特定秘密保護法案Q&A
国の安全と、国民の生命・身体・財産を守るために必要な情報だけを特定秘密として指定し、それを政府内で管理・保護、活用するための特定秘密保護法案についてQ&Aで紹介する。
法案別表で特定秘密となる事項
Q.なぜ、特定秘密保護法をつくる必要があるのか?
国と国民の安全確保のため
A.日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しており、大量破壊兵器や国際テロ活動に適切に対処するためには、安全保障に関する重要な情報を入手し、その漏えいを防止し、国民の安全や国益を守ることは喫緊の課題です。
アルジェリアでは邦人が犠牲となりましたが、二度とあのような悲劇を起こしてはなりません。
現在、「国家公務員法」や「自衛隊法」「MDA秘密保護法」にも秘密を漏えいした公務員等を処罰する規定はありますが、量刑が軽すぎたり、情報の対象が限定されており、わが国の安全保障に関する重要な情報の漏えいを防ぐ法整備は万全とは言えません。
兵器の性能や外交の暗号等が漏えいし、インターネット上に流れでもしたら取り返しのつかない事態になります。また、情報管理が万全でなければ外国は重要な情報をわが国と共有しようとはしません。特定秘密を守るための法整備は、もはや国際標準となっているからです。
成立を急いでいるとの批判がありますが、「急いでいる」との批判は当たりません。衆院特委では日本版NSC設置法案の倍に当たる45時間以上の審議を行い、2回の参考人質疑、地方公聴会を開催し、「日本維新の会」や「みんなの党」とも丁寧な修正協議を行いました。
Q.どのような情報が特定秘密として指定されるのか?
防衛、外交など4分野に限定
A.原発事故の情報や放射能汚染情報(SPEEDI)が秘匿されるといった誤解がありますが、安倍首相は特定秘密には当たらないと明確に答弁しています。
特定秘密に指定されるのは、安全保障に関する情報のうち、(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動(スパイ)防止(4)テロ防止―の4分野に限定されています。上記の四つの分野の中で特定秘密にできる事項が限定列挙されており、国家公務員法が禁じる情報漏えいの範囲よりもはるかに狭い範囲となります。
Q.国民の「知る権利」は本当に守られるか?
取材活動は処罰の対象外
A.報道機関が公務員から特定秘密を聞き出すと処罰される。そうなると国民の知る権利が侵害されるのでは、との声があります。そこで、公明党の主張で当初の政府案にはなかった国民の「知る権利」「報道の自由」を条文に明記させました。さらに報道機関の取材行為は「法令違反」や取材対象者の人格をじゅうりんするような「著しく不当な方法」に当たらない限り「正当業務行為」として処罰の対象とはならない旨も条文化しました。
加えて、修正協議の中で、特定秘密を「取得」する行為は、外国の利益を図るなどの目的(スパイ等の目的)がなければ処罰されないように修正し、通常の取材活動は処罰の対象とならないことが、一層、明確になりました。
一般の国民については、何が特定秘密であるかを知らず、また、スパイ等の目的を持つこともないので、知ろうとした情報が偶然、特定秘密に該当するものであったとしても処罰されることはありません。通常の生活を送っている国民が処罰されるようなことはあり得ません。
Q.現在も42万件の秘密があるそうだが、内訳は?特定秘密の範囲が際限なく広がらないか?
行政は勝手に指定できない
A.現在、特別管理秘密として指定されている約42万件のうち、約9割が情報収集衛星から撮影した写真であり、次に多いのが外交・防衛等で用いられる暗号です。
特定秘密を行政機関の長が勝手に指定することはできません。
公明党の主張で、行政機関の長は、有識者会議の意見を聴いて首相が決定した統一基準に則り特定秘密を指定することにしました。
修正協議においては、「別表」の中にあった「その他の重要な情報」という文言は特定秘密の範囲を拡大させる恐れがあるため、これを削除させ、恣意的な指定がなされないようにしました。
行政機関の長が実際に統一基準に従って指定・解除を行っているかを首相が確認し、改善の指示を出せるようにもしました。これにより、事前・事後のチェックを通じ、特定秘密の範囲が広がらないようにしました。
さらに法案の附則には、独立した第三者機関を設置し、運用状況をチェックすることも検討することが明記されました。
Q 特定秘密の指定期間の上限は原則30年から60年に後退したのか?
