国会議員でもない私がどうこういうのも、どうかと思いますし、国会内のやり取りはよくわかりませんが、あまりにも情報がなく、発信がなく、現場では支援者の皆さんをはじめ、昨年末頃から賛成反対、心配されている大変多くの方々から、様々なお声を頂いています。つらつらと書きます。あくまでも個人的な意見です。
防衛装備品の前に、ロシア・ウクライナ戦争に絡む話から。早期停戦を願うばかりですが、マスコミ報道により、日本とロシアは経済的にも断絶しているかのようなイメージがあります。しかし、ロシアと欧州のパイプラインは止まっても、日本向けは止まっていません。
財務省貿易統計によりますと、2023年のロシアからのLNG(液化天然ガス) の輸入量は約 613 万トン(全輸入量に 占める割合 9.3% 日本の総輸入量:約 6,615 万トン)。ロシアと日本を結ぶサハリン2(日ロ共同の石油・ガス複合開発事業)から輸入されているようです。日本が使うLNGの1割はロシア産。因みに、2020年、日本へのロシア産のLNGシェアは8.2%。ウクライナ戦争前より増えてます。また、西側から経済制裁されて困っているはずのロシア経済は好調。日本に売らなくても困らない状況。
IMF(国際通貨基金)のデータをもとに2002年と2022年の世界のGDPを比較すると、G7は2倍の経済成長であるのに対しBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)は9倍。世界のGDP占有率はG7が65%が44%に減少したのに対し、BRICSは9%が26%になっています。
更に、この戦争の最中、今年1月からBRICSにはエジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の5カ国が正式に新規加盟国として加わりました。世界の構図は大きく変化しています。日本の置かれる立場の変化を続けています。環境の変化にいかに対応していくか。日本のかじ取りが問われています。
他方、池上彰氏が昨日のテレビ番組で、日本のマスコミが殆ど伝えてこなかった事実を伝えられていました。圧倒的な軍事力の差。取り返せていないウクライナの領土。増え続ける犠牲者の数。米国に「管理された戦争」では当初からウ軍勝利が目的ではないと思いますし、開戦当時の2年前から状況は変わっていない。早期停戦を願うばかりです。
こうした事実を受けて、思うままに書いてみます。
日本はかつて武器輸出三原則などで実質的に武器輸出を全面禁止してきました。しかし、周辺環境の変化の中、武器輸出三原則に代わって2014年に防衛装備移転三原則が制定されました。それでも、今も平和国家としての基本理念を堅持するため、防衛装備品の輸出は厳しく制限されています。しかし今、大きな転換点となりうる「殺傷能力のある防衛装備品」の輸出を認めるかどうかの議論が続いています。
「殺傷能力のある装備品」を輸出しない国であることにより、各地の紛争を止めるための「仲介役」となりうる今の日本。一方で、その縛りを外すことにより「戦争当事者」になりうることになります。これまで築いてきた「世界の中の日本」にとって、極めて大きな変化であり、各国の見方も変化する話だと思います。
また、防衛装備品で輸出が許されてきた「5類型」そのものの見直しの議論もあります。
現在の武器輸出の運用指針はシーレーン・海上交通路の防衛を念頭に「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型に限定しています。自民党は5類型の撤廃を求める立場で、類型をなくして日本の安全保障に資するかで判断すればよいというのが大勢とのことですが、撤廃することで起きる問題を想定し、国民に問い、しっかり検討する必要があると思います。
防衛装備品の第三国移転について、「周辺環境の変化への対応」「輸出促進を通じて日本の防衛産業を強化」等のため輸出すべきとの議論。環境が変化する中、またいつの時代も、何もしないでもいいということはありません。
憲法改正を求める人と、憲法を守りたい人では、環境対応の考え方や主張が自ずと異なります。
安保法制の時もそうですが、周辺環境の変化を理由に、他国の戦争にもかかわっていく「集団的自衛権」を当然のように主張する話がありました。それに対して公明党が憲法の示す「専守防衛」を基本に、日本の防衛を目的とした他国との協調、部分的な「集団的自衛権」を訴え、専守防衛を守る形で安保法制はまとまりました。
戦前の軍国主義という数多の犠牲をもたらした深い反省の上に立ち、戦後日本の憲法というルールがあるわけですから、そのルールを守って議論する事は当然のことかと思います。もっともらしい評論家などの話もありますが、ルールを超えて勇ましく行動することが国益になるといった話には乗れません。
