去る、3月9日の午前に開かれた愛知県議会本会議議案質問において、愛知県社会福祉協議会が行ってきた総合支援資金の貸し渋りに対し、質疑が行われました。
公明党の犬飼明佳県議(名古屋市中川区選出)が、私あてにご相談があった名古屋市西区の事例を基に質問を行ってくれました。
愛知県からは「福祉的な配慮に大きく欠ける」、「県としては大変遺憾」との答弁があり、あわせて救済措置が示されました。
以下は、当日、交わされた質疑の内容を独自に書き起こしたものです。
≪実際の質疑の映像はコチラ≫
~(以下、書き起こし)~
「生活福祉資金貸付制度」は、低所得者や高齢者、障害者の生活を経済的に支える制度として、市区町村社会福祉協議会(以下、市区町村社協)が貸付申請に係る受付業務を担当し、県社会福祉協議会(以下、県社協)が審査・交付業務を行っています。
同制度では生活が困窮している方に対し、生活費や一時的な資金の貸付けを行う「総合支援資金」が設けられており、この資金を利用する方には、生活困窮者自立支援制度の支援も併せて行い、生活の立て直しを包括的にサポートすることとなっています。
厚生労働省は、昨年3月から、特例措置として、新型コロナウイルス感染症の影響により、休業や失業等、減収した世帯にも対象を拡大しました。総合支援資金は月額20万円を3ヶ月間貸し付け。申請期間は、当初9月までであったが、延長し12月までとなり、さらに延長し、現在は3月末までとなっています。対象も拡大し期間も延長され、再貸付を受けることで、長引くコロナ禍において、生活を守る手段として活用され、本県でも156億円を越える貸付実績となっています。
昨年8月5日付の朝日新聞には、全国的にも「かつてない規模で申し込みが殺到」とあり、「背景には、貸し付け条件の大幅な緩和がある。必要な書類も簡素化し、減収や失業の証明書類がなくても本人の申立書に基づいて審査する。」とありました。
しかし、一方で同記事には、「審査の地域差もある。同資金では上限額を貸す県が多いが、愛知県と新潟県は1件あたりの貸付額が全国平均を10万円近く下回る。」と報じられていました。
改めて特例措置が開始された昨年3月25日から12月末までの都道府県別の1件当たりの平均額を調べてみると、愛知県は398,115円で45位。1位の兵庫県560,339円に対し7割程度であり、全国平均495,259円との差は報道の通り97,144円でした。同じ国の制度でありながら、なぜこんなにも差があるのでしょうか。 都道府県別 総合支援金1件あたりの平均貸付額(愛知県地域福祉課提供)
1月に入り、私のもとに、区社協へ総合支援資金を申し込みされた方の相談がありました。2回目の緊急事態宣言が発令される厳しい経済状況下にあって、生活がままならない中で、区社協のヒリアリングを受けた上で、月額20万円を申請した。しかし、10万円に減額されたとのことでした。地域福祉課を通じ、県社協に確認をすると、「区社協からの申請額通りの決定である」と返答がありました。そして、区社協の名前の意見書なるものを見せられ、そこに「本人の希望で20万円で申請するが、10万円で十分と考える」とコメントされていました。このことを区社協に確認すると、実は、県社協から、20万円を貸し付けることに対し、本当に返還できるのかと何度も何度もしつこく確認され、このままでは、審査が通らないと判断し、減額の意見書を付けざるを得なかったとのことでした。
厚労省の問答集では、「償還の可能性を重く求めることは、必要な貸付を阻害してしまいます」とあり、さらに、「貸付額について、合理的な理由なく、相談者の希望額より低い額とすることは避ける必要がある。」と指摘されています。また、そもそも国の様式では、意見書なるものの添付は求められていないはずです。独自に作った書類を使い、全く真逆の対応をしているではないですか。
他の事案も調べてみると、こうした県社協から強く減額を働きかけられ、また市区町村社協が忖度せざるを得なかったケースがいくつか確認されました。中には、県社協から、「貸し付けたお金が生きているうちに返せるのか、相談者へ聞け。」と言われた市社協職員もいました。相手は高齢者です。当然、誰が考えても、藁をもつかむ思いで来ている相談者にそんな言い方できるわけありません。これも市社協の判断で減額せざるを得なかったとのことです。県社協では、こうしたことも含め、「減額していない。市区町村社協からの申請額通りに決定している」と説明を繰り返してきたのですか。実態は、圧力をかけ、減額させていたのだと、私は思います。