原則30年公開。60年は例外措置
A 後退していません。
当初の政府案では、通じて30年を超えて指定の有効期間を延長する場合に内閣の承認が必要となっていましたが、これに対しては、内閣の承認さえあれば特定秘密に指定された全ての情報が半永久的に秘密にできてしまうとの批判がありました。
修正協議の結果、まず、指定の有効期間は原則として30年を超えることができないことを明確にしました。さらに、通じて30年を超えて有効期間を延長することのできる情報についても、通じて60年を超えて延長することができないこととしました。
秘密指定解除の例外7事項ただし、特定秘密の中には、暗号や人的情報源に関する情報など、どうしても秘密にし続けないといけないものがあります。そこで、通じて60年を超えて指定の有効期間を延長することができる事項を限定しました。
さらに、衆議院での公明党の質問に対して、通じて30年を超えて有効期間を延長することのできる情報は、この限定された事項だけであるとの安倍首相の答弁がありました。指定の有効期間に明確な上限を設定したことにより、恣意的な延長はできないことになりました。
なお、米国では、秘密の有効期間は原則25年以下であり、人的情報源などの情報に限って50年または75年となります。
また、英国では、秘密情報は原則20年で開示され、例外的に、公安関係などの情報については100年、国家安全保障に関する情報については個別に定める期間となっています。つまり、日本の有効期間の上限は国際的にも決して長くはありません。
Q 秘密保護よりむしろ情報公開を進めるべきではないか?
保存期間後は公文書館で公開
A 国家や国民の安全を保障するために公開になじまない情報はあります。しかし、秘密指定の必要がなくなった情報を速やかに公開することは国民主権の観点から当然です。
現在、行政機関において保存期間(原則30年以内)が満了した歴史的公文書などは、公文書管理法に基づき国立公文書館等に移管されることになっています。しかし、防衛秘密については独自に廃棄などがなされているため、特定秘密も同様に取り扱われるのではとの懸念がありました。
修正協議の結果、公明党の主張により、30年を超えて指定の有効期間を延長することについて内閣の承認が得られなかった文書は全て国立公文書館等に移管すると明記しました。また、衆議院での公明党の質問に対して、安倍首相は、30年を超えて指定の有効期間が延長された文書について、行政機関の長が自ら解除する場合にも全て国立公文書館に移管されるよう、運用基準に明記することを約束しました。これらにより、行政機関が都合の悪い情報を恣意的に廃棄できないようになりました。
秘密が闇から闇に葬られることがあってはなりません。
情報公開の充実・拡大は公明党の基本政策です。
Q 第三者機関はできるのか?どんな機能を持つのか?
独立の立場で政府をチェック
A 修正協議の結果、特定秘密の指定及びその解除に関する基準等が、真に安全保障に資するものであるかを独立した公正な立場において検証・監察する新たな機関の設置を含め、特定秘密の指定等の適正を確保するために必要な方策について検討することが附則に明記されました。
法案成立後、内閣官房に準備室が設置され、統一基準の原案作成などの法案の施行準備とともに、検討が始められます。
そして、その検討に当たっては、有識者の意見を聴くとともに、諸外国の制度、特に、米国の省庁間上訴委員会や情報保全監督局が参考とされることになります。
さらに、修正協議の結果、国会が国権の最高機関として行政の活動をコントロールする観点から、特定秘密を取り扱う行政機関の在り方や特定秘密の運用の状況などについて審議・監視する委員会、その他の組織を国会に置くことなどについて、早急に検討を加え、法案の施行までに結論を得ることとしています。
Q 戦前の治安維持法のように国民の自由が侵されないか?
思想・信条の自由は憲法で保障
A そのようなことはあり得ません。
戦前の治安維持法は、当時の国家体制に批判的な思想・信条に基づいた運動を処罰することを目的とした法律でした(1945年廃止)。特定秘密保護法案は、公務員などによる国家の安全保障上必要な情報の漏えいを防止し、国家の安全保障、国民生活の安全の確保に資することを目的とするもので、全く異なります。
日本国憲法は思想・信条の自由を基本的人権として掲げており、侵してはならない国民の権利であると明確に規定しています。
公明新聞:2013年11月29日、30日付掲載