三位一体改革と地方議会──山口那津男政調会長代理に聞く
公明新聞:2006年2月24日

地方の裁量拡大 現場のニーズで判断を 「事業仕分け」でムダ削減も
山口那津男政調会長代理
地方自治体の自主性を高めることで住民サービスの向上と行政の効率化をめざす「三位一体改革」(国と地方の税財政改革)が決着し、4.7兆円規模の補助金改革と3兆円規模の税源移譲が実現しました。これに伴い、地方議員が議会活動で留意すべき点などについて、山口那津男政務調査会長代理(参院議員)に聞きました。
――三位一体改革の決着によって、地方議員は今後、議会活動で、どういう対応が求められますか。
山口 三位一体改革とは、国・地方の税財政のあり方について(1)地方向け補助金の思い切った削減(2)国から地方への税源移譲(3)地方交付税の見直し――という三つを同時に行い、地方の自主性を高めるための改革です。
補助金改革は4.7兆円の規模で行われ、それに伴って国から地方へ3兆円の税源移譲が行われました。ですから、地方は税源が移されたものについて、どこにどう振り向けるか。差額の分については廃止も含め、どう事業を見直していくか決断を迫られるわけです。
また、地方交付税は総額で5.1兆円を減らします。これまでは基準財政需要と基準財政収入の差額で足りない部分は国から交付税で補てんする仕組みになっていて、必ずしもその事業の質や規模を厳格に吟味されてこなかった。そこもきちんと見直していく努力が必要だと思います。
介護施設
――具体的に、例えば特別養護老人ホームなどの介護施設整備に対する補助金が廃止されたことについての対応は。
山口 税源移譲されたわけですから、どれだけの施設を整備するか、公立だけでなく民間の社会福祉法人への助成も含めて、何をどれだけ造り、何に支援していくか、都道府県が独自に判断していくことになります。
削減された補助金相当額には当面、地方債を充てることも認められていますから、ここは、都道府県議会の議員が関係市町村の意見をよく聞いて、返済能力も考慮して、どう事業を行っていくかを考える必要があります。
同じ県内でも山間部や農村、都市部、政令市などで違いますから、地域ごとの声をくみ上げ、ニーズ(要望)をよく見極める。地方債の発行については、景気回復による税収の伸びや今後の見込みも考慮して判断する。それが大事だと思います。
保育施設
――公立保育所の施設整備に対する市町村への補助金も廃止され、税源移譲されました。
山口 これは保育所の整備について、市町村に責任と権限が与えられたということであり、これまで補助金交付に必要だった厳しい条件が緩和されることになります。
ですから、これまで保育士一人当たり30人とされていた待機児童の受け入れ枠の拡大をはじめ、駅前保育施設の設置など、市町村議員が現場のニーズに合わせてどう対処していくかが問われてくるわけです。
補助金が廃止されたのは公立の部分だけです。私立については今後、新たに幼稚園と保育所が一体化した幼保連携施設「認定こども園」の拡充が進められますが、そのための財政上の特例が設けられます。
例えば、私立保育所が幼保連携施設を造る場合には、学校法人のみに助成してきた私立幼稚園施設整備補助金を社会福祉法人も受けられるようにします。一方、学校法人は対象外だった次世代育成支援対策施設整備交付金について、学校法人立の幼保連携施設にも助成が認められるようになります。
保育所や幼稚園の実情をよく見て、公立、私立の役割分担も含め、ニーズに応じた効率的なあり方をよく考えて対処していくことが必要になります。
児童手当
――児童手当も税源移譲されました。
山口 これも市町村でどう対応するかです。例えば、東京・新宿区では中学3年生まで児童手当を拡大しましたし、同千代田区では胎児(妊娠5カ月)から18歳(高校3年生)まで支給することにしました。ほかに支給額の上乗せやクーポン券での上乗せ支給を選べる自治体など、独自に組み立てる例も増えています。現場のニーズに応じて、いろいろなバリエーションが考えられると思います。
公営住宅
――公営住宅家賃対策補助も一般財源化されましたが。
山口 この補助金も廃止されましたが、家賃は公営住宅法に基づいて設定するという仕組みは変わっていませんので、補助金が廃止された分、家賃が上がるということはありません。2006年度以降に管理が開始される公営住宅については、地域住宅交付金で家賃対策が講じられることになります。これは公明党と北側一雄国土交通相(公明党)が連携して取り組んできた成果です。
――この交付金は、周辺の民間住宅についても耐震化、耐震改修の助成が行えるそうですが。
山口 そうです。これは地域住宅計画をどう策定するかによるわけで、自治体がその公営住宅と周辺の民間住宅を“面”として整備する必要があるということであれば、これを活用できます。東京の区・市ではこの交付金を使って耐震診断や耐震改修、ブロック塀の耐震改修助成などに積極的に活用されています。
地方行革
――国と同様、地方での行政改革の推進も重要ですが。
山口 政府は昨年(2005年)末に「行政改革の重要方針」を閣議決定しましたが、この方針の柱となるのが「事業仕分け」(国の全事業を洗い直す作業)です。公務員が携わる仕事について一つ一つ本当に必要なのかどうか、誰が担うべきか、民間に任せることはできないのか――そういうことを仕分けして効率化を図る。これは公明党の強い主張で「行政改革の重要方針」に盛り込まれました。
この考え方は当然、地方自治体にも当てはまります。地方分権の立場から、国が地方のことを直接決めるわけにはいきませんが、「行政改革の重要方針」でも、地方が主体的に定数を定める分野の職員(107.5万人)について、仕分けによる効率化で地方に努力を要請する旨を明記しました。それぞれの自治体でぜひ実践していただきたいと思います。
――「事業仕分け」を進めるポイントは。
山口 大事なのは、「外部の人を交える」ことと「公開の場でチェックする」ことです。市町村なら県や他の市町村、民間関係者など外部の人を交え、オープンに議論をすべきです。
そして、聖域を設けず、あらゆる事業を対象にという姿勢で取り組むことです。国ではこれまで一般会計の分野ばかりが議論され、特別会計の中身まではなかなか議論されず、ムダ遣いの温床とも指摘されていました。地方自治体でも、特別会計とか第三セクターなど目の届きにくい部分も例外なくチェックしていく努力が大事だと思います。
今年(2006年)は大型選挙がありませんから、人口減少時代を展望し、地に足の着いた運動論として「事業仕分け」に取り組むいいチャンスです。来年の統一地方選、参院選でその成果を国民に提示できるよう、公明党議員が先頭に立って取り組みを進めていきましょう。
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