食べてほしい プライドフィッシュ
消費者の「魚離れ」を背景に漁業の長期的な衰退傾向が続いている。こうした中、全国漁業協同組合連合会(JF全漁連)は、「プライドフィッシュプロジェクト」を展開。地元漁師が自信を持って勧める魚を「プライドフィッシュ」と名付けて全国にPRする事業だ。
『地元漁師オススメの魚』
『アクセス月2万件 24県域70種類を登録』
水産物の消費量は、核家族化や食生活の変化などに伴い減少している。農林水産省の食料需給表によると、消費量は2001年をピークに約3割も減った。鮮魚小売店も約30年間で約3万7300店舗、減少した。魚のおいしさや調理法などを消費者に伝える機会がめっきり減っている。
水産物消費嗜好動向調査(一般社団法人大日本水産会)によると、魚料理について、消費者の多くが「健康に良い」「もっと食べるようにしたい」と思う一方で、「おいしい」とイメージする人は比較的少ない。魚料理が敬遠される要因の一つになっている。
JF全漁連は、「『魚を食べたいという思い』と実際に『消費する行為』との間にギャップがある」(JF全漁連水産物消費拡大対策部・三浦秀樹部長)と分析し、「プライドフィッシュプロジェクト」を今年1月からスタートさせた。
このプロジェクトでは、JFグループ内の40県域の漁連・漁協が選定した各地の魚を推薦してもらう。それをJF全漁連が「プライドフィッシュ」として、特設HP(http://www.pride-fish.jp/)やイベントなどでPRしている。
「プライドフィッシュ」は、四季ごとに1種類ずつ登録できる。選定基準は、(1)本当においしい漁師自慢の魚であること(2)地元で水揚げされたものであること(3)旬を明確にした魚であること(4)各会員が独自に設けている基準(サイズ、水揚げ海域など)をクリアしている魚であること――。12月時点で、24県域70種類が登録されている。
HPでは、実際に「プライドフィッシュ」を買えたり、食べられる飲食店など150店舗以上を紹介しているほか、「プライドフィッシュ」を取り入れた“漁師めし”や、地元でよく食べられるメニューなど、約120種類(12月時点)も掲載。「HPへのアクセス数は毎月2万件を超え、予想以上」(三浦部長)だという。
さらに、プロジェクトで企画した「プライドフィッシュ」のイベントも好評だ。旬の「プライドフィッシュ」を使った料理などを提供する「Fish―1グランプリ2014in築地市場まつり」を今年11月に開催。10万人以上が来場した。
◇
「プライドフィッシュ」をPRすることで、地元の水産物を消費者に紹介する機会を増やしている例もある。
道の駅「ちくら・潮風王国」(千葉・南房総市)内にある鮮魚店。1〜3月の観光シーズンになると、首都圏近郊から1日4000人〜5000人の観光客が訪れる。房総半島の豊かな海で育った新鮮な魚介類と一緒に、千葉県の「プライドフィッシュ」に登録されている伊勢エビが、威勢のいい声で販売されている。
千葉県は、全国トップクラスの水揚げ量を誇る伊勢エビの産地。暗赤色の殻を持ち、黒潮に鍛えられて引き締まったプリプリとした身が特徴だ。
「『千葉のプライドフィッシュは伊勢エビなんですか』『家庭で食べる時はどんな調理法がいいのか』と聞かれることが増えた」(東安房漁業協同組合・鈴木康雄営業係長)。「プライドフィッシュ」を機に水産物への関心が着実に高まっている。
『“消費までつながる情報”を提供/長屋信博JF全漁連代表理事専務』
一番の課題は、水産物の消費量が減少していることです。「比較的余裕のある休日はおいしい魚料理を食べたい」と、多くの人が思っているのではないでしょうか。
魚の食べ方や調理法などを消費者に直接伝えていた魚屋さんが年々減少しています。「プライドフィッシュプロジェクト」では、魚の魅力とともに「どこでおいしい魚を買えるのか」「どこで食べられるのか」という、“消費までつながる情報”を提供しています。
同プロジェクトを通して、もう一度、魚の本当のおいしさを知ってもらい、実際に食べて感動してもらいたい。漁師や魚屋さんが自信を持って勧める旬の魚、自慢できるプライドフィッシュを、イベントなどを通して今後も発信していきます。2014年12月26日公明新聞掲載