バックナンバー 2011年 12月 19日

 

金沢21世紀美術館の管理運営について

  2011/12/14

  

視察場所   : 金沢21世紀美術館

参加者     : 千野、加納、大越、甚野、高橋、とも

訪問相手   : 金沢芸術創造財団調査の目的 

調査の目的    : 金沢21世紀美術館の管理運営について 

視察概要   

①21世紀美術館建設に至る経緯

②施設概要・特徴・コンセプト

③建設時のイニシャルコストおよびその後のランニングコスト(財源の内訳を含む)

④事業概要

⑤地域との連携

⑥組織体制

⑦利用者数(来館者数)および友の会会員数の推移

 

 

所感

美術館の成功例として有名な金沢21世紀美術館ですが、周辺には兼六園があり、金沢市の観光の中心スポットとはいえ、県立美術館や金沢ふるさと偉人館、金沢能楽美術館など、多くの公立・民間の文化施設・芸術施設がすでに存在しています。そうした状況で大学移転後の跡地活用とはいえ、あらたに現代美術の拠点をつくることに金沢市民の反対がなかったのか、が今回の視察の最大のポイントでした。

現実にはかなりのハコモノ批判はあったものの、前市長自ら市民の中に入り粘り強く説明し、最後には理解を得られたそうです。

歴史と伝統のある金沢市にとっても積極的に新しいものを取り入れていくことは価値がある、との前市長の信念は、結果として開館後、加賀友禅のウェディングドレスや九谷焼のワイングラスなど伝統工芸に新しい息吹を吹きかけることとなり、産業振興にも結びつくこととなったとのことでした。

また、ずばぬけて来館者数が多いことが成功例として紹介される一番の背景ですが、年間150万人を超える来館者のうち有料の展示会の入場者数は平成22年度で34万人程度ということです(これも美術館としては多いほうですが)。

すなわち、無料で入館できるフリースペースを設けたことが成功の最大の要因であると考えられます。(無料だからといって訪れた方が、ミュージアムショップで買い物をする、また、結果として有料の展示会に入場することがあると思われます)

一般的に美術館・博物館等は料金を払って入館するものですから、このフリーゾーンの存在は大きなポイントになると思われます。

墨田区においては平成27年度の開館を目指し北斎美術館を建設する予定ですが、いまだ反対の声も根強く、着工が近くなればなるほどさらにハコモノ批判は強くなると思われます。

そこで私の見解を今一度述べておきたいと思います。

私は、教育施設や福祉施設は賛成するが、文化芸術施設は反対、といった単純な判断はしません。文化芸術の振興も自治体の重要な役割と考えています。また、教育施設や福祉施設は区民のニーズが高く、計画的に施設整備が求められますが、だからといって、赤字が当たり前だからいくら税金を投入してもかまわないといった論理は成り立ちません。これからの公共施設はその使用目的にかかわらず、建設コストやその後の管理運営費について効率性を高めるとともに、環境に配慮した施設でなければならないと思います。既存施設も修繕が可能であれば長寿命化を図り、新たに建設する場合は最低でも70~80年はもつ建物でなければなりません。そして、時代のニーズに対応し、場合によって、使用目的を大胆に変えることも求められてくるでしょう。そうすることで区民や利用者の理解が得られるものと考えています。

以上のような施設整備に対する基本的な考えに立って、北斎美術館について考えると、課題がいくつか見えてきます。

まず、単純に芸術施設だからという理由で反対はしない、と申し上げましたが、人口25万人を超えたとはいえ規模の小さい墨田区の身の丈に合った施設でなければならないと考えています。つまり、区立の施設ですから本来は利用者の大半は区民であるべきです。しかし、美術館という性格上当然と言えば当然ですが、区民よりは区外からの北斎ファン、 観光客が圧倒的に多いと思われます。

運営上赤字が想定されていますから、毎年区民の税金から補てんされることになります。

したがって①区民以外の方のために区民の税金が投入される

という最大の問題があります。

そして、②現状では、区民以外の方のために多額の税を投入する正当性を説明していない

という課題があります。

さらに③以上2点をふまえると、区民の理解は得られてはいない

と結論付けざるをえません。

あえて区長部局側の立場に立って反論すると、東京スカイツリーⓇとともに墨田区の大きな観光拠点になり、相乗効果もあって観光産業の振興につながる。すなわち、直接的には多額の税金が区外の方へのサービス提供に投入されるが、訪れる方が周辺で買い物や飲食などしていただくことで間接的な経済効果がある。
また、昨年の区長選において北斎美術館が争点になったものの、推進派である現区長が大量の得票差で勝利したので、区民の一定の理解は得られていると理解している。

ま、以上のような説明はこれまで議会においても聞いてきたところですから、これで説明責任を果たしているというということで、今回改訂された基本計画の中で主な重点事業にもなっているのでしょうが、私が区民と接するなかで伺う意見を集約すると、そんな単純ではありません。会派の中でも今の段階で全面的に賛成という議員は決して多くありません。仮に北斎美術館の是非を問う住民投票を今実施したら反対票が多いと思われます。

私自身は区民の方から北斎美術館について否定的なご意見を伺うと、自分の考えをお話しさせていただいています。たいていの方は理解していただいていると考えていますが、その内容は先の3つの課題を解決するものと自分なりに理解しています。

その中身の詳細は述べませんが、金沢市以上に住民の理解を得ることは大変であるという認識を区は持たねばなりません。

なぜならば、加賀100万石の城下町金沢市には藩祖前田利家以降歴代藩主による文化芸術を奨励した歴史と伝統があります。徳川家に対し前田氏の威光勢力を誇示する目的もあったのでしょうが、武家だけでなく町方まで広がった一流の工芸技術も含め江戸期から今に至るまで、そのDNAが脈々と受け継がれています。したがって、前市長の熱意が最終的には文化芸術の振興に理解の深い市民に通じたものと理解しますし、開館8年を経過した今では、金沢市民の多くが地元になくてはならない存在と考えるまでになったものと思います。

残念ながら、今の墨田区にそこまで理解を示す区民がそう沢山いるとは思われません。北斎についても作品はいくつか知っていてもその生涯や人柄について知っている区民がどれだけいるでしょうか。

私には、25年度着工、27年度開館が既定路線のようになっていて、行政側としてはあとは粛々と進めるだけという感じがしてなりません。

後世に禍根を残さないためにも、さまざまな課題を解決する道筋をつけることが優先されるはずです。そのためには来年度が勝負。公の場で自らが納得するまで徹底的に問題提起と課題解決の提案をしていこうと考えています。

 

  

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