またそうした勇ましい話は、日本国民の誰かを犠牲することが前提となっているように思います。主張しているその人が、自分も、自分の子どもも、先頭に立って行動するという話を聞いたことがありません。どこかの誰かにやらせようとしていることが前提のよう。他人の不幸の上に自らの幸福を築こうとする。これは卑怯というものです。人の命に関わる話。うやむやにする話ではありません。
「戦後日本で偉くなった人の多くは、戦場に行かなかった人たちだった」との言葉があります。
防衛の話をする際は、他人事でなく、自分事として考える必要があると思います。
今回の防衛装備品の第三国移転の話。安保法制、集団的自衛権の議論の時と同じような感じがします。公明党が厳格な歯止めをかけることになりそうです。
一昨日、政府が示した案では、輸出の対象を次期戦闘機に限定し、①防衛装備品輸出などに関する協定締結国の限る ②戦闘が行われている国には輸出しない ③与党による事前協議を行う としています。当初案より大きく変化しています。
「国益をまもるため輸出すべき」として、テレビの討論番組などで輸出を「メリット」とする話がよく出てくるのですが、「デメリット」の話を聞いたことがありません。
日本はG7の中で唯一、これまで「殺傷能力のある防衛装備品」を輸出していない国。日本の武器により人は殺されていない。作家の佐藤優氏をはじめ、他国とは異なるその特別な立場を強調されており、それは大変重要な日本のポジションだと思います。当事者間の対話をつなぐ役目を果たせる、G7では唯一の国ともされています。
他国との決定的な違いであり、戦後日本が進めてきた平和外交の力だと思います。上述の通り、ロシアから欧州へのエネルギー供給は劇的に変化しましたが、日本向けのエネルギー供給は変わらず続けいています。個人的にはこの事実にメッセージを感じますし、第二次大戦後に続けている日本の武器供与の姿勢と、外交の成果ではないかと思います。
ひとつの見方ではありますが、他のG7と同様の扱いとなり、状況を変えてしまう可能性の高い「殺傷能力のある防衛装備品」の輸出。天然資源のない国・日本にとって、この判断は国益を損ねる可能性がないとは言えません。
1割のLNG輸入が止まることで、国民生活への影響はどうなるのか。その穴をどのように埋めるのか。それでなくとも物価高で生活現場は苦しんでいます。
首相の国民に対する国益の話は分かりますが、損益も示しつつ、述べられた方がいいように思います。
これだけではありませんが、「殺傷能力のある防衛装備品」の輸出により発生する問題、想定される変化。そうしたことへの評価を棚上げして、G7で足並みをそろえて「出せばいい」というのは、平和国家・日本としての評価が大きくが変わるのではないかと危惧しています。
そもそも、何をもって日本の国益とするか?国民の生命財産を守るとはどういうことなのか?
今回の議論に懸念を持つ人も少なくありません。その証拠に、昨年7月に行ったNHKの世論調査では、「殺傷能力のある防衛装備品」の輸出を認めるかどうかについて、「賛成」が24%、「反対」が63%だったとのこと。その先に何が起きるか。過半数を超える国民はその先の日本を想像し、危惧しているからだと思います。
先月2月29日、山口那津男代表はBS11の番組「報道ライブ インサイドOUT」に出演し、防衛装備品の第三国移転について、国民の納得と理解が必要だと主張。
一、(日本と英国、イタリアが共同開発する次期戦闘機の第三国への移転を認めることについて)国民の理解が至っていない中で、決めるのは良くない。共同開発することは公明党も賛同している。ただ、日本が完成品を第三国に輸出することは、共同開発を決めた当時、前提になかった。それをなぜ変えたのか。政府は国民に説明しなければならない。
一、日本が殺傷能力のある武器を提供すれば、それが現場で使われることになる。それは、戦後に培われた日本の国民感情にそぐわない。周辺国や外国の不信感が生まれるかもしれない。やはり一つ一つ国民の理解、納得を得ながら進めていくやり方が大事だ。
安全保障政策の大転換。国の行く末を左右する、極めて大きな問題。
いずれにしましても、直接的に現場の声を伺っている私からしますと、多くの国民は、懸念と不安、そして怒りにさいなまれているように感じます。
皆さんが求めるところは、平和であって欲しい、豊かであって欲しい、戦争なんてやめて欲しい、つまらないゲームはやめて欲しいということ。
国会議員には国民のために、テレビでもどこでも、見えるところで議論し、発信し、しっかりと説明して欲しいです。
そして、世界情勢が大きく変化する中、日本をどういう国にしようとしているのか示していって欲しいと願っています。