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許されない政治の停滞

公明新聞:2008年4月24日

ねじれ国会の現状と課題
小林良彰・慶大教授に聞く

 

想定以上の意見対立
両院協議会活用で与野党協議の制度化を


 衆参両院で多数派が異なる、ねじれ国会による政治の停滞を打開する方策が求められています。国会の状況にかかわらず、政治の停滞は決して許されるものではありません。こうした中、与野党は、どう対応すべきか。慶応義塾大学法学部の小林良彰教授に聞きました。

 ――ねじれ国会による政治の停滞が指摘されているが。

 小林良彰・慶応義塾大学教授 想像していた以上に、政治が停滞しています。法案が通らないこともありますが、衆参両院の同意が必要な日銀正副総裁人事で、ここまで与野党の意見が食い違うとは、想定していませんでした。

 ただ、法案などが通らないという事態は表面的なものです。現在、通っている法律は技術的な法改正で、誰が見ても通るだろうというものがほとんどです。

 ねじれ国会と言っても法案の通過率は決して下がっていません。それは与野党が対立する重要な法案が国会に提出されないからです。この目に見えない停滞の部分も大きいと思います。

「55年」体質からの脱却必要

 ――政治の停滞が国民生活や経済の混乱をもたらしたが。

 小林 問題は、ねじれの状況に与野党が対応していないことです。自民党は自分たちだけで物事を決め、野党は抵抗勢力として反対し、なるべく時間を稼いで廃案にする。こうした55年体制で染み付いた体質からお互い脱却できていないことに、そもそもの原因があると思います。

 また、ねじれ国会を想定して、どうやって与野党が協議をするのかという制度設計ができていないことも問題です。

 例えば、ドイツは東西の統一から大連立ができるまで、上下両院はねじれていました。連邦参院(上院)ではドイツキリスト教民主同盟が、連邦議会(下院)ではドイツ社会民主党が強かったのです。そこで、どうしたかといえば、両院協議会(両院の議決が異なった時に両院の代表が協議する機関)で作業部会をつくりました。その上で、月に1度、与野党それぞれが意見を集約し、公開。世論調査を通じて、それを国民に問い、6カ月程度で結論を出しました。

 しかし、日本では、現行の法令でできるにもかかわらず、両院協議会に作業部会を置くなどの制度設計が与野党から、ほとんど出ていません。

 さらに、一番の問題は、なぜ国会が停滞しているのかが国民に分からないことです。今、与野党が何を議論し、どのポイントで意見が食い違っているのかが国民は分からないので、結果的に、その責任が首相に向けられているのが現状ではないかと思います。


民主の「与党能力」は不明。自民も「独断」


“ねじれ”下でも政策遂行は可能

 ――与野党の溝を埋めるための方策は。

 小林 ドイツの例で言えば、まったく意見が合わないドイツキリスト教民主同盟と、ドイツ社会民主党が妥協できた背景には、第3党である自由民主党の存在があります。

 自由民主党が常に折衷案を提示し、ドイツキリスト教民主同盟もドイツ社会民主党も、ここまでは妥協するという形で議論が進んで行きます。第3党がこうした役割を果たしているからこそ、国会がねじれていても政策遂行ができるのです。

 ――日本では、第3党の公明党の役割が大きいのでは。

 小林 公明党が与野党の議論をリードすべきです。自民党と民主党は法案などの内容ではなく、譲ったほうが負けというメンツの争いになっているのではないでしょうか。

 まさに日銀人事がそうでした。候補として出てきた人に本当に能力がなかったのかどうか。政府が出したものは受け入れないというのでは話が進みません。ですから、「こういう能力が足りない」などと、中身を主張して、与野党協議の枠組みをつくるべきです。

 その上で、「協議の場で私たちは折衷案としてこれを出します」と、国民に対して説明してくれる“親切さ”が第3党の役割ではないでしょうか。

 自民党がやっても相手は話に乗らない。民主党がやっても同じです。だから、公明党がそれをやらざるを得ません。それが公明党が連立与党にいる役割です。

 公明党は、かつて野党でもありました。今まで与野党両方の役割を担ったのはどこか。自民党は一時期を除き、ずっと与党。民主党は野党で、ともに55年体制から抜け切れていません。その中で公明党は与野党両方を経験しているのだから、それを与野党の橋渡しに生かすべきです。

 ただ、そのためには、「所得階層が低い人の救済」というような公明党としての譲れない一線を主張し、たとえ自民党であろうとも、その一線については断固として主張する必要があるのではないでしょうか。

合意促す第3党 公明の“橋渡し役”に期待

民主には「対案」示す責任がある

 ――内閣支持率が低迷しているが、原因は何か。一方、民主党は政権交代の受け皿と成り得ているのか。

 小林 内閣支持率の低迷は、今の日本のどこをどう良くしようとしているのかが福田内閣で見えないことが原因です。

 何か一つでも「ここを変える」という福田内閣の闘っている姿が見えません。これは福田首相にとっては大きなマイナスです。また、時々、福田首相の発言が、どこか他人事のように聞こえてしまうことが損をしているのではないかと思います。

 民主党に関しては、参院選のあった昨年夏以降、「野党能力」があることは国民には十分に伝わりました。実際、民主党などの反対で日銀副総裁の1人がいまだ決まっていません。しかし、有権者が民主党に求めているものは、野党能力ではなく「与党能力」です。民主党にとって、政権交代をめざす上で必要なのは与党能力なのです。

 例えば、道路をどういった基準でつくるのか、つくらないのか。あるいは、後期高齢者の医療費は誰が負担するのか。そうした対案が出てきて初めて与党能力が分かります。自分たちから常に対案を出すことが必要になるのです。しかし、現時点ではそれが見えないことが、内閣支持率が下がる割には民主党の支持率が上がらない理由だと思います。

 今のような戦略は、民主党にとって決してプラスにはならないと思います。

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