昨日は減災対策推進特別委員会。「防災拠点と防災訓練の実態と課題」について議論。またご報告します。
健康で長生き、いくつになっても食べるものが美味しい。昨朝お会いしたご夫婦も健康に気遣いながら大変お元気で楽しい日々を送られていましたが、そうした高齢者の方々を増やしたいと願っています。只、いざという時にはしっかりした医療を受けて早期に治療。誰もが願う健康。一方で、増え続ける健康保険料や介護保険料の値上げは家計に重くのしかかっています。
先日、ある医師との会話では、長年「何かあったら見せに来て」と言ってきたことにより、不要と思われる診療が増えている現実が話題に。所謂、小さな子供も大人も「コンビニ受診」が目に余る現実を指摘。とはいえ、早期に直すべきものを我慢させるような「受診抑制」があってはなりません。病が重症化しては健康悪化のみならず医療費の増大にも繋がります。
医師曰く、「学校教育で年に1回でも医療費がどのように集められ、使われているか教育すべきではないか。」「皆で支え合っている制度であるという認識が欠落しているのではないか。」「病気をしたら、日本人は簡単に病院へ行く。欧米の人はまずは自分で治そうとする。」「意識の変革が必要だと思う。」
全ての学校で行われているわけではありませんが、高校生に対する社会保障関連教育などに取り組んでいるところもあります。只、こうした社会全体での負担増抑制には、社会全体で再認識し未来の子ども達にも伝えていく必要があるように思います。全国を見わたせば小さい自治体では保険料負担の減少に成功している事例もありますが、基礎自治体レベルでしっかりと進めていくべき話だと思います。
健康で長生き。誰もの願いだと思います。先日、NHKの「時論公論」で「脱 ”健康格差社会”」と題してNHK解説委員の後藤千恵氏が話をされていました。
「『健康でありたい』。そのためにはどうすればいいのでしょうか。政府は今月告示した向こう10年間の健康政策の目標の柱に、初めて「健康格差の縮小」を掲げ、取り組みに乗り出すことを決めました。健康なくらしを広げていくために今、何が必要なのか。
向こう10年間、国民の健康を増進するためにどんな取り組みをしていくのか。政府はその基本方針を定めた「健康日本21」を告示しました。
注目されるのは、健康を増進するために、生活習慣の改善や、生活習慣病の予防など、これまでのように個人を対象にした政策と合わせて、社会環境を整えることで、健康格差を縮小させる、つまり、社会のあり方にも目を向けた政策に車の両輪として取り組む方針を初めて掲げたことです。
この背景には、この10年から20年の社会・経済状況の変化があります。所得の低い人が増え、一人暮らしの人が急増するなど、家族のありようも変わりました。地域とのつながりも一層、薄れてきています。こうした社会的な要因を背景に、健康状態の差、いわゆる健康格差が報告されるようになり、今後も深刻化することが心配されているのです。
もちろん、運動や食事の習慣、脳卒中や高血圧といった生活習慣病の予防など、個人的な取り組みは引き続き、重要です。しかし、それだけでは国民の健康を守ることができない、個人の取り組みに期待するとともに、社会環境の整備にも目を向けた取り組みに合わせて力を入れる重要性が高まっているのです。
では、具体的にどんな取り組みが考えられているのでしょうか。
政府が注目しているのは、国民の健康寿命です。これは、日常生活を支障なく暮らせる期間のことで、平均寿命とは違います。日本人の平均寿命は男性で79.55歳、女性で86.30歳です。一方、厚生労働省が先月、初めて、この平均寿命とは別に健康寿命を試算したところ、男性が70.42歳、女性が73.62歳、それぞれ9年から12年も短くなっていました。平均寿命との差はつまり、介護サービスなど、誰かの支援が必要となる期間ということになります。
その健康寿命に、地域によって大きな格差があることもわかりました。それを都道府県ごとに示したのがこちらのグラフです。男性で最も高いのは愛知県、女性では静岡県です。一方、最も低いのは男性が青森県、女性が滋賀県。高いところと低いところ、男性で2.79歳、女性で2.95歳の差がありました。
