2012.3.17(土) ②

やわらかなひかり展 3/16~3/20 ギャラリーキャメルKにて開催中。

昨日.閉店直前に駆け付けて、あっという間に1時間半が経ってしまいました(>_<)
主催者の上田勇一さんとゲストの宮﨑和香さんとの弾む会話。この続きはまた今度(^^)

Y.以前アトリエ(仕事場、工房)に伺いましたが、上田さんがやっているシルバー・ポイントとはどのようなものでしょうか?

上田.実は金属は線が引けます。シルバー・ポイントは銀筆の古典絵画技法。鉛筆が誕生する以前、筆記には銀を用いていました。鉛筆の芯が銀と考えてもらったらいいです。

Y.ここの白地に細ーい銀線がありますね。

上田.白地は板へ地塗りを施す。線を重ねるほど銀になる。銀は酸化するとセピアに輝きますが、その変化もシルバーポイントの特徴です。

Y.工業科を出て、絵描きになったんですよね。

上田.実は、進学するためには製図の技能で採用してもらうしかありませんでした。だから、毎日毎日線を引いて、徹底的に製図の技術を高めました。鍛錬の中で、絵の師匠との出会いがあったのです。これまで製図で磨いてきた技術が活きてきたのです。

何かひとつ秀でたものを持つことはとても大事だと思います。自分には絵がある、技術がある。だから相手が誰でも臆せずに対することができます。

Y.それは美術に限らず、言えることですよね。

上田.そう思います。何を仕事にしていても、会社員でも、そういう意識で取り組んでいることが大事かと思います。

作家が認められる過程は、最初は「無視」。少し力を示し始めると、足を引っ張られる。非難・中傷。そこを突き抜け、力をつけ、いい作品を残すと、誰もが認めざるを得なくなる。承認される。

Y.そこまで行くのは大変ですね。認められれば経済的にも余裕が生まれる。これは、世間一般に言えることですが、経済的にも一番厳しい、助けがほしい“駆け出し”の時に、世間は一番厳しい(笑)

上田.一番大事で、一番難しいのは、一時の気分や感情に左右されず、継続すること。10年も継続すれば、確かなものが残るはず。ピカソの生涯の制作数は10万点。寝て食べて以外の時間は、ずっと描くことに没頭していたのではないでしょうか。

先日もお話ししましたが、日本では芸術家や関係者のステータス(立場)が低い。「絵を描いてる」なんて言うと、「何やってんだ??」と見られる。とても、やりにくい。それでも、芽が出て認められれば幸運。その点、フランスには芸術家を育む文化・環境があります。芸術家に投資する文化、例えば、芸術家の卵に住居を確保する仕組みもあります。

Y.それは、作り手にはやりやすいですね。

上田.それと、作家を育てるには作品を買うこと。買って、家に置いて、作品に親しみ、楽しむ。そういう文化的センスを持っている人が日本にはまだまだ少ないのではないかと思います。

Y.小学校以来の旧友が“アーツ・アドミニストレーション”(芸術運営学、博物館運営学)をやっていて、“自宅にアートを”ということで、ミュージアム・ストア(アートの売店)の展開を主張していました。

上田.“絵そのもの”を見る人が少ない。誰が描いたか、幾らするのか。肩書き、金額で見る。本当はいい作家は沢山います。有名でなくてもいい作品は、買ってほしいですね。

Y.鑑賞する側も未熟ってことですか…。現代の風潮が量の追及にあるのに対して、「芸術は質の追及と美術史家ルネ・ユイグ氏は言っていますね。

上田.この空間アートは、ゲストで造形作家の宮﨑さんに制作してもらいました。

Y.宮﨑さんは、普段は何をされているんですか?

宮﨑.画材商と幼児絵画教室と造形と…教室では「やりたいだけ、存分にやらせる。」無理にはやらせない。描きたいことを描きたいだけ描くようにしています。なかなか学校ではできないことですし。

Y.表現は人間の欲求とも言えますよね。本質への探究。質の追及。宮﨑さんの作品は、売るんですか?

宮﨑.売るなんて、とんでもないです(笑) 私のはパフォーマンス、表現。今回、上田さんが「好きにやってください」って言ってくださり、最高の褒め言葉でした。次はあれやってやろう、これやってやろうって、制作は毎回が楽しみなんです。ただ今回は、あくまで絵画展示のセットなので…

Y.与えられた役割の中で、自由にやったわけですね(笑)

宮﨑.そう、その通りです!(笑)

展示が終わった作品は、家の中に貯まってます!家族が「片付けなさいっ!」って(笑)

上田.いや、お店なんかには置いたらいいと思いますよ。家の趣向にも依るけど、個人で買う人もきっといると思う。

宮﨑.松山では、造形、空間美術はまだまだ少数派ですね。

上田.作品からは、普段は見えない作者の一面が見える。描くことで、描く人の何かを癒すこともできる。今回の絵画展で改めてそれを知りました。

上田氏の展示作品「やわらかなひかり」。繊細にして優雅、そして精巧な背景。作品への圧倒的な手数!! いったい何筆入れたんでしょうか!!? ここにしかない“質”が立ち上がっています。

(プロフィール)

上田勇一

〇ルネサンス期の古典絵画技法、シルバーポイントによる制作活動
〇2002年度日本ファンタジーノベル賞受賞作「世界の果ての庭」の装丁担当
〇美術家の登竜門 第38回昭和会展(2003年)にて優秀賞を受賞
〇最年少で現代日本美術会会員に推挙され審査員となる。
〇作品「ドライフラワー」が愛媛県美術館に収蔵
1974 東京生まれ
1995 高橋勉氏に師事し古典技法を学ぶ
1996 日本工業大学工学部建築学科卒業。98まで同大学同学科研究生

宮﨑和香

1999 嵯峨美術短期大学/美術学科/空間造形コース卒 美術教員免許取得
2000 高校・中学校講師(5年間)
2009 グループ展 牛渕ミュージアム「牛想展」
2010 企画展NPO法人とべTOBE・坪内家「精霊展」で砥部村村長賞受賞 2012同賞受賞
2011 「アトリエ若」開設
2012 2人展 そらともりギャラリー「痕跡展~2人のマクロコスモス」
2012 公募展全国国民文化祭(京都)洋画部門入選
香川県生まれ

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松山市 吉冨健一
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