福山市の財政状況「 2013年度(平成25年度)決算見込み 」が広報ふくやま(2014年平成26年11月号)に掲載されました。
これには、一般会計歳入・歳出決算見込み、特別会計決算見込みについて、財政課も、図や表で民生費・公債費など目的別に色分けしたり、また「税収が前年度を下回る一方で、社会保障関係費が増加する厳しい状況で・・」と解説を加えたりして、市民へのできるだけわかりやすい理解に努められているようです。しかしそれにしても日頃からなじみのうすい私たちにとっては、これがいったいどんな意味があるのか・わからないといったところではないでしょうか。
私たちが知りたいのは、この歳入・歳出で、福山市の財政は、赤字なの?黒字なの?・いったいぜんたい借金がどれだけあって、いくらずつ返金しているの?・・生活が苦しい中で当然税収も少ないハズなのに、これで大丈夫なの?・・・といったことではないでしょうか。
わがまちの財政状況を知っておくことは大切なことと思いますので、一緒に本市の財政状況をみていきましょう。
福山市役所
2013年度(平成25年度)は歳入 1,702億9,000万円、歳出1,670億6,7oo万円、これを差引すると32億2,300万円のプラスとなり、これは黒字なのかな・?と見えます。でもこれだけでは黒字とはいえないようです。
それを知るために、「 決算カード 」というものがあります。これは、総務省のホームページにあり、いつでも誰でも簡単に取り出すことができます。2013年度(平成25年度)の決算カードはまだ掲載されていませんが、福山市の「 2013年度(平成25年度)決算カード(見込み)」を見ると、
「 普通会計(全国統一基準の会計:福山市は一般会計と特別会計の一部が含まれる)」歳入1,704億8,462万5千円、歳出1,670億5,169万1千円、差引は34億3,293万4千円。この中には「今年度に支出される予定だったけれども支出されず、翌年度に繰越される経費」が含まれております。家計で例えると、今年入った新聞代が集金されず翌年に持越しされるようなものです。この差引額から「翌年度に繰越すべき財源」4億2,080万2千円を差し引いて 30億1,213万2千円。これを「 実質収支 」といい、ここで初めて 黒字なんだなぁ・ということがわかります。
●ところで、福山市の財政規模はどれくらいなのでしょうか?
これは、国が全国の自治体に対し「 標準財政規模 」という金額で示し定められています。ひとことでいえば、福山市の標準的な税収に普通交付税を加算した額をもって理論的に定められた金額のことです。また、自治体に毎年経常的に入ってくるお金であり、ある程度自由に使えるお金で、わが家に例えて言うとお給料のようなものと思います。
福山市の「 標準財政規模 」は1,009億7,351万2千円です。
「 標準財政規模 」は、福山市が赤字か黒字かを経年的かつ他の自治体と比較してみる場合などに、とても有効です。
例えば、「 実質収支 」をこの「 標準財政規模 」で割った数値を「 実質収支比率 」といい、福山市の「 実質収支比率 」は3.0%です。この数値は3.0%~5.0%が望ましいといわれおり、福山市は勿論黒字でこの数年2.8%~3.9%の間を変動しているので、ほぼ良いといえるのではないかと思います。
※ただし、2007年度(平成19年度)の決算カードまでの「 標準財政規模 」は、ほぼ「経常一般財源等」と等しい数値でしたが、2008年度(平成20年度)の決算カードからの「 標準財政規模 」は、「経常一般財源等」と「臨時財政対策債」とを加算した数値で示されるようになりました。
●さて、福山市の借金はどれだけあるのでしょうか?
これについては同様に、福山市の「 2013年度(平成25年度)決算カード(見込み)」を見ると、◎「借金をする」のは、歳入の「地方債発行高」で156億990万円(昨年度より減) ◎「借金を返す」のは、歳出の「公債費」203億8,598万7千円(昨年度より増) ◎「借金の累積」は、「地方債現在高」で1,551億101万2千円(昨年度より減)で、本市は、苦しい中少しずつ頑張っている様子が伺えます。
リーデンローズ
●福山市は赤字か?黒字か? 「 普通会計(一般会計) 」について見てきましたが、福山市に限らず全国の自治体はこの会計の他に、国民健康保険や介護保険などの「 特別会計 」、病院、上下水道、工業用水道などの「 公営企業会計 」、消防や後期高齢者医療広域連合などの「 一部事務組合 」など、土地開発公社や体育振興事業団、芸術文化振興財団などの「 地方公社・第三セクター 」など、多くの多岐にわたる会計があります。そしてこれらの会計と一般会計とは緊密な関係をもって連結しており、これら全ての会計の決算による実質収額がどの程度になるかは、いつも注視しておかねばなりません。
各会計別の実質収支額は決算カードではわかりませんが、総務省の「 財政状況資料集 」でわかります。同様に総務省のホームページで、いつでも誰でも簡単に取り出すことができます。
総務省の「 2012年度(平成24年度)財政状況資料集 」を見ると、各会計とも実質収支額や損益などはほぼ黒字のようですが、これは一般会計からの繰入金などで成り立っていることがわかります。
