昨日は午前中の中区での会合の後、地元に戻りご挨拶。年末の何かと多忙な時期ではありますが、「このままじゃ年が越せない」とのお話も。就職活動中の学生さんのいるご家庭での話です。就職氷河期と称するほどの今の時代。日本を取り巻く環境が大きく変化し、これまで日本社会が築いてきた「終身雇用」を前提する「一括採用」との人材採用手法が適用されにくくなっています。日本以外の国に近づいているとも言われます。
また、以前も書きましたが、大学生の就職に特化しますと、今から約20年前の1990年頃の大学進学率は約40%強。現在は60%を超えています。これは大学卒業生の就職希望者数が単純に1.5倍に増えていることを意味します。では企業の採用数が増えているかと言えば、お察しの通り長期低落状態にある景気状況と海外展開の拡大により減る方向にあります。道理で考えても狭き門。政治は経済・雇用を拡大することが大きな役目。また、労働行政は国が権限・財源を握って離しませんが、殆ど改善することのない小手先の対策ばかりが目立ちます。現場に近い都道府県や大都市にそれらを移譲すべきです。
しかし、仕事を見つけないわけにはいきません。就職合同説明会には長蛇の列。そこに並ぶだけで疲れてしまう状況とか。
そうかといって企業が採用をしていないわけではありません。昔のように大きな網を張って採用する時代から、小さな的を射るような採用方法へ。「どこの大学の学生か」という考え方がなくなったわけではありませんが「何ができる学生なのか」という部分を注視しているとの話もよく耳にします。相思相愛の相手を探しているとも言えます。
先日、日経新聞の「就職探偵団」というコーナーで「採用担当者に聞く『こんな学生はいらない』」という特集がありました。記者が企業を直接取材した内容を懇談会形式で紹介したもの。ご参考まで。
「企業の採用担当者は面接などで多くの学生に接します。年間数千人と会うという人もいます。なかには採用したくないと思わせる学生もいるでしょう。今回の就活探偵団は年末特別編。「こんな学生はいらない」というテーマを中心に採用担当者らに取材した話を覆面座談会の形にまとめました。あなたは大丈夫?(業界名は採用担当者の業界)
■保護者同伴で…
――2013年度入社組の採用活動は12月1日に解禁となりました。例年よりも2カ月遅いスタートですが、違いはありますか。
商社 受付開始の12月1日0時過ぎからホームページにアクセスが殺到、朝出社して確認すると数千も届いていました。危うくサーバーダウンを起こすところでした。こんなことは初めてです。
損害保険 大学へ出向いて開催するセミナー参加者は昨年に比べ倍増しています。先日もある大学で300人程度を予定していましたが600人集まりました。資料も足りず立ち見の参加者も出るなど盛況でした。2カ月遅く始まった分、学生の意識は高いのかもしれません。
――意識の高い学生がいる一方で、「こんな人は採用したくない」という学生もいるのでは?
広告 2012年春入社向けの説明会のことですが、男子学生がお母さん同伴で参加していました。噂には聞いていましたが、我が社にも来たので驚きました。大学生も立派な成人ですから、親と参加するなんて自立できていない印象ですよね。責任感や決断力が足りないのかなと感じます。次の選考に進むことはありませんでしたね。今年はさらに増えるかもしれません。就活への親の関与が増えているので、そのうち保護者から「面接に参加したい」「なぜ落とされたのか」といった問い合わせの電話がかかってきそうで怖いです。
食品 採用の問い合わせ窓口に保護者から電話がかかってきたことがあります。応募資格や説明会の日程などを聞かれました。この程度の内容なら学生が自分で聞けば良い。
――能力的に採用を見送りたいタイプは?
証券 創意工夫ができない人です。言われたことをきちんとこなすことは非常に大事なことですが、指示待ちだけでは不足しています。待っていても仕事はできません。自分で考えて何を望まれているのか察知すること。大事な素養だと思います。
機械 確かに察知する能力が欠けている人が目立ちます。同年代で群れて幅広い年齢層との付き合いが減っているからではないでしょうか。ちまたでは空気を読む学生が増えているとも言われていますが読めてない人が多いですね。ちゃんと読めている人はあまり見かけません。疑問です。
玩具 当社のキャラクターが好きだと言っていたくせに、深掘りすると大して知らなかったというケースがあります。無理してあわせる必要ないのに、かえってこちらをガッカリさせます。
就活コンサルタント 採用担当者にこびを売る学生はいますね。「御社の商品が大好きです」と採用担当者に言っても戸惑うだけでしょう。福利厚生を真っ先に聞く学生も印象が悪いです。働く動機はそれだけ?と思ってしまいます。この手の学生で優秀な学生には会ったことがありません。
■寝癖と区別が…
――外見で問題がある場合は?
