廃プラスチック処理/リサイクルや新素材の研究急げ
世界中の海から深刻なプラスチック汚染の報告が相次いでいる。近年はアマゾン川でも汚染が確認されるなど、被害は拡大する一方だ。世界を挙げた対策が急務である。
有害な廃棄物の輸出入を規制する「バーゼル条約」の締約国会議で、リサイクルに向かないプラスチックごみ(廃プラ)を規制対象に加える改正案が、5月中旬に採択された。日本とノルウェーが共同提案したもので、初の国際的な法規制となる。2021年に発効する見込みだ。
これにより、廃プラを輸出する場合、輸入国の同意に加え、日本と同等以上の処理性能を備えた施設が必要となるため、日本からの廃プラ輸出は事実上、不可能になる。
廃プラの問題は、6月に大阪で開催される20カ国・地域(G20)首脳会合でも議題となる予定だけに、今回の合意は対策強化に向けた国際的な機運の醸成につながろう。条約の見直しを提案した日本にとって、対策をリードする責任は重い。
ただ、対策は容易でない。
国内では年間約900万トンの廃プラが発生し、リサイクル名目で年100万トン以上を海外に輸出している。既に17年末、中国が環境保護を理由に廃プラの輸入を原則禁止した影響を受け、対応に苦しむ地域が出始めている。
このままでは滞留量が増え、不法投棄などの恐れも出てくる。処理体制の構築を急がねばならない。
まずは、リサイクル設備の整備である。環境省は今年度予算で廃プラの破砕や洗浄、原料化といった高度なリサイクルを行う処理業者に施設整備の補助金を設けた。政府は活用を促し、整備促進へ支援策を追加すべきだ。
繰り返し使える素材や、植物由来成分が多くを占めるバイオプラスチックの開発も重要だ。どこまで低コスト化できるかが課題だが、産業界の取り組み強化は欠かせない。
この問題の根本的な解決には、プラスチック使用量の削減が避けて通れない。近年、レジ袋有料化やストロー廃止といった取り組みが注目されているが、十分でないことは明らかだ。プラ製品の使用を抑えるための新たな対策と、消費者の意識改革が求められている。 2019年05月30日 公明新聞2面転載