政府はこれからの10年ですべての都道府県の健康寿命を最も高い県と同じくらいにまで引き上げ、格差を縮小させることを目標に掲げました。健康で過ごせる時間が長くなることは、個人にとっても喜ばしいことですし、結果として、膨らみ続ける社会保障費を減らしていくことにもつながるとして、政府は重要な取り組みだとしています。
とはいえ、具体的にどうやって格差の解消に取り組むのか、対策は定まっていません。そもそも、なぜこんなに大きな差があるのか。その要因すらわかっていないのが現状です。今後、市町村ごとに健康寿命を試算した上で、経済や雇用の状況、家族の形態や地域のつながりなど、様々な指標との関連を分析して要因を割り出し、格差の縮小に向けた模索を始めることになります。
実は国際的にみますと、すでに10年以上も前から、健康格差への注目が集まり、格差解消への取り組みが続いています。
WHOはすでに1998年に、「健康の社会的な要因に関する報告書」を発表。その改定版に、「健康格差の解消は行政の責務である」と明記しています。その後、各国で具体的な取り組みが始まり、イギリスでは2003年に格差解消に向けた行動計画を発表。2005年、健康格差をテーマにしたEUサミットが開かれ、36カ国から大臣級の人たちが参加しました。2009年には、WHOが健康格差の是正を勧告するに至っています。
WHOは健康に影響を与える社会的な要因として、職業、経済力、家族構成、そして地域、主にこの四つの要因をあげています。住民の健康に関する膨大なデータの蓄積の中から浮かび上がったものですが、実はこうして早くからその対策に取り組んでいる諸外国ですら、健康格差の縮小に向けて、十分な成果をあげられているわけではありません。健康格差をなくすには、10年、20年というスパンでの取り組みが必要だという指摘もあります。これから取り組もうという日本にとっても、容易な道ではありません。ただ、この中で、私が特に注目したいのは、地域に目を向けた取り組みです。
こんな事例があります。
兵庫県の稲美町は、お年寄りに長く元気にいてもらうために、地域にお年寄りが気軽に集える場所、行きたくなる場所をたくさん作りました。地域の自治会の9割以上で様々な集いの会が開かれています。また住民の方の力を借りて、地域の行事で必要になるものをお年寄りに作ってもらうなど、お年寄りが活躍できる機会を用意して、出番と役割を広げました。
その成果がこちらです。介護サービスが必要だと認定された高齢者の率。青い線が全国平均、赤い線が稲美町の数字です。一時は全国平均を上回っていたんですが、こうした取り組みを始めてから、ぐっと下がっています。地域の力が、お年寄りの健康を維持するための大きな支えとなっているんです。
人とのつながりが健康に影響を与えることを伺わせる研究結果もあります。東北大学の研究グループは、「生きがいを感じているかどうか」という意識と死亡のリスクの関連について調査しました。
5万人を対象に「生きがいや、“はり”を持って生活しているか」と質問。その答えと、7年後に亡くなっている人の率を比較しました。その結果、生きがいが「ある」と答えた人で亡くなった人が10人いたとしますと、「どちらともいえない」と答えた人では11人、「ない」と答えた人では14人。死亡率に大きな格差が出ていたことがわかりました。
研究を行った東北大学教授の辻一郎さんは、「生きがいとは、誰かの役に立っているという実感など、他の人との交流や支え合いがあってこそ得られるもの。そうしたつながりの中から、健康でいたいという意欲が生まれる。そうした意欲、希望を持てるかどうか、いわば、“希望格差”が健康格差につながっている可能性がある」と指摘しています。
人は、人との関係性の中で生きています。でも、無縁社会ともいわれるこの社会で、誰ともつながることができず、身をひそめるように生きる人が増えています。希望を失い、健康でいたいという思いすら持てない、健康診断に足を運ぶ必要性を感じない人たちが増えているのです。個人の取り組みに期待した健康政策が、社会の変化の中で壁にぶつかっています。地域のつながりを取り戻し、誰もがこの社会とつながれるようにしていく。健康づくりは社会づくりでもあります。」
先般ご紹介しました自殺対策のNPOの方も、その対策は地域づくりにあるとの話でした。何ごとも優先順位というものがありますが、「人のつながり」「地域づくり」は今の社会において最も重視され、人もお金もかけて着手すべきことではないかと考えさせられます。