自動車 身だしなみには気をつけて欲しいです。ズボンのしわをのばすとか、シャツの襟汚れがないか確認するとか…どんなに良いことを面接で話しても響いてこないです。本当にこの面接に通りたいと思っていれば、身だしなみも気をつけるはず。本命企業ではないのかなと思ってしまいます。本気なのに、その程度の気も回らないのでは、お客さんと接してもらうのは無理だと思ってしまいます。
印刷 爪が伸びているとか、靴の汚れとかも目立ちます。雨の日なら分かりますが、晴れているのに靴が泥だらけなら理由を聞きたくなります。
建設 髪形はキチンとしてほしいですね。男子学生でも耳が隠れるぐらいの長さの髪で面接に来る人がいます。寝癖と区別がつきづらい無造作ヘアも気になります。今のトレンドかもしれませんが、役員面接には上げにくいでしょう。清潔感のある髪形で来て欲しいです。悪い意味で目立ってしまいます。
住宅 スーツなのに、スニーカーを履いてリュックサックを背負ってきた学生が来ました。そもそもスニーカーはスーツに合いません。
証券 学生も毎日忙しくて大変なのは同情します。でも入社したらもっと大変です。ヨレヨレのスーツで営業に行かれたら困ります。ビジネスパーソンにとってスーツは戦闘服ですから、手入れにも時間をかけて欲しいところです。
――エントリーシート(ES)の段階でダメな学生もいる?
損保 明らかに他社と同じ内容で送ってくる学生ですね。ネット応募が始まってから増えました。自己PRならまだ分かりますが、志望動機までコピペ(パソコン内で文書を複製して貼付すること)して、かわいそうなことに修正をし忘れたまま届くエントリーシートもあります。例えば当社は損害保険の会社ですが、「食品会社で頑張りたい」と書かれていたり…こちらからその食品会社に送ってあげようかなと思うことがあります。
証券 当社のホームページの採用情報に書かれた文言をコピペしてきたエントリーシートもありましたよ。「エントリーシートなんてちゃんと見てないだろう」と思って送ってきたのでしょう。
食品 うちには自己PR欄に「v」だけ書かれたエントリーシートが届いたこともありました。何だろうなと思いましたが、きっとキーボードの操作ミスでしょうね。「コントロール」と「v」のキーで貼りつけるつもりで失敗したのでしょう。残念ですね。
――学生のウソは見抜けますか。
■志望先の批判は…
広告代理店 ウソをついているとだんだん論理が破綻してきます。就職難のなかで必死なのはわかります。ただ内定を得ることが目的となってしまっている。本当の自分を見せずに万一採用されてしまうと、入社してからもウソつかないといけないとか、その人には合っていない働きづらい会社だったりであるとか、不都合も出てきます。不幸なことだと思います。
運輸 だいたいの場合、小細工しても分かります。印象はかえって悪くなりますし、時間の無駄です。
――正直であっても面接でイヤな学生は?
製薬 自分が準備したことだけ話す人は魅力を感じません。面接してもその人らしさが出てこないから。
広告 最近増えてきたのが自分の考えを一方的に話して帰る学生ですね。例えば、当社の批判ばかりしておしまい。面接官に揺さぶりをかけて、目立とうとしているのかもしれません。ひょっとしたら面接の対策本に新手の手法として紹介されているのかもしれませんが、良い評価にはつながらないです。
食品 当社の廃棄物が多いと延々聞かされました。きちんとデータも集めていて、その努力は買います。でも、肝心の解決策はまったく話さない。意図が分からず、仕方ないので「すみません」と謝っておきました。あの学生は何がしたかったのかいまだに疑問です。
航空 最近は減りましたけど飛行機に詳しい方です。専門誌を読むのが趣味のような方です。鉄道にも多そうですね。決して悪くはないのですが採用のための面接で「なぜA路線にこの機材を飛ばしているのか」と聞かれても困ります。
機械 学生ではなく採用担当者に問題がある場合もあります。例えば「志望動機」や「5年後、10年後どうありたいですか」という質問は一般的ですが、よい質問には思えません。学生は企業人としての仕事を知りませんし、これまで真剣にそんなことを考えたことなんてないのですから良い答えなど返ってきようがありません。採用担当者が魅力を引き出す努力を怠っている気がします。優秀な学生数は以前から変わりないように思いますよ。
――最近の若者は元気がないと言われます。
■受け答えが下手でも…
運輸 そんなことを感じたことはありません。最近の若者は海外へ行きたがらない「内向き志向」だと言われていますが、海外転勤の志望者は増えていますし元気いっぱいだと思いますよ。
証券 女子学生の元気さが目立ちます。「男は草食、女は肉食」になっているのかも。選考でも女性が元気でもう少し男子学生にも頑張って欲しいところです。
運輸 単純に成績で上位から採用すると女性が8割を占めてしまいます。男子学生には「一生懸命さ」「将来伸びそう」といった理由をつけて半分まで人数を増やしています。
――最後に面接で印象に残った学生を教えてください。
証券 面接中の受け答えがいまひとつで、当落線上の学生がいました。学生が面接の最後に「今日はうまく受け答えできませんでしたが、入社したら絶対に成果をあげます」と熱心に話してくれました。他社でも同じように訴えているとは思えなかったので内定を出しました。非常に粗削りでしたが、正直に自分をさらけ出している。面接官も人間ですので熱意が伝わりました。
衣料 3月の東日本大震災直後の面接に来た学生のことです。明るい色のスカートをはいた学生がいました。落ち着いた色のリクルートスーツを着るのが一般的なのに、なぜ明るい色を着たのか理由をたずねました。すると「震災でみんなの心が暗くなっている。みんなも自分も明るい気持ちになるのではないかと思って」と話してくれました。印象に残りましたね。いまでも名前を覚えています。
■探偵団からひと言
性格や能力、人生経験はすぐには変えられない。まずは奇をてらわず、自分を信じてぶつかろう。」