■委員会視察です!(その3の1)福岡県大牟田市・地域認知症ケアコミュニティ推進事業
3)大牟田市の地域認知症ケアコミュニティ推進事業の取り組み
委員会視察の最終日は福岡県大牟田市。三井三池炭鉱で賑わった有明海に面するまちで、石炭産業で一世を風靡したこの地域は、
【人口】
・昭和35年(1960年):約208,000人から
・平成30年(2018年):約115,800人
と58年かけてゆるやかに減少。
高齢者数は約41,300人、高齢化率は35.7%(2018年4月時点)とのことで、人口10万人以上の都市では高齢化率は全国第2位(平成27年国勢調査)。
浦安市の高齢化率は16.77%(平成29年(2017年)12月現在)であり、大牟田市はすでにまちを挙げての認知症ケアに取り組み、「認知症の人に優しい地域づくりのモデル」として知られています。それは、地域全体で認知症の理解を深め、地域で支える仕組みを作り、認知症になっても誰もが住み慣れた家や地域で安心して暮らし続けることのできるまちづくりを推進してきた、ここ20年近い取り組みで全国から高い評価を得ています。
視察当日は、平成14年(2002年)に配属されてからずっとこの事業に関わり続けた、保健福祉部健康福祉推進室の池田武俊室長から直接、お話しを伺ってまいりました。
しかし、、そうは言っても^_^;
「高齢になっても」誰もが住み慣れた家や地域で暮らし続ける、ならよく伺いますが、
「認知症になっても」誰もが住み慣れた家や地域で暮らし続ける、というフレーズがどうしても心に残り、もちろん全市を挙げての取り組みにしていかざるを得ない課題であった、ということだと推察しますが、
そのように言い切る取り組みに問題意識を集中し(なぜ?どうやって?と熟慮しながら)拝聴してきました。
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■大牟田市の高齢者福祉の始まり
大牟田市介護サービス事業者協議会(平成12年(2000年)3月)
・介護サービス事業者の資質の向上及び事業者間のネットワーク化を図ることにより、円滑な介護サービスの提供を推進するとともに、介護を必要とする人の日常生活への復帰に努力し、本人の意志と能力を発揮しうるような人生を最後まで支え続ける介護環境の確立を目的として発足
・事務局は大牟田市健康長寿支援課が中心となって運営し、会員数は71法人216事業所まで拡大。サービス品質の向上は、事業者の努力だけに委ねるのではなく、行政の支援も必要との観点から協議会を設立
『自立支援→自己決定→自己実現』 が大切
大牟田市認知症ケア研究会の発足(平成13年(2001年)11月)現:ライフサポート研究会)
・大牟田市介護サービス事業者協議会の専門部会として、認知症ケア研究会が発足。
→「いつでも・どこにいても・誰といても自分らしく、幸福に暮らしてほしい」との願いから発足。それには自分の施設だけが良くてもダメで、市内すべての事業所が質の高い認知症ケアを提供できるようにならなければ意味がない、これこそが市を挙げて取り組むべきテーマであると位置づけ(池田室長 談)。
【基本理念】
認知症の人がひとりの個人として尊重され、その人らしく地域で暮らせるように、以下3点をキーワードに地域で支える仕組みづくり、サービスの向上を図っていく
1)ノーマライゼーションの視点
2)人権の尊重、個人の尊厳
3)人生の継続性、QOL(生活の質)の向上
・構成メンバー:市内の介護事業所に勤務する職員(専門職)9名の運営委員からスタート(平成26年(2014年)10月1日現在:運営委員32名、会員224名)
※専門職を必ず付けることを続けているそうで、理由として職場において、あるいは事業者で専門職が定着せず、現場での対応に苦慮していた経験から継続的に専門職を付けるようにしているそうです。
・事務局は大牟田市健康長寿社会推進課
→地域認知症ケアコミュニティ推進事業がスタート
■認知症支援を基盤にしたまちづくりのための人材育成
認知症コーディネーター養成研修(平成15年(2003年)4月)
・地域をフィールドとして認知症ケアのアドバイスやケアの質の向上のための取り組みと、ケアマネジメントができる人材の育成
・受講生(12人×2期生)は毎月2日間、履修項目に従った研修に取り組み、内容は講義よりもディスカッションやグループワークに重きをおく
・受講期間:2年間
・受講費用:年間10万円
※平成30年(2018年)4月現在:修了生126名(平成16年度~平成28年度の全13期)
