平和安全法制に関するQ&Aを作成しました。
平和安全法制Q&A ←PDFファイル
平和安全保障法制Q&A
Q: なぜ今、安保関連法案なのか
A: 政治が日本周辺の軍事的脅威から国と国民を守るための仕事をすることは最も大事なことです。
近年、大量破壊兵器が容易に国境を越えてくることから、地域の安全保障に与える脅威が深刻化しています。
北朝鮮では、日本の大半を射程に入れる数百発もの弾道ミサイルを配備し、発射されれば約10分で到達できる状況になっています。また、2006年以降、3回の核実験を繰り返しています。
このように、我が国の安全保障環境は1972年に政府見解がまとめられた時からは想像もつかないほどに大きく変化しています。
平和は唱えるだけでは実現できません。今回の法整備の大きな目的の一つは、現状の脅威から日本を守るため米国との防衛協力体制をこれまで以上に強化することにあります。
小川和久静岡県立大学特任教授は国会での参考人意見で「どんなに時間をかけて丁寧に仕上げたものでも、タイミングを逸してしまったら何の価値もない。一番大事なのは、国家国民にとっては安全ですから、安全を確保するための枠組みを素早くつくる。その安全な枠組みの中で、時間をかけてやり残した部分を丁寧に仕上げていく、これが法律制度の議論であります。」と述べています。
Q: 平和外交を優先すべきでないのか
A: 日本の平和と安全を守るために大切なのは、紛争を未然に防ぐための平和外交努力です。
戦後70年間、わが国は日本国憲法の下で平和国家として歩み続けてきました。専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にはならず、非核三原則を守るとの基本方針を堅持してきました。この根幹は一切変えません。
この努力を尽くす中で、安保法制整備による「抑止力」の強化も、紛争の未然防止につながります。
Q: 安保法制で日本は戦争をする国になるのか
A: 認められる武力行使は自衛の措置に限られ、他国の防衛を認めるものではありません。
平和安全法制は戦争をするためのものではなく、あくまでも戦争を未然に防ぐためのものです。
安倍首相も「今後とも自衛隊が戦争をする国になるための能力や装備をもつことは一切ない」と明言しています。
これまで「国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される」のは我が国へ直接武力攻撃が発生した場合に限られてきましたが、改正により「他国に対する武力攻撃を契機とする場合」であっても、「国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」は「自衛のための3要件」の下で措置できるとしました。
この3要件の下で許容されるのは、あくまでもわが国の存立を全うし、国民を守るため、すなわち、わが国を防衛するための自衛の措置としての武力の行使に限られる。
これは、他国を防衛することを目的とするものではなく、あくまでも憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢である専守防衛の枠内であることは言うまでもありません。
Q: 抑止力とは?抑止力強化で緊張が高まることにならないか
A: この法案は自衛のためであり、攻撃を受けることがなければ武力の行使はしません。防衛以上の軍事力をもつ国が日本の防衛体制の強化を恐れることや批判するには当たりません。
紛争において相手の実力行使を防ぐには、相手に「日本に力を行使すると、逆に強い反撃を食らい、自分がひどい目に遭う」と思わせて止まらせることが必要で、これが抑止力です。
しかし、日本は専守防衛なので、自衛隊の能力に自ら限界を設けています。相手を思いとどまらせるためには、これを超えた軍事力が必要となりなります。それが日米同盟により、日本は相手に対して抑止する力を備えたことになります。
平時から有事に至るまで隙間のない法制を整備することによって、日米間の連携や協力が、緊密にできるようになります。また、さまざまな想定のもとで共同訓練も可能になります。こうした日頃からの十分な備えが、結果として「抑止力」を高め紛争を未然に防ぐことができます。
逆に、もしこの法案が通らなかったら、相手国に日米同盟の弱体化を見せつけることになり、これまで以上に相手国に紛争の火種を焚き付けられる機会を与えてしまうのではないでしょうか。
外国との緊張が高まるのではないかということについては、中国や韓国を除くアジア太平洋諸国12カ国が日本を支持し、地域の平和貢献に期待をしています。
Q: 後方支援は武力行使と一体であり、自衛隊員が危険にさらされる
A: 後方支援は、安全な場所で外国軍隊に対し輸送や補給などで協力することであり、武力行使ではありません。
重要影響事態法案と国際平和支援法案が後方支援を定めていますが、前者は日本の安全、後者は国際社会の安全のためです。
両法案とも、自衛隊の後方支援が外国軍隊の武力行使と一体化しないように、「現に戦闘行為が行われている現場」では実施せず、近くで戦闘行為が行われると予測される場合などには部隊長が活動を一時休止します。
実施区域で後方支援をすることが困難になれば、防衛相が活動の中断を命令します。
また、国連決議のあることが大前提であり、自衛隊派遣は原則国会承認が必要になっており、厳格な歯止めを定めています。
① 重要影響事態法案
そのまま放置すれば日本に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態など、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態(重要影響事態)に、自衛隊が米軍等の部隊に対し後方支援をするものです。
② 国際平和支援法案
(1)国際平和を脅かす事態が発生
(2)国連憲章の目的に従って国際社会が共同で対処している
(3)日本が主体的・積極的に寄与する必要がある
の場合に限って自衛隊の後方支援を認めました。
Q: 安保関連法案は憲法違反だと言われているが
A: 憲法第81条に「最高裁判所は一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と規定されており、憲法解釈の権限を有するのは最高裁判所です。
憲法学者、法制局長官経験者が憲法違反と述べているから今回の法案は違憲だと短絡的に考えるべきではありません。そういう参考意見を踏まえ、政府の憲法解釈の一部変更が正しいかは国会でしっかりと議論されるべきです。
憲法前文には「国民は平和のうちに生存する権利がある」と書いてあります。13条には「国民の生命、自由、幸福追求の権利、この人権は立法その他国政の上で最大の尊重を必要とする」と書いてあります。
大事な国民の生命自由幸福追求の権利、この人権が最も侵されるのは、外国から武力攻撃を受けて、無差別に私たち国民の命が奪われるような厳しい状況が考えられます。
そのようなとき、人権の破壊をさせないように、立法・司法・行政が先ず責任を負わなければいけないと憲法に書いてあります。外国から武力攻撃を受けたときに、それを押し返すという役目は政府がとらなければならない、というのが日本政府の長年の考え方です。
自衛隊は憲法違反か、憲法学者122名にアンケート調査したところ、自衛隊は「憲法違反である」が50名、「憲法違反の可能性がある」が27名で合わせて77名(63%)が自衛隊の存在そのものが憲法違反との回答でした。
さらに、憲法を改正すべきかの質問には、99名が「かえる必要がない」と答えています。つまり、「自衛隊は違憲だが、憲法改正の必要はない」と矛盾した答えになります。憲法学者でも、必ずしも論理的に正しいとは言えないのです。