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台湾原子力発電所の使用済燃料処理について…台湾政府はワンススルー(再利用しない)を選択

台湾の原子力発電政策は、1970年に中華民国政府が経済発展による電力需要を賄う為に建設決定をし、台湾電力公司第一原発が1978年より商業運転を行っている。
台湾では、現在第三原発まであり、6基が稼働をしており、第4原発ABWR2基の建設中。

第一原発は、台北市の北28㎞に位置しており大都市に隣接する原子力発電所である。
第一原発プラント2基が稼働をしており、原子炉はGE製沸騰水型軽水炉(BWR-4)で発電出力63.6万Kw、格納容器は福島第一原発1号機と同じMark1である。営業運転開始は1号機が1978年12月10日、2号機は1979年7月15日。
2年に1回は地域住民、消防、警察、軍隊を入れた総合的な防災訓練を実施。

台湾電力公司視察内容

台湾電力公司出席者
陳台裕 所長、劉明哲 副所長、呉才基 運転副所長、林新 企画副長

所長および副所長から3.11の東日本大震災に対するお見舞いの言葉と、台湾電力公司と東京電力は兄弟のような関係であり、柏崎刈羽原子力発電所の見学をされ、市民運動についての印象が強く残っており、周辺住民との課題は台湾も日本も住民の理解を得られなければならないことは共通である等の歓迎の挨拶をいただいた。       

<紹介ビデオ(日本語)による第一発電所の概要説明>
・1970年に原子力発電所の建設を開始、636MWのBWRプラント2基を同時に造った。
・台湾もエネルギーはほとんど輸入に頼っている(98%)。近年は再生エネルギーが重視されてきており、風力も原子力発電所敷地内で6基稼動している。(風は十分吹く地域)
・周辺住民に一層の安全安心を与えるため、原子力災害時における緊急対応計画を策定し、訓練等を行っている。
・台湾電力第一原子力発電所は台湾において初めて造られた原子力発電所であるため、安全等すべてに対して、第一という栄誉であるとともに責任でもあるとビデオ紹介で締めくくっていた。

<放射性廃棄物の処理;ワンススルーを選択した台湾事情等の説明>
・ 台湾はワンススルーを選択したが、未来永劫ではなく、リサイクル技術についても研究をしている。その国が持つ技術力・経済力・安全力によってどちらを選択するかであり、その選択はどちらが正しいということではない。日本はエネルギーセキュリティを求めて、リサイクルを選択。それぞれ長所・短所があり、ワンススルーもリサイクルも引き続き調査研究を行ってゆく。
* 残留放射線レベル比較 ワンススルー:リサイクル:自然ウラン=大:中:小
* ワンススルー長所;コスト、核不拡散
* ワンススルー短所;ワンススルー後の管理技術が未定、地殻変動の可能性(保管が10万
年オーダーのため)あり
・ 台湾電力がとっている方法は、使用済み燃料をプールで保管(フェーズ1)→冷却完了後乾燥貯蔵庫保管(フェーズ2)→ウラン・プルトニウム再利用or埋設選択(フェーズ3)の段階を経ることとしている。現在はフェーズ2にある。
・ フェーズ3までの時間稼ぎ(フェーズ2は地上保管)の中で今後の方法を決めていくとのこと。将来的には、放射性廃棄物処理においては国際社会が共有していく必要があると思っている。

<質疑応答>
Q.即、原子力発電をやめようが、しばらく続けようが高レベル廃棄物の処分からは逃げられない。日本では、高レベル廃棄物の処分地の調査だけ(高知県東洋町)で、パニックのようになったが、実際に高レベル廃棄物を処分するとなると、現地の住民合意はとれそうか。
A.現在の法律では、原子力発電所の建設には、住民投票が必要と規定されているが、処分施設に対しては法律そのものがない。いずれ国会において法整備されると思う。
Q.実際の候補地はあるのか。現時点でも調査しているのか。
A.詳しくは述べられないが調査はしており、花崗岩に囲まれた強固な地盤をもつ地域が、3カ所ある。これはいずれも調査をしている。
Q.ワンススルーでもない、リサイクルでもない第3の手法を研究中とのことだが、実用化の目処はたっているのか。
A.中性子を利用した方法であるが、技術的にもコスト的にも今の世代ではなく、次の世代での仕事になると思う。それまでの間に保管をして、どのような選択でもとれるようにオプションをつけておく事が現世代としてやるべきこと。
Q.津波に対しての考慮は。
A.津波が発生しても、最大で20~30cmであるため、すでに考慮されている。