社協では、貸付以外にも県民の福祉を支える事業を担っていただいております。長引くコロナ禍において、県社協、市区町村社協の職員の皆さんが多くの県民に寄り添っていいただいている。その尊い日々の業務に心から感謝申し上げます。
しかしながら、この貸付事業に関係する一部の職員の勝手な対応は、県民の皆様からの信頼を失墜させる裏切り行為であると断じざるを得ません。
県として、今回の件について、徹底的に調査を行い、早急に是正してください。本来、借りることができるお金を借りられなかった、窓口で厳しい言葉を浴びせられた等、コロナ禍で苦境に陥っている人達を、県がしっかり中に入って、救済措置を講じていただくよう、お願いします。
そこで伺います。
まず、県は、県社会福祉協議会が実施している総合支援資金特例貸付事業の執行について、どう把握し、県としてどう考えているのか。
また、申請却下や減額された方々に対する救済措置について、県社協において、どのような対応がとられるのか、お尋ねします。
さらに、 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける以前から「審査のハードルが高く、総合支援金を借りることができない」との相談を受けたことがあります。コロナ特例措置以前の実績を見てみると、2019年の貸付件数はゼロ。ゼロでした。429件の相談があったにも関わらず、誰にも貸付をしなかったということです。2015年から2019年の5年間を見ても、相談件数は、3,808件。そのうち申請件数は17件。そして貸付件数は13件しかありませんでした。相談しても申請にすら至らない。これが、過去5年間の実績です。
貸付事業に対し、困窮する相談者およびその窓口となる市区町村社協に全く寄り添ってこなかった県社協の持つそもそもの体質が、このコロナ禍の重大局面において露呈したのではないか。今回の件を機に、県社協の貸付業務の取り組みに対する抜本的な見直しをしていただきたい。真に県民に寄り添った体制を構築していく必要があります。
そこで伺います。
総合支援資金を含む、生活福祉資金貸付制度について、透明性の高い信頼される制度となるよう、今後、県として、どのように取り組んでいくのか。お尋ねします。
< 福祉局長の答弁 >
まず、総合支援資金の特例貸付事業の執行についての把握状況と県の考えについてお答えします。
生活福祉資金貸付事業は、国の制度であり、県は国から交付される貸付金の原資を県社会福祉協議会、以下「県社協」と言いますが、県社協に補助し、県社協が事業の実施主体として貸付を行ってまいりました。こうした中、昨年3月からは、新型コロナウイルス感染症の影響により収入が減少したり失業した世帯も、特例措置としてこの貸付制度の対象に加えられ、これまで多くの方に活用いただいているところであります。
そうした中、昨年9月に県社協の貸付審査が厳しく、希望額どおり借りることができないとの情報提供がありましたので、県が事業の実施状況を調べましたところ、県社協は、世帯の収支状況等を細かく確認し、貸付額を必要最小限に減額しているケースや、住宅ローンなどの債務がある場合には、貸付金の償還が見込めないとして、申請を却下したケースもあるなど、大変厳しい運用をしていることがわかりました。
こうした県社協の運用は、新型コロナウィルス感染症の影響を受け、収入の減少等により、生活費用が必要な方に対して、必要な額を貸し付けるといった、特例貸付に係る国の通知に反するものであり、福祉的な配慮に大きく欠けるものであると言わざるを得ず、県は、県社協に対して、速やかに運用を見直すよう指導いたしました。
具体的には、申請者の負担を軽減するため、貸付申請書を国が示していた簡素な標準様式に変更し、世帯の収支状況等を記載する県社協独自の貸付申請書は使用しないこと。また、コロナ禍で収入が減少した方々への特例措置であることを踏まえ、本人の借入希望額を尊重した貸付決定を行うことなど、申請者に寄り添った対応に改めるよう指導いたしました。その結果、県社協は9月に、これまでの運用を見直し、その内容について市区町村の社協へ文書で通知するとともに、県社協から、県にも見直した旨の報告がありました。
