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 区内製造業への支援と「大田の工匠100人」について伺います。

                

 昨年12月15日に発表された、12月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業・製造業がプラス25と、前回9月調査のプラス22から3ポイントの改善となりました。この改善は5四半期連続となり、世界的な景気拡大に伴う輸出の増加や円安による収益環境の改善などが景況感を押し上げたとみられています。

 こうした国の経済動向にも後押しを受けてか、先日発表された平成29年10月~12月期の大田区の景況でも、製造業においては今期の業況はCとなっており、区内全体ではないにしても景気感は数年前と比較しても上向き傾向にあることが見受けられます。また、この製造業のコメントを読むにつけ、前向きな内容が多少なりとも含まれていることに期待感を持つことができます。〈金属製品、建設用金属、金属プレス〉業では、『10年前、20年前と客先は多少の変化こそあれ、さほど変わっていないが、仕事の要求内容に変化あり。それに対応して収益を確保。』や、『自動車関連部品の受注が大幅に増加し、増益が続いている。採用活動が難航し、人材不足の状態が続いてしまっている。』など、受注増加の景気感が読み取れます。

 この業況に対し、大田区産業振興協会のものづくり連携コーディネーターは、『古い工作機械のみ有する企業の売り上げは伸びていないが、新しい機械を導入している企業を中心に、難加工、難削材などの受注が増えている』との所見を述べ、今後の課題として『機械の老朽化』を挙げられています。

              

                   

問① 初めに、大田区は区内製造業の状況をどのように捉えているか見解をお伺いします。

                  

答弁:工業振興担当課長

 区内製造業の景況につきましては、昨年10月から12月期の「大田区の景況」において、製造業の「経営上の問題点」を「売り上げの停滞・減少」とする割合が減っていることからも、委員お話しのように、比較的良好な状況であることがうかがえます。

 日本政策金融公庫の調査によりますと、製造業の中小企業では、「機械・装置」に対する設備投資額が増えています。また投資的目的としては、「更新・維持・補修」とする割合が最も高く、上昇傾向にあります。

 区としましては、設備の老朽化を課題として新たに捉え、国や都との連携により、生産性の向上や高付加価値化につながる設備投資を支援し、促進してまいります。

               

               

 ものづくり連携コーディネーターの指摘にもある『機械の老朽化』については、公明党広川委員の総括質疑でも問題提起させて頂いたところでもあります。ただ、大型の工作機械の更新となれば事業者にとって多額の経営負担となることから、なかなか進められないのが現実です。こうした状況を踏まえ、国は「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金」などでその支援を進めておりますし、大田区では「中小企業融資あっせん制度」を設け事業者の負担軽減に資する支援策を講じているところであります。

              

                

問② そこで、本区が進める中小企業支援、特にこうした製造業の設備投資に係る支援事業について、これまでの経過や現状についてお伺いします。

               

答弁:工業振興担当課長

 委員お話しの通り、区では、区内中小企業の運転資金や設備投資等に係る資金調達について、「中小企業融資あっせん制度」により利子補給等による支援を行ってきたところです。

 また、製造業においては、リーマンショック以降、区内企業の設備が老朽化傾向にあっても、厳しい経営環境や受注確保の見通しが立たない中では、高付加価値化などを目指した積極的な設備の更新や導入が困難な状況にあったため、区内企業の産業競争力を強化することを目的に、平成24年度から「大田区設備投資助成」を導入しました。

 一方、国においても平成24年度補正予算におぴて、現在の「ものづくり・産業・サービス経営力向上支援補助金」いわゆる「もの補助」が開始され、平成26年度からは東京都において「革新的事業展開設備投資支援事業」が開始されました。

 このように追随する国や都の事業において、助成率や上限額が高く設定され、区内企業の利用が伸びたことから、区の設備投資助成は休止し、現在は、「中小企業融資あっせん制度」と国・都の事業の連携による、区内企業の設備投資に係る支援を進めています。