<現場視察>
原子炉建屋(管理区域内)の原子炉頂部まで行き、燃料プール等現場視察を実施。

台湾視察 台湾団結連盟・台湾環境保護連盟との意見交換会

台湾団結連盟
2001年、李登輝を支持する国民党台湾本土派の立法委員(国会議員)が離党して結成。国家アイデンティティや対中関係では民進党と似た「台湾本土・主体性」を強調し、「台湾独立」を主張する中道右派政党と見做されていた。しかし、黄昆輝(3代目 写真中央)が主席になってからは、中道左派へと軸足を移し始めている。台湾環境保護連盟が進める台湾第4原発廃止の国民投票を支援する。

台湾環境保護連盟
1990年代より世界の緑の党と連携し、環境保護、反原発運動を行っている。台湾第4原発の廃止、国民投票の実施を求める署名運動を展開中。

出席者
台湾団結同盟 黄昆輝
台湾環境保護連盟 高成炎(台湾大学教授・工学博士)、徐光容(台湾大学教授)、
寥氏、李秀容氏、

台湾団結同盟 黄昆輝 主席の歓迎挨拶
「日本と台湾は歴史的にも非常に密接な関係にあります。今回の原子力発電にかかわる視察を大いに歓迎いたします。去る、3月11日の東日本大震災は日本に甚大な被害をもたらしました心よりお見舞いを申し上げます。しかしながら日本人の落ち着いた行動、冷静な行動に感心し、敬服しました。日本と台湾の国民は兄弟みたいなものです。台湾国民はそういった思い出できるだけの支援を行ってきました。日本国、被災者の皆さんの復旧復興をお祈りします。
高教授は台湾の原子力発電に関する知識では権威であり、皆さんとの意見交換は意義がある。国民投票をして非核しようと高教授は活動しており、台湾団結連盟もサポートしていく。意見の違いがあることがよいことだ。」とのご挨拶をいただく。

台湾環境保護連盟の高成炎教授からは、「東日本大震災に心からお見舞いを申し上げます。地震発生後5月と7月に日本に行き、仙台、東京、福島を視察した。福島の原発事故は大変大きな問題だ。日本でも原子力発電所の問題を議論してきた。
台湾環境保護連盟は環境問題を20年間取り組んできた。昨日も台湾で地震があった新聞には出ていないが心配だ。今日は地震への対応を聞きたい。」との挨拶があった。
私は、東日本大震災では、台湾の皆さんから世界で一番のご支援をいただいたことに感謝を申し上げ、本日は原子力発電に賛成、反対を乗り越えた意見交換の意義を述べ挨拶の言葉としたうえで、「原子力発電所は安全が大前提である。人間の英知で原子力発電所をコントロールできるのか否か。安全にコントロールできなければ止めるべきだ。安全にコントロールできても再生エネルギーなどの代替エネルギーよりもコストが大きければ止めざるを得ないだろう。日本でも脱原発の議論が高まっているが、タイムスケジュールがないまま、脱原発の言葉だけが大きくなっている。エネルギーセキュリテーの議論が必要である。地球温暖化CO2の問題も私たちに課せられた重要な課題だ。」と原子力発電、エネルギーに関する意見を述べた。