(うち、認知症ライフサポート研究会運営委員29名)
大牟田市の地域認知症サポート体制(チーム)
・地域包括支援センター(6ヶ所)の支援機関として基幹的なサポートチームを設置。認知症コーディネーターと認知症専門医とが連携し、BPSD(行動・心理症状)等の困難事例や特別なサポートが必要なケースを中心に、適切な助言や本人・家族への支援をコーディネートしていく仕組みを構想。
・あわせて、市内地域密着型サービス事業所(小規模多機能型居宅介護・認知症高齢者グループホーム)や地域包括支援センターには、認知症コーディネーター養成研修修了生を配置することにより、共通の理念に基づくケアの実践を担う専門職同士のネットワークを通じ、事業所間、または事業所と地域包括支援センター間の更なる連携強化をめざす。
※この体制にすることで「認知症コーディネーターがどこにでもいる」という
安心感につながり、また認知症の方本人のためにもなっているとのこと
→何か問題があっても大騒ぎしないで済む、など
・認知症の早期発見・早期対応を目的として、もの忘れ予防・相談検診を実施
→地域包括ケアサポートチームが担当
・地域包括支援センター
・もの忘れ相談医
・認知症専門医
・認知症コーディネーター
■一次検診:年18回程度・地域交流施設や商業施設で開催
■二次検査:年2回・保健所で実施
※ここでフォローが必要な人は、地域交流施設で開催する認知症予防教室へ通うことに
★脳の健康を守る介護予防教室「ほのぼの会」★
~市内6ヶ所の介護予防拠点で実施~
脳の健康を守るために「ほのぼの会」は毎年8月と12月に、3ヶ月間にわたり週1回、市内の介護予防拠点で認知症予防教室を実施。笑いと仲間づくりで脳の活性化を図る。
★認知症何でも相談室★
・日時:毎週水曜日13:30~16:30
・場所:大牟田市保健所
・内容:認知症コーディネーター6名が輪番で従事し、認知症に関する相談を受ける。もの忘れの度合いを調べるタッチパネルを常設
※相談無料、予約不要
★認知症コーディネーターと認知症専門医とで、まさにいたれりつくせりの相談体制が敷かれておりました
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■小規模多機能型居宅介護と地域交流施設
・通いを中心に、訪問や泊まりのサービスを提供する小規模多機能型居宅介護に、介護予防拠点や地域交流施設の併設を義務付け、健康づくり、閉じこもり防止、世代間交流などの介護予防事業を行うとともに、地域の集まり場、茶のみ場を提供し、ボランティアも含めた地域住民同士の交流拠点となっている。
・平成29年(2017年)10月末時点で小規模多機能型居宅介護を行っている25事業所に設置
【特徴】
■生活圏域の中で事業所を整備(自宅近くの住み慣れた地域で利用)
■小規模多機能型居宅介護事業所と地域交流拠点(介護予防拠点)の併設
■要介護者のみが集まる場ではなく、共生型のさまざまな地域住民が集う場へ
■新しい総合事業「基準緩和型通所介護」の実施場所(自立した日常生活へ)
自宅近くの拠点で介護予防の時点から顔なじみになっておき、日常のつながりを大事にする。介護保険もデイサービスなどの個別サービスだけを使ってしまうと、今までのつながりが薄れてしまうため、ホームヘルプだけに頼らない、などの考え方で、支え合い・つながりを大事にしている(池田室長 談)。
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↓ 詳しくはこちらのサイトへ
http://www.city.omuta.lg.jp/hpKiji/pub/detail.aspx?c_id=5&id=2178&class_set_id=7&class_id=665
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■大牟田市の認知症カフェ
・市内11ヶ所の認知症カフェマップ
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↓ 詳しくはこちらのサイトへ
https://www.oomuta-h.com/dementia/ninchishou-kissa
子どもの頃から認知症について学び、認知症の人と触れる機会をつくるという市民アンケートから生まれた
絵本教室では、認知症の人の気持ちや自分たちに出来ることを話し合います
↓
・認知症って?
