【決算特別委員会 審査第2日】

  福祉費に関連して、大田区の子どもたちの歯科診療について伺います。

            

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 生きる者にとって食べることは、心身の成長と共に命を繋ぐ大切な行動であります。そのため人間は、古来より食べる物の栄養のバランスに気を払い、健康に留意するとともに、食べるための環境を整える努力も行ってきました。その一つが口腔環境のケア、いわゆるデンタルケアであります。

 私事で恐縮ですが、私は小学校低学年の頃から虫歯治療のために歯科医に通い、社会人となった今も定期的に治療を続けています。先日、かかりつけの先生に、「私の歯でこれまでに治療歴の無い歯は何本ありますか?」とお尋ねしたところ、『4本です』との驚愕の答えをいただきました。これを機に、残された4本の歯を大事にしていこうと硬く決意したのは言うまでもありません。

 さて、文部科学省の調査によると、1970年代では国全体で9割以上の子どもに虫歯があったが、現在は大幅に改善し、虫歯が1本も無い子どもは幼稚園から高校生を含めて全体の4割以上との統計が発表されています。

 これは、学校教育における児童の生活改善への取り組みの進捗や、子どもに対する歯科診療の充実、家庭での保護者の意識変化による丁寧な歯磨き習慣の定着等々、様々なデンタルケア環境の変化によるものと推察されています。

 その一方で歯の健康の格差が広がり、10本以上の虫歯や歯根(歯の根っこ)しかないような未処置の歯が何本もあり、食べ物をうまく噛めないために栄養状態に支障をきたし、体の成長に大きく影響を与えている状態、いわゆる「口腔崩壊」と呼ばれる子どもの存在が問題視されています。

 本年5月、兵庫県保健医協会は、兵庫県内の小中高・特別支援学校を対象に2016年に行った学校歯科治療調査で、歯科受診が必要な子どものうち65%が未治療の状態で、口腔崩壊の子どもが在籍する学校は35.4%に上ると発表しました。「共働きや貧困などで子どもを歯科に連れていくことができない家庭もある。学校で個別に家庭状況を把握したうえで指導することが必要」との声も掲載されていました。

               

                  

 問①大田区の教育概要 平成29年度版に記載の、平成26年度から平成28年度にかけての歯科検査の状況によると、区内小中学校の児童生徒約39,000人における永久歯のう(虫歯)の内容は、未処置歯数、う歯による喪失歯数、処置歯数ともに年々減少傾向にあり区の取り組みの効果が読み取れますが、この取り組みについてお伺いします。

              

 答弁 学務課長:大田区立小中学校では、年1回、全児童・生徒を対象に定期歯科検診を実施しているほか、学校歯科医と提携し、歯磨き指導や相談を行っております。平成28年度は、小学校で年間延べ520回、中学校で延べ153回実施しました。

 これに加えて、虫歯予防のためのフッ素塗布事業を行っている学校もあるほか、各学校独自の取り組みとして養護教諭や学校歯科医が、歯と口の健康についての講義や歯垢染色剤を使った歯磨き指導を実施したり、区内の各歯科医師会が主催する図画・ポスター・作文コンクールにクラス単位で応募する等の活動を通じて、虫歯予防と口腔衛生の改善・啓発に取り組んでおります。

              

                

 教職員はじめ、多くの方々の連携があって、このような素晴らしい成果が挙がっていることを伺いました。引き続きの取り組みをお願い致します。

 う歯の処置率を上げることで健康状態を向上させることができ、ひいては学力向上に繋がったとのお話しも耳にします。早寝早起き、しっかり朝食をとる、家庭学習の充実など生活習慣の改善も重要な課題だと思います。

 一方で、先ほどの兵庫県保健医協会担当者の「共働きや貧困などで子どもを歯科に連れていくことができない家庭もある。」との言葉は重く受け止めるべきと考えます。

 大田区は、子どもの貧困をめぐる現状を捉え、子どもとその家庭の生活実態を出来る限り正しく把握し、地域共通の課題として子どもの貧困対策に取り組むことを目的として「おおた子どもの生活応援プラン」を策定しました。

