戦後60年、米ロで新たな対立
公明新聞:2005年5月13日
異なる歴史見直し
米国とロシアの関係がぎくしゃくしている。2001年の9・11テロ後、両国は緊密に連携し、世界の平和と安定へ協力する体制の確立が期待されたものだった。
しかし、「自由」や「民主主義」を至上価値とし、その対外姿勢が“宣教師外交”という指摘さえあるブッシュ大統領と、軍事力と豊富な資源を武器に、ロシアを再び大国に押し上げようとするプーチン大統領の理念の差は大きい。このほど、モスクワで行われた対独戦勝60周年記念式典での首脳会談では、この対立は一時的に封印されたものの、対立は消えない。
まず歴史認識である。ブッシュ大統領は、ロシア訪問に先立って訪問したラトビアの首都リガで、ソ連によるバルト併合や東欧支配をもたらしたヤルタ会談(1945年2月)での合意を「史上最大の過ちの一つ」と述べた。同大統領によれば、連合軍によるファシズムからの解放が自由や民主主義の到来につながらず、共産主義という抑圧体制をもたらしたからである。
この演説は、米国が今後、旧ソ連に支配されていた国々の側に立つことを強調し、米国が自由や民主主義を普遍的な価値として外交を展開していくことを宣言したものである。
一方のロシアはこの見解を決して受け入れることはできない。多大の犠牲者を出しながらナチス・ドイツと戦い抜き、祖国を守ったという“事実”こそ、ソ連からロシアへと続く権力の正統性を支える根拠であるからだ。プーチン大統領にとっての歴史の見直しは、ロシアの栄光を取り戻し、強い国家への再生である。スターリン像が建立され、ドイツとの激しい戦闘で知られるボルゴグラードが、旧名のスターリングラードに戻る動きなど、悪名高き粛清の断行者、独裁者の復活さえ進んでいる。
「民主主義」についても両者の見解は違う。「自由」を重視し、ロシアはバルト諸国を見習うべきだとするブッシュ大統領の主張を、プーチン大統領は「民主主義は他の場所に輸出することはできない」と反発している。
かつては共産主義という人間抑圧のイデオロギーが現実の資本主義社会に挑戦し敗退していった。今日、グローバル化した資本主義の下、ブッシュ大統領は「自由」や「民主主義」という人権重視の思想を旗印に世界の救済に乗り出そうとしているように見える。
その見直しは徹底している。共産主義の支配を許したことだけでなく、米国が中東などで地域の安定を追求するあまり、権力者と手を結び民主主義を犠牲にしたことに反省の言葉さえ述べている。民主化の道を進むイラクに続いて、イランだけでなく長年の盟友であるサウジアラビアの改革までも視野に入れている、と指摘されても仕方がないような論調である。
中国にも厳しい注文
こうしたブッシュ路線は当然、アジアでも貫かれる。北朝鮮の金正日(キムジョンイル)体制への厳しい姿勢だけではない。ライス米国務長官は先月、講演の中で中国の政治体制に言及し民主化を求める発言を行っている。台湾問題をめぐる米中対立の底流には異質な世界観がにらみ合っているという側面もある。自由や民主主義を前面に押し立てる米国と、抗日戦争60周年を機にさらに愛国主義を強化する中国。
大国の対抗が続くアジアで、わが国には研ぎ澄まされた外交能力が求められている。
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