大津市議会議員 佐藤弘

一人のひとを どこまでも大切に 心豊かな まちづくりを目指します

保全業務マネジメントセミナーに参加

建設 環境 研修 議員活動 / 2017年10月24日

全国ビルメンテナンス協会主催の保全業務マネジメントセミナーが23日大阪で開かれ参加しました。

当日の朝は、前日の台風の影響でJR琵琶湖線は1時間に1本程度の大幅な間引き運転で大阪の会場に行くまでが大変でした。

9時30分から17時まで、7部構成の次第で濃い内容のセミナーでした。

カリキュラム_> H29年度保全業務マネジメントセミナー

IMG_3954 (1)

 

以下、テーマごとの所感。
1. 官庁施設の建築保全行政の動向
官庁施設の保全業務を委託するに当たっては「建築保全業務共通仕様書(平成25年度)」及び「建築保全業務積算要領(平成25年度)」に基づいておこなわれることになっている。本市においてもこれらの仕様書を基準に委託契約がおこなわれているか検証する必要がある。
積算については毎年国土交通省から「建築保全業務労務単価」がホームページにて公表されているが、10の代表地区の労務単価になっていることから、該当しない他都市においては別途労務単価を設定することになる。単価の設定については最低賃金の比率等により算出することは合理的であると考えられるが、大津市としての算出基準を明示すべきであると考える。なを、現在30年度の改定に向けて検討されていることから、改定後には速やかに対応すべきである。
インフラ長寿命化対策については、平成28年に大津市公共施設等総合管理計画が策定しているが、今後さらに平成32年までに「個別施設計画」を策定することが求められている。この個別施設計画作成を支援する「官庁施設情報管理システム(BIMMS)」を活用することにより、短時間で個別施設計画を作成できるとしていることから、本市においても導入を検討されたい。

2. 建築の劣化と点検のポイント
公共施設の長寿命化対策が求められているが、建築物を保全するための維持管理の基本は日常点検や定期点検を行い、劣化の傾向を知ることである。劣化の傾向を把握することが重要であるのは、ある程度の年月が経過すると劣化が急激に進むためである。この劣化が「危険な劣化」か「緊急性の低い劣化」を点検により判断し、「危険な劣化」であれば、次に修繕を計画的に実施することが必要である。
大津市でも、この点検と修繕サイクルが建築物に対して適正に行われているか確認したい。

3. 「ビルメンテナンス業務に係る発注関係事務ガイドライン」の概要
本ガイドラインについては、厚労省から講師を招いて講演がおこなわれた。本ガイドラインが作成された背景にはビルメンテナンス業界の現状において、ダンピングが行われやすい環境にあることや、責任者の人材育成、若者の採用、女性の担当業務の拡大などの改善が求められていることなどによる。
近年、大津市では異常に低い価格で落札されていることから、ビルメンテナンス業務の発注については本ガイドライに基づく適正な運用が図られることを望むものである。

4. 清掃業務における仕様書(積算)の考え方
清掃業務については、成果が形として見えにくいことがある。最近は光沢度計など光沢の度合いを数値で表す測定器もあるので、アナログ的な「光沢があり美しい」から「反射率何%」であったと数値で示す方が客観的である。また、例としてあげていたのがトイレの清掃を1日2回行う仕様であったことから、朝の8時と10時に清掃をした業者があったという。常識的には午前と午後に時間をあけて行うべきであろう。しかし、前者の方法でも仕様書と違ったことにはならない。このことは常識的に積算した業者とそうでない業者の入札金額にも影響することから公正・公平な入札にも影響することになる。このようなことから清掃業務の仕様書は具体的に記述するなど見直す必要があると考える。

5. 設備管理における仕様書(積算)の考え方
設備管理についても建築保全の考え方と同様で、日常点検(法定点検)と保守業務を合わせて行うことで機械機器の延命を図ることが出来る。例えば、設備が新しければ5年後までは点検回数を減らし、5年、10年が経過したらそれぞれ点検回数を適正な回数に増やしていくなど条件によって回数を決めて、仕様書に明記しておくことが必要である。
積算できない作業内容の記載例として、単に日常・月間・年間点検業務として業務項目だけをあげている場合である。また曖昧な表現の事例として、資格等に関する項目で「〇〇主任技術者(3種又は同等以上の経験者)」とあった場合に「同等以上の経験者」では分からない。
業務実施にあっては履行チェックが必要である。受託業者の自主検査シートでは設備の実態は判断できないので、検査シートを使って受託者と一緒に確認する必要がある。
業務の引継ぎについては、新規業者が入場する前に適切な期間を設けて、現受注者と新受注者、発注担当者の3者で管理実態を確認することは重要であると考える。

6. 「ビルメンテナンス業務に係る発注関係事務ガイドライン」の導入と適用のポイント
業務発注に必要なポイントとして、一つは「業務要求水準書」の作成である。これには発注者が施設の維持管理計画を作成することで、その計画に見合う業務要求水準が求められることになる。また入札見積の段階で、入札業者の適正な見積が可能となるように、質疑応答の機会を用意する必要がある。
入札方式には価格競争入札と総合評価型入札があるが、ダンピング防止や地元雇用、障害者雇用、地域貢献度などの評価が可能な総合評価方式の導入を検討すべきと考える。なお総合評価の採点で価格の配点割合が高いと、結局は低価格で入札した業者が落札してしまうので、配点割合を50%程度にすることが望ましいと考える。
入札参加業者の懸念されることに、業者の年間売り上げよりも大きな入札物件に参加することがある。この対策として、入札参加資格において適切な業者が入札参加対象となるように、公共工事のランク付けと同様に業務委託についてもランク付けをする必要があると考える。

7. インスペクター制度及びエコチューニングビジネスモデル確立事業について
インスペクターとは建築物清掃管理評価資格者の通称で、業務における作業品質及び業務管理体制を評価・改善し建築物の使用者・利用者等に良好な品質を提供することを目的とした全国ビルメンテナンス協会の認定資格です。ガイドラインでは総合評価型入札において業務実施能力の評価項目の設定が求められていることから、インスペクターを評価点項目としての入札が増えてきている。
本市においても今後、インスペクターを入札条件に加えることで清掃業務の品質向上につながるように業者の差別化を図ることも必要と考える。