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シリーズ 介護は今

公明新聞:2009年11月21日

需要高まる 在宅療養支援診療所

 病院や介護施設でなく、住み慣れた家での療養を支援する在宅医療の需要が高まり、24時間体制の往診や訪問看護などを行う在宅療養支援診療所の役割に期待が集まっている。ただし、同診療所は都市部に集中しており、地域格差などの課題について、さらなる改善策が求められている。同診療所のサービス開始から3年がたった今、現状の課題や求められる支援策を探った。

24時間体制で往診や看護
終末期、慢性疾患対応にも期待


 「異常ないですね。寒くなってきたから温かい格好をしとかなきゃね」

 神奈川県内で息子夫婦と暮らす宮田あかねさん(87歳、仮名)は、脈を診た看護師の言葉にほほ笑みながらうなずいた。息子の妻の洋子さん(52歳、仮名)は、「病院と違って、家だと明るいんです。リラックスできるんでしょうね」と語る。

 あかねさんは、昨年、肺炎で入院。その後、回復したが、足が弱くなり今では車イス生活を送っている。療養病床には入れず、介護施設への入居も考えたが、洋子さんたちは「住み慣れた家で暮らした方が本人にとっては幸せでは」と考え、急変時に24時間対応できる在宅療養支援診療所の利用を決めた。「ちょっとした容態の変化でも気軽に相談できるので助かってます」と洋子さんは語る。

 高齢化率22.1%(2008年10月時点)で5人に1人が高齢者、10人に1人が75歳以上という「本格的な高齢社会」に突入した日本――。内閣府の調査では、55年には2・5人に1人が高齢者という社会が到来すると推計している。高齢者人口が増える中で、住み慣れた家で暮らし、人生の最期を看取られる在宅医療の需要が高まっている。

 特に注目されているのが、厚生労働省が在宅医療を進めるため、06年度の診療報酬改定で設けた在宅療養支援診療所である。これは、高齢者が可能な限り住み慣れた家庭や地域で療養生活を送れるよう、診療報酬上の制度として創設されたもので、24時間の往診や訪問看護などの体制が整備されている。加えて、他の病院や診療所、ケアマネジャーなどと連携しているため、必要に応じたサービス提供も可能となっている。

 容態が急変した際に、医師や看護師と連携が取れることから、自宅での終末期ケア(ターミナルケア)や慢性疾患の療養などへの対応が期待されている。

都市と地方 格差が課題
届け出だけの“看板倒れ”も


 厚労省によると、在宅療養支援診療所の届け出件数は08年7月時点で1万1450件。しかし、往診できる範囲は車で30分程度が限界であり、都市部に集中しやすく、都市部と地方部での地域格差が課題となっている。また、同診療所の届け出はしたものの、在宅での「看取り」はおろか訪問診療を一度も行ったことがない“看板倒れ”の診療所も少なくないという。

 こうした課題について厚労省は、「医師1人で開業しているところも多く、それでは365日24時間の対応は難しいので、複数機関のネットワーク化などを検討している」と説明する。

 一方、現場では看取りを受け持つ診療所特有の悩みもあるようだ。東京都墨田区内の同診療所では、昨年対応した在宅末期がん患者158人のうち、在宅で亡くなった人が125人に上るとして、この診療所は「在宅療養支援診療所の一番の苦労は、常に一定の患者を確保することだ」と明かす。施設ホスピスなどと違い、患者を診察できない場合は他の医師を紹介するので、診察待ちの患者は1人もいないという。このため、「一定の患者数を確保するには、診療所をハブ(拠点)化するなどの対策を講じる必要がある」と指摘する。住み慣れた家で安心の医療を受けるには、同診療所の普及、充実が求められている。

医療法人社団 パリアン 川越 厚理事長に聞く
在宅医療の専門性向上を
緩和ケア支援診療所の育成必要


 在宅療養支援診療所の制度設計に携わり、在宅診療の充実に取り組む医療法人社団パリアンの川越厚理事長に、同診療所の現状と課題を聞いた。

 在宅医療を充実させるため、在宅療養支援診療所にさまざまなインセンティブ(意欲を刺激する誘因)をつけるなど、制度的な誘導が行われてきましたが、思うように進展していないのが現状です。その最大の原因は、在宅医療の専門性を考慮した整備がなされていないことです。

 一口に在宅医療といっても、疾患別に特殊性は異なります。開業医が診療の合間に患者宅を往診した時代と違い、今は医療内容自体が高度化、専門化しています。そこで、患者の症状を「非がん」「がん」「その他」の3つに区分し、各専門の医療機関が対応し在宅医療を整備する必要があります。

 また、在宅医療の提供体制にも課題があります。日本の場合、ケアを提供するチームが最初からあるわけではなく、医師や看護師、ヘルパーや薬剤師などが臨時でチームを構成してケアを行っています。これは一見、良さそうな制度ですが、チームを作った時に、そのチームがしっかりしていないと良いケアは提供できません。このため、末期がん患者を対象にした在宅ホスピス・緩和ケアでは、パリアティブ・ケア・クリニック(PCC)といわれる緩和ケア支援診療所のように、チームとして専門的に末期がん患者の在宅ケアを担う診療所を各地域で育てていく必要があります。

 医師側の問題もあります。在宅療養支援診療所は責任を持って24時間対応することを条件に、一般の医療機関に比べ診療報酬が高く設定されています。この高さだけに目をつけて届け出た診療所もあると聞いていますが、患者の急変に対応しきれずに自らの都合で患者を病院に送るという無責任なことは、絶対に許してはならないと考えています。

 大事なことは、患者やその家族が住み慣れた家で安心して暮らし、人生の最後を全うできるようにすることです。そのためにも、在宅医療の一層の進展が求められています。

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