                 

                   

 大田区中小企業融資あっせん制度は、区が低利の融資を金融機関にあっせんし、融資実行後の支払利子の一部または全部を補給する事業で、制度一覧を見るとそのメニューは一般設備資金、開業資金、環境対策資金、チャレンジ企業応援資金など多岐にわたり、区内企業の様々なニーズに対応するべく相談体制の充実を図っていると認識しております。

 私も数社ですが、工作機械の導入や削り出し加工用工具の購入経費などの相談のため、産業プラザの相談窓口へご案内した経緯もあり、その時の対応も含めてこういった支援策の充実に心強く感じております。

 平成30年度予算では、産業経済費の経営基盤の強化支援として8億9,888万5千円が計上されており、前年度比590万6千円の減額となっております。

               

                

問③ 本来であれば増額計上をし、さらなる支援策の充実を進めていただきたいと考えるところですが、この中小企業融資あっせん制度の利用状況・実績についてお伺いします。

                

答弁:工業振興担当課長

 中小企業融資あっせん制度を利用し、製造業を営む事業者が設備資金として融資を受けた件数は、5年前は100件程度でしたが、平成26年度は148件、27年度は148件、28年度は133件となっており、高い水準で維持しております。

 委員お話しの30年度予算額については、「経営基盤の強化支援」の総額では減額しておりますが、利子補給については400万円余の増額となっております。

 平成26年度に創設した、経営革新に取り組む事業者を対象として全額利子補給を行う「チャレンジ企業応援資金」は、製造業の設備投資に対し、利用条件を緩和して使いやすくしており、国の補助金が執行されるまでの繋ぎとしての利用もあります。

 区としましては、今後も設備投資に積極的に取り組む事業者を応援してまいります。

              

               

 国はこれまで、「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金」のほか、「中小企業等経営強化法」に基づき、中小企業が生産性向上のために導入した設備に係る固定資産税に対し、軽減措置として3年間において税率を1/2とする軽減や、経営力向上計画に基づく事業に必要な資金繰りの支援、認定事業者に対する補助金における優先採択などの支援を行ってきました。

               

                

問④ そこで、このような国の支援事業に対する区内企業の活用実績についてお伺いします。

                 

答弁:工業振興担当課長

 まず国の「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金」いわゆる「もの補助」でございますが、平成24年度以降、名称を変えつつ継続されており、平成28年度補正予算事業での採択件数は、全国で6,157件となっています。大田区におきましては、平成24年度以降の採択件数の累積が446件で、都内では最多となっております。

 また、中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」について、国から認定され、税制や金融支援等の措置を受けることができる企業は、大田区内で241企業に上ります。

 こうした国の支援への申請に当たっては、中小企業の相談窓口として国から認定を受けた「経営革新等支援機関」が支援します。大田区内においては、大田区産業振興協会をはじめ、金融機関、公認会計士、税理士、中小企業診断士などが認定されており、区内中小企業を支援しているところです。

              

               

 この中小企業等経営強化法に基づく支援措置は、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの適用期間となっておりますが、国は先月、国内の中小企業が抱える課題である「老朽化が進む設備から、生産性の高い設備への更新」を後押しする必要性から、制度の新たな特例措置として償却資産に係る固定資産税の税率をゼロ以上1/2以下で、市町村の条例で定める割合とすることを決定しました。これは先日、自民党の塩野目委員も触れられておられました。

 この法整備を受け横浜市は、市内の中小企業を対象に、生産性向上につながる設備投資への固定資産税を3年間免除すると発表。2018年度から20年度に取得する設備が対象で、市は5月に開く市議会へ条例案を提出する予定との報道もありました。

東京23区は東京都の決定によるところでありますが、是非、区内の製造業の支援に繋がるよう他区との連携を強め制度の推進を図って頂きたいと要望させていただきます。

             

