うつ病 「何か困ってる?」の声かけについて 2059
昨日は終日市役所で会議。一般的にも、市役所職員、学校の先生などにもメンタルの問題が深刻です。
「朝、起き上がれない」。「うつ病」で苦しむ会社の同僚。私が駆け出しのサラリーマンの時代には殆ど認知されていなかった病気だけに本人の辛さは相当なものだったと思います。100万人を超えるまさに現代病とされるうつ病。自分の周りには悩み、苦しむ方が増えています。なんとかしたい。明るく前に進む人生にしたい。先月には相談電話がパンクしたという報道もありました。しっかり対応しなくてはなりません。早く発見して、治療に専念。本人も周りもゆっくりと長い目でいくことが大事なのかと思います。
先日、日経新聞が「『何か困ってる?』声かけて 早期に発見、本人の自覚を」と題して職場での対応について特集されていました。
「うつ病など気分障害の国内患者数は100万人を超えた。30~50代でうつに悩む人々が目立つ。職場のうつを防ぐにはどうすればよいのか。症状の悪化を防ぎ、治癒へと歩み出す方法を検証する。
「同じ職場で同年代の男性2人が同時期にうつ病を発症した」。産業医で労働衛生コンサルタントの秋元公彦医師はそう切り出した。2人を同じ精神科医に紹介したところ、1人は翌日受診したが、もう1人が受診したのは仕事の見通しが立った約1カ月後。2人とも受診後すぐに休みに入った。前者は約1カ月で職場に復帰したが、後者は1年たった今も休職中だ。「早期発見に越したことはない」と秋元医師は言う。
うつ病とは、抑うつ気分が続き、物事への興味・喜びが喪失するなど、仕事や社会生活を送る上で支障を来す病だ。米国精神医学会や世界保健機関の基準が、診断によく使われる。
一方「新型うつ」と呼ばれる症状も、最近、若者を中心に増えている。「私生活では元気なのに職場ではうつ」という状態だ。このほか「いいことがあるとそれなりに気分が良くなるが、鉛のような疲労感や過食、過眠があり、他人に拒絶されたと思ってしまう非定型うつ病もある」(東京都医学総合研究所うつ病研究室の楯林義孝室長)。さらに、気分が高ぶるそう状態とうつ状態が交互に起こる双極性障害(そううつ病)などもあり診断は難しい。
「うつ病に関しては誤解も多い。過度に症状にこだわらず、とてもつらくて日常生活に支障が出るようなら、早めに受診した方がいい」と国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センターの大野裕センター長は助言する。うつ病の治療の3原則は「休養」「投薬」「カウンセリング」だ。
もっとも心の病は自覚しにくい。職場では、本人に気づかせ、適切な対応へとつなぐため、上司の責任が問われる。
遅刻や急な休みが増えた。会議での発言が減った。仕事でミスが増えた――。そんな「いつもと違う部下」に気づいたら、まず声をかけよう。「最近、会議に集中できていないように見えるけど、何か困っている仕事でもある?」といったように、「症状を指摘するのではなく、本人が自覚しやすい行動の変化を伝えるのがポイント」と神田東クリニック(東京都千代田区)の高野知樹院長は語る。
「精神の健康状態についてなら、きちんと睡眠が取れているかどうかを聞くといい」(高野院長)。睡眠は自覚しやすく、尋ねる方も答える方も抵抗感が少ない。もちろん、日ごろから対面でコミュニケーションを取り、部下の行動をよく見ておくことが重要だ。
声をかけて部下の不調が分かったら、会社の産業医や保健師に相談するよう勧めよう。ここでも日ごろの信頼関係ができていないと、部下にはかえってストレスとなる。
声をかけても「大丈夫」という返事しか戻ってこないときは、「数日おいてまた声をかける」(秋元医師)。対応に変化がなければ「経過観察に切り替え、仕事のパフォーマンスが低下してきたら、必ず30分ほどの面談をしてほしい」と精神保健学に詳しい東京大学大学院の川上憲人教授は言う。
上司が説得しても、情報が漏れて会社での立場が不利になることを恐れ、産業医や保健師には相談したくないという人もいる。「そういう人も、決して一人で抱え込まずに、どこかに相談してほしい」と専門家は口をそろえる。例えば、会社が契約する相談機関、精神保健福祉センターなどの公的機関などだ。
職場ではうつのそぶりを見せずに仕事をこなすが、家庭では様子がおかしいというケースもある。その場合は、家族が職場内外の相談窓口を利用するといい。
