子どもに愛情が伝わる関わり方
令和元年第3回定例会で教育関係の質問があり、
不登校などが増えていることの原因に対する質問に
教育委員会からははっきりとした回答がなく残念だった。
子ども達の本音に迫る研究が必要と調べてみた。
戦後、出生率が上がりその頃の子ども達は野山で思う存分に遊び、
子どもが多く近所で他世代交流も出来た。
不登校やいじめなどがあっても多世代家族で
祖父母や兄弟、近隣との関係で追い詰められる事もなく、
大きな問題に発展しにくかった。
今の子ども達の置かれる環境は、核家族化や共働き世帯、
離婚などによる片親世帯の増加で養育者はストレスも多く、
子育てについて孤立化しやすくなり、
子どもの発達を支える愛着関係の形成の不足が心配されている。
一方、少子化・高学歴指向などで養護者には、
子どもの教育に対する過度な期待があり、
塾や習い事、学校の成績へのこだわりがあり
子どもが自分らしく育つ社会とは言えない。
2018年の不登校の子どもの数は5年連続で増加し、
2017年の児童虐待相談対応件数は、過去最多で
統計を取り始めた1990年度から27年連続で増加している。
教育現場で起きている不登校・いじめ・無気力・非行などの
不適応行動を子どもの問題として取り扱い、
養護者の愛着の形成の不足などの原因に対処しきれていない
現状を「子どもとの関わり方」の視点で考察していく。
子ども達の発達を支える要因で最も大切な事は、養護者との愛着関係である。
母親と幼児期に安定した愛着関係を形成している子どもは、
良好な友情関係を築き、仲間から受け入れやすいなど
社会的適応が良いことが報告されている。
適切な愛着関係の形成が保てない原因として
国立教育政策研究所の「キレル子どもの原因」の分析がある。
原因の76%を占めた家庭内での不適切な養育態度として、
しつけが厳しいなどの「過度の統制」、「放任」、「過保護」、「過干渉」、
学業やスポーツ等をすることを強要する「過度の要求」、
子どもの言うままにその要求等を満たしてしまう「言いなり」などがある。
この調査で興味深いのは、過保護、言いなり-過度の統制と
要求、過干渉-放任のように相反する養育態度が問題視されていることである。
前述した養育者が置かれている社会的な状況を考慮すると、
子育てへの自信の無さや不安が感じられる。
NHK「朝イチ」が母親に「いい母プレッシャー」アンケートを行った。
回答した1600人の母親のうち68%がプレッシャーを感じているという。
プレッシャーを感じている項目は、
「怒ってはいけない」「仕事をしないといけない」
「子どもと一緒にいなければいけない」「理想の母像」などがあった。
誰からいい母プレッシャーを感じるかとの質問には
「自分の価値観」と答えた人が54%おり、
夫が妻を「いい母親と思う」と答えたのは66%になった。
父親がいい母親と認めていても、
母親は自分で作り上げた理想に追いつかず苦しんでいたと考えられる。
この二つの調査から、児童虐待など極端な事例を除くと、
養護者は子どもに愛情を持ってはいるが
うまく発揮できないということではないだろうか。
今まで子どもの意見という見方で調査はされていないが、
愛情を持って子どもに接していても不適切な養育態度となるのは、
子どもに愛情が伝わるという視点が欠けているのではないだろうか。
ではと子どもに愛情が伝わる関わり方はどのようなものなのか。
和歌山大学の「子育てと子育て支援のあり方に関する心理学的考察」で、
親がどういう養育態度がいいのかという問題意識ではなく、
子どもにどう受け止められたかを問わなければならないとし
子どもが愛情不足を感じるのは、
子どもが愛情をかけて欲しいと思っている時を外して、
後でいくら愛情を注いでも
受け入れる口は堅く閉ざされているのであるとしている。
このような親子のコミュニケーションの落とし穴に
はまった家族を支援していくには、どんな方法があるのだろうか。
人間は生涯発達していくとの考えで子どもを育てる側への
自己効力感を育てる子育て支援が必要だ。
地域の子育て支援団体では、母親との会食会を開き、
先輩の支援者が寄り添っている。
母親の努力を認め励まし笑い合う関係となっている。
その様子を見ている子どももほっとした様子で落ち着いてきた。
そもそも子どもには潜在的な能力があり
大人を振り返らせる力や元気を与える力を持っている。
教師も今までの親の養育態度や子どもの不適応行動だけで評価せず、
子育てを一緒に関わりそこで一緒に成長する喜びを持ってほしい。
不登校など子どもに関する問題が解決をみない複雑化した今日、
改めて親子の気持ちのすれ違いから問題になることがあり、
親と子どもの思いを受け止める
豊かな養護性を持つ周囲の大人の必要性を感じる。