時事通信によりますと、米国の格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は27日、財政悪化を理由に日本国債の長期格付けを従来の「AA」から「AAマイナス」に1段階引き下げたと発表。同社による日本国債の格下げは2002年4月以来8年9カ月ぶり。上から4番目のAAマイナスは信用力には問題ないとされるものの、財政不安が取り沙汰されるスペインを下回るとか。財政再建の行方によっては、国内の長期金利に上昇圧力がかかり、景気回復の足を引っ張る危惧があるとしています。また、政府民主党の債務問題に対する一貫した戦略が欠けていることが大きな原因のひとつとか。
これに対し、読売新聞によりますと、国際通貨基金(IMF)の財務局長が「日本が中期的に全面的な財政再建を必要としているのは明らかだ」と指摘。また、日本国債の9割以上が国内で保有されていることについて、「財政再建を避ける理由にはならない」と述べS&Pの判断を理解。同局長は財政再建の実現には、税制改革による歳入増が重要になるとの見方を示した上で、「日本の消費税率はいまだに極めて低く、引き上げ余地は十分にある」と強調。IMFは同日発表した財政報告書でも、日本の財政再建の遅れを指摘しているそうです。
しかし、昨夜のニュースでも悲観的な見方を羅列する報道機関もありましたが、悲観的であるでけでは良くはなりません。どうしたら良くすることができるか?いくつかの処方箋を明示していくことが必要ではないでしょうか。
先日、日経新聞のコラム大機小機に「景気をよくする財政再建策」と題して掲載されていました。
「現在の日本の名目国内総生産(GDP)は1992年とほぼ同じ水準であり、20年近く経済規模の停滞が続いている。実質GDPは当時より12%ほど増えているが、これは物価の下落に対応している。
こうした長期不況に対応して減税による景気刺激を行い、また高齢化に応じた年金や医療費の増加があったため、日本の財政赤字は巨額になってしまった。日本政府の財政赤字や、その累積額である政府債務残高は、今や財政危機に陥ったギリシャやアイルランド以上に悪化している。
日本政府の債務の大部分は日本の家計や金融機関に保有されている。これまでは経常黒字の継続により円高が続いてきたため、日本の国債や預金から外貨への資金シフトは限られ、国債金利も1%台前半と低い水準が維持できた。
しかし政府の総債務がGDP比200%を超え、政府が保有する金融資産を控除した純債務もGDP比100%台になると、長期金利が上昇し始めるのは時間の問題だ。そうなれば、利払い負担の急増で財政は破綻する。実際、日本政府の高官や海外投資家は、日本の財政に対する懸念を募らせている。
大部分の政治家も、本音では財政再建が待ったなしと分かっているが、増税や支出削減による景気悪化を恐れて何もできないのではないか。通常ならば金利を引き下げて景気悪化を避けながら財政再建を行う普通のマクロ政策運営も可能だが、日銀には金利引き下げ余地がなく、動きがとれなくなっている。
しかし景気を悪化させない財政再建は工夫さえすれば可能だ。具体的には、実質的な直接税である社会保険料の引き下げと間接税の増税が考えられる。例えば消費税を毎年2%ずつ5回引き上げ、合計10%上げる一方で、国民年金や医療などの社会保険料を大幅に引き下げれば、増税のほうが社会保険料引き下げより多少大きくても景気刺激効果を持つ。社会保険料の負担減で企業が正社員を雇用しやすくなるほか、段階的に消費税が引き上げられていけば物価の先高観が出てくるため、消費の前倒し効果も発生する。
さらに、二酸化炭素(CO2)の排出に対して環境税の課税を行うとともに、その税収を使って法人税の大幅減税と企業の省エネ投資促進、住宅の断熱対策への補助金強化などを実施することが考えられる。」
賛否はありますが、悲観論だけでなく、こうした前向きな議論を出していくべきではないかと思います。