ところが、その後も県社協の担当者は、この方針に反し、独自に作成したヒアリングシートの活用を市区町村社協に求め、収支状況を聞き出すなどにより、必要最少額の申請を強要したり、議員御指摘のとおり、市区町村社協に減額が適当である旨の意見書を提出するよう圧力をかけていたことや、依然として償還能力を厳格に捉え申請を却下していたことが本年1月に、議員から頂いた情報に基づき、県にて調査を行った結果、判明いたしました。
コロナ禍の中、生活が苦しい方々を支援すべき県社協において、特例貸付の趣旨を踏まえて、9月に決定した方針どおりに制度が運用されてこなかったことは、県としては大変遺憾であります。
今回、このようなことが起きた原因につきましては、担当職員の資質の問題だけではなく、県社協内部の管理監督体制の不備や、市区町村社協との連携不足にあったと考えておりまして、こうした問題点の改善と、再発防止に向けて、県としましても、県社協とともにしっかり検討してまいります。
次に、県社協が実施する救済措置についてお答えします。
まず、過去に減額・却下を行った申請者に対しましては、追加貸付の受付を開始する旨、3月1日に県社協のホームページで案内をするとともに、近日中に、早急に県社協が対象者約3,300人に対して直接、通知を行うこととしております。そして、追加貸付を希望される方に対しては、却下された額や減額された額を、できるだけ速やかに貸し付けることとしております。
また、市区町村社協の窓口の相談において、債務の返済能力などを問われ、申請を断念した方々もおられることから、幅広く救済を図るため、3月1日に県社協のホームページで申請の受付開始を案内するとともに、 市区町村社協からも、該当すると思われる方々に申請を呼び掛けていただけるよう、同日開催した市町村社協事務局長会議と文書をもって、県社協が依頼をしたところであります。
なお、こうした救済措置は、特例措置が開始された昨年3月25日まで遡り、追加貸付の要件を満たす全ての方々を対象としております。
最後に、今後の取組についてお答えします。
今回の事案で明らかになった課題は、県社協の担当職員の資質はもとより、組織内部の管理監督体制や市区町村社協との連携が不十分であったことと考えており、こうした課題の解決に向けて、業務実施体制のあり方を含め、十分な改善策がとられる必要があると考えております。
また、透明性の高い信頼される制度の運用に向けまして、コロナ終息後を見据え、過去の運用状況を再点検し、貸付マニュアルの見直しや、貸付基準の明確化を図るなどの取組を進めることが必要と考えております。
県としましては、県社協が、貸付制度の運営の透明性を確保し、本県の地域福祉を推進する要の機関として、その役割を果たせるよう、しっかり指導してまいります。
< 要 望 >
局長から「問題点の改善と再発防止に向け、県社協と共にしっかり検討していく」との答弁をいただきました。県として、しっかり中に入っていいただけるということですので、要望させていただきます。
県社協が減額もしくは不承認で把握している件数は、3,300件とのことですが、それ以外にも、市区町村社協窓口で、相談者が断念せざるを得なかったケースがあります。この件数は、相談者ご本と市区町村社協しかわかりません。
窓口で、ひどい言われ方をされたまま、泣き寝入りのようなことになっていてはいけません。対象となる方へしっかり届くように、幅広く救済措置を周知してください。
そのうえで、周知および窓口の対応、申請手続き等は、市区町村社協に担っていただく必要があります。しかし、今回の件も各市区町村社協によって温度差があるように感じます。長年のやり方が、県社協からの通知と事務長会議ですぐ変わるようにも思えません。
従って、県福祉局の職員が県社協の職員と一緒に、市区町村社協を全部まわって頂き、この救済措置について、丁寧に説明をして頂くことを要望します。くれぐれも、追加貸付の相談に行かれた方が、再び雑に対応されることが絶対にないように、お願いし、終わります。(了)