっています。そこで、公明党の坂口力副代表(元厚生労働相)に見解を聞きました。

誤解招きかねないマスコミ報道

厚生年金加入者の内訳—AIJ問題で厚生年金に加入するサラリーマン全員が、影響を受けるのでしょうか。

坂口力副代表 まず整理しなければならないのは、AIJによる詐欺まがいの悪質な行為と、公的年金制度の安定性の問題は別だということです。ここを混同してはいけません。

AIJの問題は、いわゆる1階(基礎年金)、2階(厚生年金)部分の公的年金の話ではなく、それぞれの企業が独自に行っている3階部分の年金の話です。初めから3階部分の企業年金に加入していない人は、将来受け取る給付額への影響はありません。

—厚生年金の本体にも影響が出ているのでは。

坂口 全国には現在595の厚生年金基金があります。同基金では厚生年金保険料の一部を預かって、私的年金の部分と一緒に運用しています。これを「代行」というのですが、運用がうまくいかずに基金の資産が減り、厚生年金の支払い部分も賄えない「代行割れ」をしている基金が213あります。

—代行割れ基金の状況は。

坂口
厚生労働省によると代行割れしている総額は6300億円で、最優先で返済するよう各企業に義務付けられています。これまでのところ、返済不可能になって穴が開いた事例はありません。それに2008年度末に478あった代行割れ基金は、213と減っています。各基金とも頑張って返済しているのです。

—74の厚生年金基金がAIJに運用を委託し、公的年金の資産に1000億円もの穴が開いたとされています。

坂口
この穴埋めは、3階部分を作った企業の責任で行わなければなりません。その後はAIJと各基金との問題です。気の毒な言い方ですが、委託していた基金は高利回りを期待して、AIJの甘い誘い文句に乗ってしまった側面もあります。

—一方で06年に150兆円あった公的年金の積立金が、現在は110兆円まで減っているとの報道もあります。

坂口 確かに年金給付に積立金を充てて財政運営をしていくと04年に決めたことから現在、121.9兆円まで取り崩されていますが、これとは別に27兆円が厚生年金基金の積立金として存在します。この27兆円が返ってこないことを前提にしたような報道は間違っています。

27兆円のうち10兆円は企業年金連合会が保有し、これは確実に返ってきます。残り約17.6兆円を595の基金が持っています。このうち代行部分が14.8兆円で、これまで順調に返済されてきました。

08年のリーマン・ショック以降、景気低迷が続いています。デフレ(物価の継続的な下落)で経済成長率も非常に低い中で利回りも良くない。年金制度にとっては極めて厳しい経済環境ですが、景気を好転させることができれば年金財政をもっと安定させることができます。

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