・認知症の人の気持ちって?
・一番困っている人は誰?
・僕たちに出来ることはある?
※平成16年(2004年)から始まった小・中学校の絵本教室は、これまでに8千人を超える子どもたちが、絵本を通して認知症の人への思いやりの心を育ててくれました。
また、これらの絵本教室には認知症コーディネーターがファシリテーターとして、ボランティアでお話しに行かれているとのこと。脱帽です。
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↓ 実際の取り組みはこちらのサイトへ
http://www.city.omuta.lg.jp/hpkiji/pub/detail.aspx?c_id=5&type=top&id=10182
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【今回学んだこと】
毎年1回、まちを挙げての「認知症SOS模擬訓練」が行われている大牟田市。認知症の人が行方不明になったという想定で、行方不明役の人が地域を歩き、連絡を受けた地域ネットワークが捜索に協力するというものです。同様の訓練は浦安市でも平成27年(2015年)9月に、はいかい模擬訓練として当時、大牟田市から大谷るみ子氏(東翔会グループホームふぁみりえホーム長)をお迎えし、開催されました。
このネットワークは「ほっと・安心ネットワーク」と呼ばれ、地域住民・警察・消防団・学校・タクシー会社・商店などが協力して行われますが、平成16年(2004年)に始まり平成19年(2007年)には市内全域の模擬訓練範囲となり、平成23年(2011年)には22校区すべての小学校区の住民が参加するまで広がりました。
一方で、池田室長のお話では、模擬訓練を市内全域に広げた際に「高齢化が進む地域組織にこれ以上の負担をかけるな」と反対され、行政からの押しつけのように捉える住民もいらっしゃったそうです。それも、回を重ねるごとに意義を理解いただき、今では訓練の時期が近づくと地域から声がかかるくらい、毎年の恒例行事として定着したそうです。
これも、まちづくりを「子どもの頃から活動していた地域の中で、住民同士がずっとつながりあって支え合っていく」ことを基本とし、そこで認知症の課題をみんなで協力して解決しよう、というのをきっかけとしたからこそ、市民への認知症理解が広げられたと思いました。その最終モデルが、「安心して『はいかい』出来るまちづくり」をめざすことである、という理解に達しました。また、これまで介護現場の職員は、手弁当で自分の時間をこの取り組みに費やしてくれ、今のモデルを作り上げてくれたとのことで、深い使命感がなければ出来ない尊いお志に感動しました。
当日頂いた資料には「行政が現場の職員にいかに近づいて、現場の声や地域の声、抱えている課題を吸い上げて、施策や制度という形にしていくのかだと思います。そういう意味でも、協議会の事務局を行政が担ってきたことが大きい」との池田室長 談があり、公明党と全く同じ現場第一主義!に貫かれておりました。これからもますます現場にヒントを探し続けたいと思います。
3年前に初当選させて頂いてより、
①埼玉県和光市(介護保険の卒業!2015年8月13日ブログ)
②三重県四日市市(会派視察です(その1)!【四日市市の地域包括ケアシステム】2016年10月8日ブログ)
そして今回は委員会で③福岡県大牟田市の地域包括ケアシステムを視察させて頂きました。
和光市は行政主導、四日市市は民間主導、その中間にあたると考えられる大牟田市地域包括ケアに、元町・中町・新町と浦安市の変遷から生まれた特殊な文化もすべて包含できるヒントを探してみたいと思います。また、各モデルの視察を企画してくれた先輩議員の方々に感謝するとともに、これらの学びを住民福祉の向上のために、浦安市モデルの構築に向け活かしていきたいと思います。