ちなみに、ここには、
一般会計として(1)一般会計 (2)母子寡婦福祉資金貸付特別会計 (3)誠之奨学資金特別会計、
事業会計として(4)競馬事業特別会計 (5)国民健康保険特別会計 (6)介護保険特別会計 (7)後期高齢者医療特別会計 (8)駐車場事業特別会計、
公営企業(法適)として(9)病院事業会計 (10)水道事業会計 (11)工業用水道事業会計 (12)下水道事業会計、
公営企業(法非適)として(13)集落排水事業特別会計 (14)食肉センター特別会計 (15)商業施設特別会計 (16)都市開発事業特別会計、
一部事務組合等として(17)福山地区消防組合 (18)後期高齢者医療広域連合(一般会計) (19)後期高齢者医療広域連合(特別会計)、
アリストぬまくま
地方公社・第三セクター等として(20)福山市土地開発公社 (21)福山市青少年育成事業団 (22)福山市体育振興事業団 (23)福山市体育協会 (24)ふくやま芸術文化振興財団 (25)広島県東部花き流通センター (26)備後地域地場産業振興センター (27)福山勤労福祉・文化振興会 (28)アリストぬまくま (29)福山かんなべ文化振興会
が示されております。
連結実質収支を示す「 連結実質収支比率 」は黒字で推移しているようですが、今後も注視していかねばなりません。このことについて私たちは、「福山市企業会計決算特別委員会」でもしっかりと審議・討論したところです。
●「行財政特別委員会行政視察」でもふれましたが、夕張市の財政破綻が明らかになった直後の2007年(平成19年)に「 財政健全化法 」が成立しました。
わがまちの財政が健全なのかどうか?! 「 財政健全化法 」では、 ①「 実質赤字比率 」 ②「 連結実質赤字比率 」 ③「 実質公債費比率 」 ④「 将来負担比率 」 の4つの指標を示すことが義務付けされました。
これらの指標について、実質収支の赤字をチェックするために、①「 実質赤字比率 」は、普通会計(福山市は一般会計と特別会計の一部が含まれる)についてのみ適用しており、②「 連結実質赤字比率 」は、普通会計のみならずさらに特別会計及び公営企業会計まで適用した数値で示されております。
次に、③「 実質公債費比率 」 や ④「 将来負担比率 」 ですが、これは、借金残高や借金の返済や負担感を見る数値として示されたものです。
③「 実質公債費比率 」は、借金の返済や負担感を見る数値で、普通会計や特別会計及び公営事業会計や一部事務組合・広域連合なども含めて、公債費を返済するため「一般会計から出される繰り出し金」を対象としたものです。
ちょっとややこしいのですが、あえて数式を示すと
③「 実質公債費比率 」(3ヶ年平均)= {( 地方債の元利償還金 + 準元利償還金 )-( 特定財源 + 元利償還金・準元利償還金に係る基準財政需要額算入額 )} / { 標準財政規模 -( 元利償還金・準元利償還金に係る基準財政需要額算入額 )}
となります。よくわからないなりにどのような性格の数値なのか・気持ちわかったような気になりますが・・。
④「 将来負担比率 」については、地方債現在高や債務負担行為など自治体の借金残高を見る指標で、普通会計や特別会計及び公営事業会計や一部事務組合・広域連合のみならずさらに地方公舎・第三セクターなどまで含めた一般会計からの地方債返済の負担分を合算したものです。
④「 将来負担比率 」については、私もこれかな?とよく理解していないのですが、「 実質的将来財政負担額比率 」というのがあり、たぶんこれだろう??と思い、ご参考に以下にその数式を列記しておきます。
「 実質的将来財政負担額比率 」= { 地方債現在高 + 債務負担行為翌年度以降支出予定額 - 積立金現在高 } / 標準財政規模 × 100%
「 早期健全化段階(イエローカード)」は、健全化判断比率の①~④の一つでも基準以上となれば「 財政健全化団体 」とよばれ、早期健全化計画の策定が義務付けされます。
「 財政再生段階(レッドカード)」は、さらに悪化している段階で、健全化判断比率の①~③のうち一つでも基準以上になれば適用され、「 財政再生団体 」とよばれ、財政再生計画の策定が義務付けされます。計画には国の同意手続き、地方債の制限などの規制がかかるようです。
「 早期健全化段階(イエローカード)」の基準は、福山市のような中核市では、 ①実質赤字比率:11.25%~15% ②連結実質赤字比率:16.25%~20% ③実質公債費比率:25% ④将来負担比率:350%
「 財政再生段階(レッドカード)」の基準は、同様に、①実質赤字比率:20% ②連結実質赤字比率:30% ③実質公債費比率:35%
程度であるといわれておりります。福山市は、①「実質赤字比率」 ②「連結実質赤字比率」は、黒字(ゆえに数値は示されない)。 ③「実質公債費比率」6.4%、④「将来負担比率」が22.7%となっており、今のところ大丈夫で安定的に推移していると思います。しかし、ある日突然、「財政健全化団体(イエローカード)」、「財政再生団体(レッドカード)」にならないよう、十分注視していかねばならない!と決意するものです。
( 2014年平成26年11月1日頃記す )