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 次に、大田区平成30年度予算の中でレベルアップ事業として計上されている「大田の工匠 技術・技能継承」について伺います。

 先日、ある町工場の社長からこのようなお話しを伺いました。社長は、「戦後の高度経済成長期における加工技術の発展は、全て人によるものだった。旋盤士やフライス工など、本当に高度な技術を有した職人が溢れていた。ところが、なお生産性を上げるためには工作機械に技術を持たせることが必須となり、結果、人の開発・教育が遅れてしまっているというのが現代。」との事でした。

 先ほどの生産性向上のために新規工作機械の導入を促す施策と相反するようですが、その工作機械を使いこなすためにはやはり、職人として何万分の一の誤差も見逃さない感性を磨く必要があるともお話しくださいました。

 大田区では、平成20年度から開始した「大田の工匠100人」から「大田の工匠Next Generation」、そして平成29年度からは「大田の工匠 技術・技能継承」として新たな事業を立ち上げ、『技術・技能継承』『若手人材の確保』という区内企業の課題解決とともに、大田区が持つ「ものづくりブランド力」のPR、活性化を推進しています。

 この一連の事業を振り返ると、大田の工匠100人では計103名、大田の工匠Next Generationでは計56人、そして今回の大田の工匠 技術・技能継承表彰では6組12名の受賞が決定し、総勢171名にも及ぶ大田区認定の技術職人が誕生したことになります。

                 

                 

問⑤ この171名の方々に担っていただく役割や人材確保への取組み、また今後の活躍について区はどのように連携を図っていくのか、見解をお伺いします。

                

答弁:工業振興担当課長

 区では、後継者がいないことを理由に、技術力の高いものづくり企業が廃業せざるを得なくなる、いわゆる黒字廃業が増加しており、「大田の工匠100人」をはじめとする優秀技術者の皆さまが持つ技術を、いかにして区内企業の中で引き継いでいくかが大きな課題となっております。

 「大田の工匠100人」の受賞者の方々による、次世代への技術の継承の取組みとして、人材育成をしようとする区内中小企業に対する「大田の工匠」の派遣制度を、大田区産業振興協会の「ビジネス・サポート・サービス」の中で実施しております。また、今年度から開始した「大田の工匠技術・技能継承」の受賞企業には、「大田の工匠100人」の受賞者を師匠とする取組みもあり、今後、区内における技術・技能継承の取り組みが加速することを期待しているところです。

 さらに、「大田の工匠」の受賞者の皆さまには、東京都の「東京マイスター」の受賞者も多数おり、国の「現代の名工」などより高いレベルの受賞を目指す機運を醸成し、大田区が誇るものづくりの素晴らしさをPRしてまいります。

                

               

 只今ご答弁頂いたように、大田の工匠の役割・期待は非常に大きいものであります。その上で、私の一つの思いをお話しさせて頂きたいと思います。

 かつて私の住んでいる六郷地域にお住まいで、半世紀にもわたる年月を金型製作に携わってこられた一人の壮年がいらっしゃいました。4~5年前にお隣の川崎市へ転居をされました。その方は、平成23年度大田区ものづくり優秀技能者表彰を受けられ、金型製作に真正面に向き合い「大田の工匠100人」として、更に技術の向上に取り組まれておられました。

 しかし、お元気だったにもかかわらず、昨年の暮れに体調が急変し故人となられました。

 新年3日に執り行われた葬儀において故人を忍ぶ弔辞の中で、大田区のものづくり分野で懸命に駆け抜けてきた歴史、また、それを大田区の宝として表彰して頂いた誉を胸に、日々を過ごしていたとのお話しに私自身、胸が熱くならざるを得ませんでした。

 これは要望になりますが、どうか、大田区におかれましては、区の発展に多々ご尽力下さる中、故人となられた方々に対しても敬意を表する意味で、今後、感謝状等の贈呈などご検討いただけると幸いです。

               

以上で、産業経済費についての質問をおわります。

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