         

子どもの応援プラン

 プランに記載の小5保護者アンケートで、「お子さんは、今、虫歯がおよそ何本くらいありますか」との設問に対し、1本以上の回答があったのは、生活困難層では23.4%、非生活困難層では12.7%で、そのうち3本以上の虫歯は生活困難層で6.7%、非生活困難層で2.5%となっており、生活困難層において未処置の傾向が高いことが見受けられます。これに対し同じ小5保護者アンケートにおいて、「過去1年間に、お子さんを医療機関で受診させたほうが良いと思ったが、実際には受診させなかったことがありましたか」との設問に、受診させなかったことが「あった」と回答したのは、生活困難層で16.0%、非生活困難層で8.4%。その理由を尋ねた設問に対し、「多忙だったため」との回答が生活困難層では43.0%、非生活困難層では44.4%と高く、受診の必要を思いながらも医療機関へ連れていくことができないという現実が浮き彫りになりました。

                

                 

 問②子どもを通院させられないことは、保護者にとって切なく、同時に子ども自身にとって自己を尊重する機会を奪われる点で問題であると言えます。長時間労働などにより多忙な保護者が、子どもの歯科通院に向けて一歩踏み出すために、区の今後の取り組みについて伺います。

            

 答弁 健康づくり課長:多忙を理由に子どもの通院をためらっている保護者が少なくない状況は、見過ごすことのできないものと認識しております。

 昨年度発行の「おおた医療BOOK」では、歯科医院も含む区内の医療機関の診療時間を記載しており、中には、平日夜間や土日に診療している医療機関もあります。

 また、小児期からの歯と口の健康づくりの重要性についての理解を深めることや、かかりつけ歯科医を持つことも、子どもの歯科受診機会の確保に効果があるものと考えております。

 今後も、地区歯科医師会、歯科医療機関との連携・協力のもと、子どもに対する歯科医療の充実に取り組んでまいります。

              

                

 「おおた子どもの生活応援プラン」の策定には、大田区子どもの貧困対策計画策定業務委託、及び子どもの貧困対策計画検討委員会の開催を含み約1,500万の予算が執行されました。アンケートを通して見えた様々な家庭環境にどのように関わっていくのか、実効性のある計画にしていかなくてはなりません。

             

 問③平成29年度予算の事業概要によると、貧困対策活動団体調査として6741千円が計上されており、「区民及び地域活動団体等の自主的な活動の把握・整理を行う」と記されておりますが、今後の具体的な取り組みについて伺います。

             

 答弁 子ども生活応援担当

 昨年度実施した生活実態調査から、困難を抱えるご家庭程孤立しやすく、困難状況が複雑化・深刻化する傾向にあることが見えてまいりました。

 子どもとその家庭の、様々な生活の場面での困難を解決するには、行政機関だけでなく、地域で活動する多様な分野の関係者が横断的に連携・協力することが重要です。

 そこで、現在、約500の区内活動団体に対し、社会資源調査を実施中でございます。

 今後は、子どもと家庭が抱える多様な問題を、地域力をもって支援する体制構築を目指してまいります。そのため、この調査結果を踏まえて、本プラン推進に資する区民活動を把握いたします。そのうえで、子どものために活動する団体同士が連携できるよう支援してまいります。

 さらに、子どもとその家庭に必要な支援情報が届くよう、各団体と連携した効果的な発信方法も検討してまいります。

              

             

 昨今の口腔崩壊の現状を鑑み、大田区の子どもたちの歯科診療について伺いました。「おおた子どもの生活応援プラン」にお示しの”区のめざす姿”に、『子どもたちの将来が その生まれ育った環境によって左右されることのないよう、地域力を活かし 必要な環境整備と教育の機会均衡を図り、子どもたちが自分の可能性を信じて 未来を切り拓く力を身につけることをめざします。』とあります。

 大田区の子どもたちの健やかな成長と、誰もが等しく教育を受けることのできる環境を作るために、各部局が積極的に連携をし事業の進捗に努めていただくよう要望し質問を終わらせていただきます。

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