視察2日目は山形市です。
調査項目は「山形市総合学習センターの事業内容および管理運営について」
実は会派としてここ数年一貫してすみだ版の「総合教育センター」の開設を提案し、区としても検討しているところです。
単にハコモノを造ればよいということではなく、重要なのはどのような機能をもたせ、どういう事業を行うかということです。
私どもは、相談機能の一元化は当然として、学校教育のシンクタンク機能を持たせることが第一と考えています。
現在でも教育研究所がありますが、学力向上に特化しているきらいがあるので、それに加え、まずは教員の研修の充実に取り組んでもらいたいと考えています。
その後、特別支援に係る独自の研究や、幼少中の連携など独自の調査を行う、あるいは体力向上や食育研究、すみだの歴史・文化を子どもたちに伝える副読本の開発など、教育分野におけるシンクタンクとして十分な役割を果たす施設となることを期待しています。
さらに(これは個人的な考えですが)、すみだの教育史を掘り下げて研究し、貴重なものは保管し、広く区民に知らせるべきものは展示することも検討するべきであると考えています。
一例として紹介すると、現在の本所高校は戦前まで牛島国民学校という、小学校でした。
その牛島学校には明治時代の政治家・榎本武揚が書いた「牛島学校」の扁額があるのです。
その存在をほとんどの区民は知らないですし、逆に知ったら榎本武揚の書であったら見てみたいと思う区民は多いでしょうし、そのことで墨田の生きた歴史に思いを深くする区民も多いと思います。
また、学校給食が始まるはるか以前の大正時代、貧しく弁当をもってこれず、家業の手伝いをして、学校を休みがちな子のために、自身の判断とお金で子どもたちに昼食を提供した校長先生の存在なども後世に伝える必要があると思います。
明治の文豪が数多くすみだの小学校に通っていましたから調べようと思えば、まだまだ貴重な資料が見つかってもおかしくないと思います。
こうしたすみだの教育史に命を吹き込む作業にも(図書館や郷土文化資料館の協力も必要ですが)ぜひ取り組んでもらいたいと思っています。
前置きが長くなってしまいましたが、こうした教育および総合教育センターに対する強い思いがあるので、全国の「総合教育センター」を調査しています。場合により今回のように現地調査も行っています。
山形市総合学習センターについては、事前の調査で山形市の教育のホームページが充実していたので期待して訪問いたしました。
教員の研修と相談機能に力を入れていることがよくわかりました。不登校児童の問題や特別支援にかかわる問題が多様化していることから、現員の人数ではやむを得ないと思います。
教育シンクタンクまでの機能は有していませんが、市全体としてはICTを活用した授業もすみだに比べはるかに進んでいますし、 教員研修も夏休み期間中は場所が足りなくなるほど充実しています。
また、先ほど述べたように、情報の開示度もすみだに比べ進んでいるので、ホームページである程度市の教育方針や計画が理解できます。とりわけ、「教育基本計画」を策定していることは進歩的だなと感じます。
教育基本計画の存在は、教育委員会、事務局職員のみならず、現場の教員にとっても中長期な課題に取り組みやすくなることから有用なことといえます。
地方分権の進展とともに財源移譲がすすめば、独自の教育施策があらたにうまれるでしょう。
すみだのように国や都の補助金をあてにして施策を積み上げている自治体との格差が開かないよう、人材育成も含めやるべき課題が多いことを実感した視察でした。
余談ですが...
すみだはスカイ釣りの開業を機に国際観光都市を目指していることから、視察の合間に観光施策につなげるために、観光スポットや街並みをできるだけ見るようにしています。
今回は無料のレンタサイクルがあったので自転車で回りました。
写真は霞城公園(山形城跡)内にある山形市郷土館です。
明治11年に建築された「旧済生館」を移築し、郷土文化の資料を展示しています。
済生館は明治初期の洋風建築として貴重なものです。オーストラリア人医師の赴任により、明治初期からドイツ医学の普及啓蒙に貢献したそうです。
当時の医療器具なども展示されていましたが、テレビドラマの「JIN」の世界そのものでした。
国の重要文化財にも指定されたことの影響もあったと推察しますが、貴重な建築物を後世に残そうと尽力した先人の強い思いを感じる施設でした。
引き続き観光屋台村・ほっとなる横丁を訪れました。
花笠まつりが8月5日~7日まで開催されるそうですが、そのパレードが行われるメイン通りから1本入った通り沿いにありました。
屋台村の先進地・帯広と同じ方式でした。すなわち民間事業者が屋台村を開設するにあたり、市が補助金を出すというもの。
補助金を出す条件として、飲食店の操業・開業支援を行うことが義務付けられています。出展者は低コストで出店できるメリットはありますが、一定期間ののちに屋台村を卒業し、他の場所で開業しなければなりません。
出店している店のオーナーに話を聞くことができました。出店時は低コストですが、維持していくにあたり最大の固定費である家賃が高すぎるとのこと。
近隣相場の約3倍だそうです。客数を維持するのが大変で、他の地で開業するにはなかなか苦労が多そうです。
すみだでも適地があれば屋台村を検討したいのですが(開設する民間事業者に補助する仕組みは一緒)、中長期にわたる出展者の収益にも心配りをする必要がありそうです。
地方都市に来ていつも感じることですが、歴史の重みや伝統文化の継承について都市部と比べ物にならないほど大事にしています。
街の中を歩いていても、街の記憶のようなもの、あるいは、さわやかな心地よい情念が感じられます。