うつの早期発見・早期対応に、厚生労働省も乗り出している。定期健康診断に合わせ、医師・保健師によるストレス検査を行うよう、事業者に義務付ける労働安全衛生法の改正法案を提出済みだ。結果が自動的に事業者に伝わる健康診断と違い、従業員の同意がないと通知はされない。
「ただ派遣社員など非正規労働者は制度の谷間に残される。従業員50人未満の事業所をどうするかも課題」と東京工科大学の五十嵐千代准教授は指摘する。対策を取れば法人税が軽減されるなど、企業にとってもメリットのある制度を設ける必要がありそうだ。
「うつ病」が増え続ける今、休んでいる人にいかにスムーズに職場復帰してもらうかが大きな課題となっている。損失の大きさに気付いた企業では、病気を未然に防ぐ職場づくりにも取り組む。心の健康対策は職場全体に影響を与えつつある。
メンタルヘルス対策では従業員と産業医の面談なども欠かせない(川崎市にある富士通の川崎健康推進センター)
関西地方に暮らす30代の男性は有名大学を卒業し、大手企業に就職。5年ほどたったある日、仕事上のミスについて上司から強くしかられたことをきっかけに「頭がうまく働かない感じ」になり、出社できなくなってしまった。
医師から「うつ状態」の診断を受け1カ月休んで出社したところ、また数日で出社できなくなる。今度は3カ月休んだが、休暇が終わるころ、動悸(どうき)・息切れ感に襲われ、また復帰できず。結局、2年休職し、退社に至った。
厚生労働省の2007年労働者健康状況調査(5年ごと実施)によると、過去1年に心の健康問題で連続1カ月以上休職または退職した労働者がいる事業所は全体の約8%。その後さらに増えた可能性が高い。
このため、同省では「職場復帰支援の手引き」を作成したが、それでも「うまくいかない」との声が企業からあがる。中外製薬もそんな企業の一つだった。ところがここ数年劇的に効果をあげはじめた。
以前は職場復帰して1年のうちに約半数(46%)が再発してまた休む状態。これが10人に1人以下(8%)に減った。同社の統括産業医、難波克行医師は「ポイントを3つに絞ったことがミソ」という。
1つ目のポイントは「復職判定」。従来はその人の主治医が「復職可能」と診断すればすぐに復帰することが多かったが、これに加え生活リズムの安定を条件とした。毎日同じ時間に起きて外出、図書館などで一定時間過ごして帰宅するといった生活を2週間ほど続けることができるかどうかを見る。
2つ目は「復職後の負担軽減」。従来は1~2カ月すれば通常と同じように働いてもらっていたが、半年間は仕事量を減らすと決めた。3つ目は「休職中・復帰後の支援体制の確立」。休職中も復帰してからも毎月1回は産業医と面談してもらい、産業医はその後、人事担当者と対応を話し合う。本人に安心感が生まれ、復帰後も職場任せではない適切な対応が取りやすい。
難波医師は「復職はうまくいきつつあるが、病気の発生率に大きな変化はない。発病の未然防止は課題だが、その方法はまだ確立していない」と話す。
そんな中で意欲的な取り組みを始めた企業もある。富士通は役職定年を迎えた50代後半の社員の中から人望がある人を選び、「職場づくり支援スタッフ」という人事を発令している。社内に約100ある本部ごとに1人配置する計画で、現在約半分まで達成した。
各職場の従業員の勤務状況などからメンタルヘルス上の不調者を見つけてその原因を探り、職場幹部社員や人事部門と相談しながら不調者が出ないような「健康で活力ある職場づくり」を目指すのが役割だ。個人単位の仕事が増え社員が孤立しがちな職場では、同スタッフが音頭を取ってコミュニケーションを活性化するための研修会を開くようなこともある。
導入から4年。同社の健康保険組合がうつ病による休職者に出している傷病手当金に減少傾向が見え始めた。三宅仁健康推進本部長は「従業員を大切な労働資源ととらえ、その健康に投資するという経営姿勢が生きてきた」と話す。
「ワーク・エンゲージメント」。聞き慣れない言葉が注目を集める。オランダの学者らが提唱した概念で「仕事に誇りややりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て生き生きしている」状態。この実現が究極のメンタルヘルス対策という。
「従来の対策は一部の不調者だけが対象。職場の大部分には関係がなく、経営上もあまりメリットを感じなかった。ワーク・エンゲージメントは職場全体が対象で、個人の健康度アップと職場の活性化の両方が可能になるので、企業の関心も高い」(東京大学の島津明人准教授)。心の健康対策は職場自体を変えていく可能性も秘めている。」
この指摘に学び、より良い日本にするために、社会全体で心の健康対策を進めるべきではないかと思います。