意見交換会の要旨は以下のとおりであります。
台湾:七月から八月まで日本を訪問し、現地の人と話をした。原発被害にあった人が今後どうしていくのか、誰も分からない。将来のエネルギーを考えていくうえで、福島県議会が廃炉の議決の効果はについて。
日本:福島県議会の議決について、法的拘束力はないが、民意としての重みはある。
台湾:県知事はその権限はあるか。
日本:知事は議会の判断、立地地域住民の理解がなければ再稼働はできない。
台湾:柏崎市議会では脱原発の決議をしたか。2007年の中越沖地震の影響からは回復しているのか。使用済み核燃料の処理、原子力を無くしたとして、原子力関連従事者のために政策や補助金を日本政府考えているか。
日本:日本:柏崎では5基が止まっている。自動停止は4基で、1号、5号、6号、7号機が動かせる状態にある。定期検査が1号と7号。2、3、4号機は修復途中。東日本大震災よりも実は中越沖地震の方が揺れは大きかった。
台湾:本当の話か。東日本大震災が最大の地震ではないのか。
日本:地震の大きさ、エネルギーはもちろん東日本大震災が大きいが、実際の揺れは中越沖地震の方が大きい。原子力発電所がなくなった場合の雇用対策は、議論されていない。台湾:我々緑の党は、2007年に世界大会で、台湾と日本の共同で原発の廃止を提言した。ドイツでは、1998年から原子力発電所の閉鎖をはじめた。3.5万人の原子力発電所の従事者が、自然エネルギーに転換することで、雇用が35万人に増えた。
台湾の現状だが、西の方では原子力発電所や廃棄物の場所を建設している。台湾政府は一時借り受けで、核施設を作っておきながら、一旦作ったら使い続けるという詐欺のような事をやっている。日本政府も国民を欺いているのではないか。
日本:柏崎では約7000人が原子力発電所の関係で働いている。即時、廃炉になったら、この人たちの就職口をどうするかという現実の問題がある。柏崎市の年間予算530億円のうち15%が原子力に関する財源である。まちづくりと大きく関連する問題である。
台湾:それは原子力発電所の安全に市がかけている金額か、それとも市に入ってくる金か。
日本:入ってくる金。使用済みの核燃料にも税金をかけている。安全対策は、原子力発電に関する立場は別に国や事業者に強く求めている。
日本:第四原子発電所はどのように考えているか。
台湾:建設に反対であり、国民投票で決めたいと思う。住民投票の提案には、署名は1万6000が必要。新北市自体は住民投票自体を反対している。住民投票が実現しないため、国民投票実現に向けた運動に作戦を切り替えた。
台湾:津波のあとに現地に行った。私は20数日現地にいて、日本国民は苦情を言うことはなく、日本政府も積極的に救出することはなかった。道路、鉄道の修復は早いが被災者へは不十分ではないか。原子力発電所の近くなら、余計、無力感が被災者にでたと思う。チェルノブイリでは5時間後にメルトダウンしたのを明らかにしたのは2、3ヶ月後だった。こういった隠蔽もあるので、日本は原子力はやるべきではない。
日本:国民性もあり、津波や地震は天災だから仕方ないという話が現地にいった感想。国の対応は、民主党が政権をとってリーダーシップがなかった。阪神淡路大震災は即対応したという経緯があるので、政権や政治の問題もあると思う。
日本:国の発表が遅れたのは事実。SPEEDIなどのシステムが活用されなかった。農作物の汚染の問題など事前の予想ができた可能性もある。日本政府の対応は不可思議。日本政府への不信感がでてしまうのは仕方がないと思う。
台湾:代替エネルギーについては考えていないのか。
日本:原子力発電所1基分だと山手線内すべてがソーラーパネルとなる。現実的に代替する費用は26兆円以上といわれるので、それを誰が負担するかが問題。
台湾:柏崎市や新潟県のレベルではどうか。
日本:日本のどこの自治体も代替エネルギーを政策的に掲げている。実際には数%の発電しかないのが事実。
台湾:福島原子力発電所の事故は冷却ができていない。4号機の燃料プール危険ではないか。
日本:燃料プールの冷却についてはまだ模索している状況にあって、今後も真剣に取り組む。
感想
・台湾団結連盟は、李登輝元総統を指導者としているとされているが、現在の黄昆輝主席になり中道左派的なスタンス。台湾環境保護連盟とは台湾環境保護連盟が進めている、第4原発廃止の国民投票の実施を支援する立場。
・東日本大震災に対しての関心は高く、被災地の視察やボランテァ活動も行っている。被災者支援の遅れを憂慮している。特に福島の原発事故による健康や環境への影響、日本政府の対応に不信を持っている。
・中越沖地震の際の柏崎刈羽原発の揺れが、今回の福島第一原発の揺れよりも大きかった情報が伝わっていなく、原発の耐震、安全対策に対する誤認があるようだ。
・福島第一原発4号機の低温冷却に対しても懸念を示すとともに、使用済燃料の処理対しても日本の核燃サイクルは失敗だとの見解を示した。
・再稼働に対しては、安全の確保・確認が大前提であり、法的根拠はないが立地自治体及び地域住民の理解が必要との考え方には共感を示した。
・再生エネルギーに対しては、ドイツを引き合いに出していたが期待感だけが大きい感がある。
・日本の原発反対派の主張と同じであったが、柏崎刈羽原発視察の要望が出るなど安全対策等は共通な認識を持てた。

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