ホーム > ニュース > 

被爆者の現在 63年目の広島・長崎<2>

公明新聞:2008年8月6日

新基準では爆心地から約3.5キロまでの被爆者が積極的に認定される

原爆症新認定基準
「被爆者に時間はない」
求められる審査作業の迅速化

新基準では爆心地から約3.5キロまでの被爆者が積極的に認定される(広島市中区の広島平和記念資料館)

 今年(2008年)4月、国は原爆症の認定で新基準による審査を開始した。被爆者の訴えが政治を動かし、これまでの基準を大きく緩和させた。

 広島県原爆被害者団体協議会(被団協)理事長の坪井直(83)は、「新基準は完全なものではないが、実際に苦しんでいる人が多く救われる」と一定の評価を加える。

 被爆者の病気は、原爆の放射線が原因かどうかを国が判断するのが原爆症認定制度だ。認定を受けると、医療特別手当(月額約13万7000円)が支給される。

 新認定基準は、これまでの審査基準「原因確率」を実質的に廃止した。その上で、(1)爆心地から約3・5キロ以内で被爆(2)約2キロ以内に、原爆投下後約100時間以内に立ち入り(3)2週間以内に約2キロ以内に1週間以上滞在――のいずれかに該当し、がん、白血病、副甲状腺機能障害、白内障、心筋梗塞の五つの病気になった場合は、積極認定し、基準外でも個別審査による総合的な判断で幅広く認定することになった。

 だが、多くの課題は残る。長崎原爆被災者協議会長の谷口稜曄(79)は、「放射線だけの問題じゃない。原爆症認定では爆風、熱線が(原因の疾病は)除外されている」と指摘する。

 原爆症認定をめぐる集団訴訟で国は10連敗中。今年5月末の仙台、大阪の2高裁の判決は、新基準で積極認定の対象となっていない疾病の原告を含め、認定すべきとした。

 6月の長崎地裁判決も、新基準で対象にされていない肝機能障害の原告などについても、国の認定却下を違法と判断した。認定基準のさらなる見直しが迫られたのである。

 ただ、坪井は「裁判で勝っても、あくまで認定するのは行政だ」と楽観はしていない。

 爆心地から約1.5キロ地点で被爆した山中恵美子(74)は、申請書類不備のため、認定申請を却下された。

 高齢者にとって大量の申請書類作成は苦痛だ。山中は、「この年まで、生きてきたんだからもうええわ」と再申請をあきらめた。

 被爆者の平均年齢は75歳を超える。坪井は「被爆者に時間はない」と高齢化が進む被爆者の複雑な胸中を明かす。

 全国の被爆者約24万人に対して、原爆症に認定されたのは2188人(3月末現在)。新基準導入後は、609人が認定され、前年度の5倍をすでに超えているが、広島市だけでも約2500人が認定を一日千秋の思いで待っている。認定作業のスピードアップが強く求められている。(敬称略)

被爆者の現在 63年目の広島・長崎<1>
被爆者の現在 63年目の広島・長崎<3>
被爆者の現在 63年目の広島・長崎<4>

公明新聞をぜひご購読ください。公明新聞紹介

ページのTopへ