2013.8.21(水)

社会保障制度改革国民会議報告書~確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋~☝を通読終了。

「21世紀日本モデル」である「全世代型社会保障」への提言。ようやく1回、目を通したばかりですが、真摯に将来を見据えた提言であるとは思いました。

子育て、医療・介護、年金の社会保障4分野について、状況を分析し、本質と命題を明らかにし、課題解決のための方途を示しています。例えば、年金分野の改革/世代間の連帯に向けて/世代間の公平論に関して では、次の論及があります。

個人が納付した、あるいはこれから納付することとなる保険料累計額の現在価値と、受け取った、あるいはこれから受け取ることとなる年金給付累計額の現在価値を比較して、世代によってこの関係が異なることをもって、世代間の不公平を指摘されることがしばしばある。

しかしながら、いわゆる中立命題の本質である私的な扶養と公的な扶養の代替を考えれば、年金制度の中だけで自分が払った保険料と自分が受け取る年金給付を比較する計算は、本来の意味での世代間の公平を表すものではない。仮に、公的年金が存在しなければ、その分同様に私的な扶養負担が増えることとなるだけであり、私的扶養の代替という年金制度が持つ本来機能を踏まえた議論が必要である。

残念ながら、世間に広まっている情報だけではなく、公的に行われている年金制度の説明や年金教育の現場においてさえも、給付と負担の倍率のみに着目して、これが何倍だから払い損だとか、払った以上にもらえるとか、私的な扶養と公的な扶養の代替性や生涯を通じた保障の価値という年金制度の本質を考慮しない情報引用が散見され、世代間の連帯の構築の妨げとなっている。年金教育、年金相談、広報などの取組については、より注意深く、かつ、強力に進めるべきである。

つまり、年金制度の是非は、例えば、子が親の面倒を看るときに、

①年金制度に頼らずに、100%私費で看る のか
 (例えば、兄弟で協力して毎月10万円仕送りするとか) 

②保険(=支え合いの仕組み)である年金を活用しつつ、看る のか

の選択。

子がすべて私費で看るとなると、

子どもがいない場合⇒自己完結です。どこまでも、自分で自分の面倒を看る。

一人っ子の場合⇒一人の子が両親の面倒を看る。

何があるのか分からないのが人生ですから、支え手が倒れるリスクなども考えると、やっぱり年金保険制度は要る、と私は思います。

そして、私費で看ようと、公費で看ようと、減少する支え手にとって負担は徐々に大きくなるが、それは年金制度の是非を判断する基準にならない。

以下、報告書の要旨。公明新聞を参照しました。

【国民へのメッセージ】

長寿社会を実現したのは、社会保障制度の充実のおかげでもあったことを忘れてはならない。この素晴らしい社会保障制度を必ず将来世代に伝えていかなければならない。

社会保障制度の持続可能性を高め、その機能を発揮するためには、社会保険料と並ぶ主要な財源として消費税収を確保し、改革を行う必要がある。

【総論】

社会保障費は経済成長を上回って継続的に増大しており、国民の負担増大は不可避。

「21世紀日本モデル」の社会保障は、高齢者世代を給付対象とする社会保障から、切れ目なく全世代を対象とする社会保障への転換をめざすべきだ。

【少子化対策】

▽妊娠期から子育てを総合的に支援する拠点の設置・活用を検討。

▽育児休業期間中の経済支援強化を検討。

【医療・介護】

▽医療は「病院完結型」から「地域完結型」に移行。

▽病床機能報告制度を早期導入し、都道府県は地域医療ビジョンを2018年度を待たず速やかに策定。

▽国民健康保険は、財政間題の解決を前提に次期医療計画策定前に保険者を市町村から都道府県に移行。

▽被用者保険の後期高齢者支援金の算定で総報酬割を15年度から全面導入し、浮いた公費は国保の赤字構造解決に活用。

▽国民健康保険料の賦課限度額を引き上げる一方、低所得者の保険料軽減措置を拡充。

▽被用者保険の標準報酬月額の上限引き上げを検討。

▽後期高齢者医療制度は現行制度を基本に必要な改善を実施。

▽紹介状のない患者の大病院受診に定額自己負担を求める仕組みを検討。

▽70~74歳の医療費窓口負担は、新たに70歳になった高齢者から本則の2割負担を早期導入。

▽高額療養費は能力に応じた負担となるよう所得区分を細分化。

▽介護保険の高所得者の利用者負担引き上げ。

▽低所得者の介護保険料軽減措置を拡充。

▽地域包括ケアシステムの整備を推進。

▽介護予防給付は保険適用から外し、市町村の地域包括推進事業(仮称) に段階的に移行。

【年金】

▽改革は2段階とし、所得比例年金といった将来の制度体系は引き続き議論。

▽デフレ状況下でのマクロ経済スライド発動を検討。

▽被用者保険の適用を拡大。

▽支給開始年齢引き上げの是非は中長期的な課題とし、検討作業は早期開始が必要。

▽年金課税強化など高所得者の年金給付を見直し。

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