宮城県いじめ防止条例 骨子案を全会一致で決定
6月18日から宮城県議会6月定例会がスタートしました(7月4日まで)。18日は、本会議に先立ち、私が副委員長を務める「いじめ・不登校等調査特別委員会」(吉川寛康委員長)が開かれ、(仮称)宮城県いじめ防止等に関する条例の骨子案を全会一致で決定しました。
骨子案は、いじめによる痛ましい事件の再発を防ぐために、いじめ問題の専門家や被害者家族、市町村教育委員会、PTA、教職員組合など多くの関係者からの意見を聞きながら、真摯な委員間討議を重ねてまとめたものです。
特別委員会の開催は、今年に入ってから13回を数え、時には紛糾し激論となる場面も何度かありましたが、委員長はじめ各委員が合意をめざして努力した結果、最終的には全会派一致のもと骨子案がまとまりました。
骨子案の基本理念では、「いかなる理由があってもいじめは許されるものではない」とうたい、“いじめは、いじめる側が悪いのであって被害者には非はない”という考え方を明確にしました。その共通認識のもとで、「県民一丸となって、いじめを生まない環境づくりに取り組まなければならない」と、学校関係者だけでなく、社会全体で、この問題に取り組むことの重要性を示しました。この基本理念にのっとり、県や県教育委員会、学校、教職員、保護者の責務だけでなく、いじめ防止対策推進法には規定のない県民や事業者等の役割も定めています。
このように、骨子案では、いじめの「未然防止」へ強いメッセージを発する一方で、いじめの早期発見や重大化を防ぐ方策にも力点を置いています。
これまで全国各地で相次いだ自死などの重大事案では、教員がいじめの相談を受けても、「これくらいはいじめではない」と軽視したり、多忙を理由に放置したり、あるいは情報を共有しなかったりして、組織的な対応が取られなかった結果、事態が深刻化したケースが多く見られました。
そこで骨子案では、「学校及び教職員は、児童生徒がいじめを受けていると思われる時は、児童生徒の気持ちに沿いながら他の業務に優先して組織として迅速に対応する」などと、教員による「抱え込み」を防ぎ、組織対応の徹底を求める規定を盛り込みました。
また、県教育委員会や県立学校に関わる基本的施策としては、教職員のいじめ対応力の向上のための研修の実施や、子どもが相談しやすい環境の整備、学校と福祉機関や警察との連携強化、SNSによるいじめの防止への取り組みなど、すでに取り組んでいる対策も含めて、いじめの未然防止や早期発見、適切な初動対応などに必要な施策を網羅しました。
さらに、重大事態が発生した場合の対処として、学校や第三者委員会による速やかな調査の実施はもちろん、被害者側への適時・適切な情報提供や、社会に対する正確な情報発信など、これまでの重大事態の教訓を踏まえた規定を盛り込んでいます。
ただ、県条例のため、基本的には県立学校を対象にした条例となり、市町村立学校への影響は限定的です。なぜなら、地方自治法や地方教育行政に関する法律に基づき、県は市町村の判断を過度に制約できないこととなっているためです。
現在、仙台市が独自のいじめ防止条例を策定していると伺っていますが、今後、他の市町村でも県条例を参酌した条例制定や基本方針の改定を期待したいと思います。
県条例の骨子案は、今後、県議会ホームページで公表し、6月29日から7月20日まで県民の皆様のご意見を募ることにしています。