公明党 福生市議会議員 青木たけし

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会派視察③兵庫県伊丹市

活動日記 / 2019年12月16日

11/8(金)
午後は兵庫県伊丹市へ。

大阪府との県境に位置し、神戸市あるいは大阪市など大都市圏から公共交通機関で30分ほどで往来できる利便性の高いベットタウンとして発展してきた伊丹市では、改正生活困窮者自立支援法を受け、任意事業にも積極的に取り組むとともに、相談から生活支援、就労支援へとノンストップでつなぐ、「伊丹方式」と呼ばれる先駆的な就労支援を展開しています。

伊丹市では、平成14年ごろ、市内に所在する大手企業の工場・生産拠点等が整理縮小され、また海外進出に伴う撤退が進み、大規模なリストラが行われたことから工場労働者が職を失い、また公共事業の縮小により、土木・建築関係、それに付属して警備員等の失業者が増え、40代50代の働き盛りの男性の生活保護相談が多くあったという経緯があります。

新規相談受付数は2000年前半ごろいったん落ち着きましたが、リーマンショック時にまた急上昇。近年は雇用情勢の改善でカーブはやや緩やかですが、低年金等の理由から高齢者の比率は上がっているとのこと。令和元年8月現在の生活保護受給者は3,396人、人口比率1.71%で、政令市である神戸市を除くと、兵庫県の中では上から3番目に多い状況です。
このような背景・状況の中、生活困窮者自立支援事業として複合的相談に応じる『くらし・総合サポートセンター』を設立し、取り組みを進めています。

運営上の特徴として、庁内連携の強化と地域との連携強化が必須と捉え、社会福祉協議会の職員を在籍出向という形で生活支援室に迎え入れ、相談支援員として配置していることが挙げられます。また、ひきこもり支援強化のため、2019年度よりアウトリーチ支援員を配置しています。
40代・50代の中高年齢層の相談者に見られる特徴として、①社会からの疎外(失業により、社会における居場所がなくなることで、家族以外との接点が無くなる)②自身喪失(若いころの成功体験を再出発の最低限の条件とする傾向から、現実との乖離が生まれる)が挙げられ、ひきこもりやセルフネグレクトにつながり、それが長期化・常態化していることから、3つの『自』を中心に据えた支援を実施しています。(『自』信の回復:本人の出来ること強みを検証し、成功体験の機会を得られる場面を提供する、『自』己覚知の促し:どうしても超えられない『壁』は何かを考え、場合によっては医学・心理学的な判断を仰ぐ、『自』分らしさの確立:社会的な『こうあるべき姿』ではなく、個々の特性に応じた目標を設定し、持続可能な『労苦』の程度を見い出す)

生活困窮者(特にひきこもり経験者)への就労支援については日常生活の自立の次のステップとして『就労準備支援事業』を展開し、社会参加の機会を提供することで『就労訓練事業』(いわゆる中間的就労)を経て一般就労へとつなげています。

就労準備支援事業は就労体験を通じた訓練として位置づけ、生活習慣の確立のための指導や地域活動への参加等の日常・社会生活自立のための訓練を行っており、プロポーザルにより平成28年度から企業組合伊丹市雇用福祉事業団に委託し、実施しています。事業者との協定による就労体験事業所数は現在20社。事業の利用者は圧倒的に男性が多く、ほとんどがひきこもり経験者となっています。

就労訓練事業は、直ちに一般就労を目指すことが困難な人に対し、支援付きの就業の機会の提供などをおこなう就労訓練事業の場の提供等を支援するもので、都道府県が事業を認定する。就労訓練事業は雇用型(最低賃金を保障し、一般作業従事者とほぼ同等の作業内容で、労災保険や雇用保険に加入する)と非雇用型(1回参加につき500円を支給し、一般作業従事者よりやや軽めの作業内容で、作業中の事故等にはボランティア活動保険で補償する)に分類されます。また、事業実施においては市の行う事業を優先発注しており、ここが伊丹方式といわれる部分との事。

こうした中間的就労については、①あせらない②怒らない③できること・得意なことを見つける④「変化がない」は「後退しなかった」と思う⑤社会的正論ではなく「Iメッセージ」で評価する の5つの姿勢を大切にしながら、被支援者が『またうまくいかなかったらどうしよう』や『仕事場に迷惑を掛けたらどうしよう』という不安に寄り添い、周囲に迷惑をかける心配がないこと(急に休んだり、遅刻したり、早退してもいいこと。また、作業に当たってはノルマ(作業目標)がないこと)や、個人の状況に合わせたシフトが組めること(例えば朝が苦手なら昼からでもいいこと、週に1回でもいいこと)などを伝え、自立に向けた一歩を踏み出せるよう支援しています。

全体的な感想としては、事業の実施にあたっての徹底した分析と、相談者に寄り添った支援に強い感銘を受けました。こうした事業においては、社会的正論で対応しがちですが、発想を柔軟にし、また相談者に向き合っているからこそ結果として現れているのだと思いました。事業として当然結果を出さなければならないものですが、何らかの理由によって社会から孤立し、困窮している相談者にとって、結果としてうまくいかなかったとしても、「困った時に親身に相談に乗ってくれた。動いてくれた。」という思いが残ることで、市に対する信頼、ひいては地域に対する信頼につながり、いずれ相談者の自立につながるものと思います。
今回の視察成果を福生市における生活困窮者支援の取り組みに生かすことはもとより、議員として、市民に接する際の心がけとして深く刻んでいきたいと思います。

伊丹市役所での視察の後、企業組合 伊丹市雇用福祉事業団を訪問。
企業組合伊丹市雇用福祉事業団は、生活困窮者自立支援法に基づく『就労準備支援事業』『認定就労訓練事業』の実施事業者として、自治体、民間企業と連携し、駐輪場整備や企業の外構清掃など、困窮者が働ける職場づくりを推進するモデルとして、ひきこもり状態にある人の社会参加にも成果をあげています。

生活困窮者に対する支援については、早期の食料と現金の継続支援が必須と考え、①呼び水:現金を渡せる仕組みづくり(インセンティブ効果)②地域資源の活用:公共事業とのマッチング(公的就労支援)③地域経済循環:働ける対象者は早期就労に導く(財政効果)をポイントに取り組んでいます。

生活困窮の相談者は失業に加え、所持金なし、ライフラインも停止している場合も少なくなく、そうした相談者に対しては、官民連携が重要との事。民間力として緊急的な対応(食事提供、仕事のあっせん、現金提供)を行い、同時に行政力として就業に必要な国民健康保険加入手続きと健康診断の申請を行うことで、最短で午前中半日で就労を開始、半日の就労で給与を得られ、また数日分の食料を提供することで翌日の就労につなげ、それが日払いから週払い、月払いになり、自立へとつなげていくとの事。

場合によっては、就労に向けて必要なもの(入浴や散髪等の身支度、面接に必要なスーツや自転車、携帯電話といった生活用品)も貸し出し、緊急的な日払い就労を続ける中で未納・滞納を含む債務整理、あるいは家計支援などを行っており、制度と有機的につながりを持っていることが理解できました。

生活困窮者支援の在り方について考えさせられたのと同時に、行政が取り組める領域にも限りがあることも認識できました。福生市における取り組みの推進に生かせるよう、今後も継続して情報収集していきたいと思います。

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