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稲毛区 櫻井秀夫
hsakurai2016@yahoo.co.jp

話題の報告書

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」を読みました。
一地方議員のくせに、平和安全法制の法案や、森友学園の騒動で出た理財局による改ざんをされる前の文書など、全部読まないと気が済まない性質。
でも、地方議員だろうが、国会議員だろうが、それはこっちの問題。
地域の現場では一番知りたがっている話題については、今後も自分なりに(印象も含めて)答えて参ります。

まず、世間で勘違いされている点から指摘します。

①報告書の性質
最大の勘違いは、年金の担当である「厚労省」ではなく、担当外・専門外の「金融庁」の報告書をもとに、年金についてのそもそも論を議論している点にあります。
おそらく、金融庁も世間の反応に驚いたと思います。
金融庁が今回の報告書で問題提起した成年後見人と資産運用の問題や、金融商品のリスク管理の問題ではなく、本題に入る前の年金のことで炎上するとは…
では、この報告書はそもそも何のために?
この報告書は、
「厚労省」が「年金生活者」の現実について書いた報告書ではなく、
「金融庁」が「高齢の顧客」に金融商品の購入を推進するための報告書です。
金融庁の目線にある国民は「顧客」で、その生活水準は年金だけで生活している国民ではなく、運用すべき資産がある国民です。その目線において彼らの提示したモデルは、その分野においては当たり前で、当初は何を騒がれたのかも分からなかったと思います。
その彼らが作成した報告書は、まさに「投資勧誘パンフレット」です。
役所がここまでやっていいのかと、目を疑いました。
金融庁の本来の仕事とは真逆では?
金融庁の設置目的は、預金者、投資者などの「保護」や金融の「円滑化」です。
ノーパンしゃぶしゃぶ(!)で大問題になった財務省から、適切な機能分化のために、金融分野を切り離すために設置されたのが、金融庁の本来の役割のはず。
そんな金融庁が、なぜこんな販促の役割を?
そこには、霞が関での生き残りをかけた戦略が。
そして、予算要求や省益、課益のためになる統計を作ったり、引っ張り出してくることは、彼らにとっては日常茶飯事でルーティンワークです。
この感覚は、地方自治体の部局課とは次元が違いますし、幹部になれば、また、幹部になる前から幹部になることが見込まれている職員であれば、なおさらです。
では、その統計、数字の問題は?

②「老後2000万円問題」
まことしやかに、この名称を独り歩きさせていますが、この「2000万円」の算出モデルが極めて不適切です。
実収入209,198円に対して実支出263,718円で、差が5.5万円とする(総務省や厚労省が使用した)データを、金融庁が「毎月の赤字額」と勝手に位置付け、これを30年間分で単純に足して「2000万円」を「不足」としたことです。このモデルについて、

(1)この実支出は「老後の必要額」とは全く関係ありません。
この世代で現在行われている生活レベルの問題です。
この実支出額を「老後に必要」とする根拠は皆無です。
なので、金融庁の問題提起に数値上の根拠はありません。
百歩譲って、このモデルを採用して吟味しても…

(2)モデルとなっているのは夫65歳以上・妻60歳以上の無職で「平均2,484万円の貯蓄」(!)をしている世帯です。
この貯蓄額を多いと思うか、少ないと感じるかは個人差でしょうが、この「平均値」に意味がないのは、例えば高齢者Aが1億円、BとCとDが貯蓄なしでも、これぐらいの平均値になります。その程度の信頼性の数字です(一般的には、平均値ではなく中央値を使います。)

(3)このモデルの年齢層は、一般的にも支出が多い世帯です。
すなわち、リタイアして旅行や次の新しいスキル・趣味や時間の使い方に挑戦する世代です。
実際、このモデルの支出のうち娯楽や趣向品などを良く見ると、先の26万円の支出のうち8万円前後を占めています。
ですから、この報告書の資料でも数字が出ていますが、高齢者の中で最も支出が高く(60歳よりも65歳の方が高い!)、全世代の平均値よりも高いのです。
そして驚くべきは、同じ資料で70歳以上は支出が激減して、全世代の中でも最も低くなることがグラフで示されているのに(活動量から考えても当然なのに)、そのことを全く無視して、老後の30年間を65歳の時の支出額で単純に掛け算して算出しています。
この支出額、そしてそこから算出された「2000万円」は、明らかに、意図的に水増しした数値と言わざるを得ません。
ちなみに、5.5万円の差額(×不足額)は近年埋まってきて、とっくに4万円台になっていますが、そのような直近の数値を使わずに、既に古い大きい差額の数値を使っています。…いい加減にしなさい…
添付した写真でも分かるように、この話題になったモデルの説明資料は、金融庁が作成せずに、配られた資料の画像ファイルを貼り付けただけなので、ピンぼけです。それだけでもイラっとします。

(4)他にも不思議な数字の使い方が散見されます。
たとえば、老後は退職金にも頼れない的な話をするために、
「退職金制度の採用企業数や退職給付額の減少傾向が続く可能性がある」と妙な表現をしていますが、そのページの表やグラフでは、企業数が増加していることにはやはり言及しない。また、退職給付額も「ピーク時から約3~4割程度減少している」としていますが、その「ピーク時」はバブル直後の時期。そことの比較って…
「金融商品を販売促進するパンフレット」では当たり前の提示ですが。そのパンフレットで、「年金だけでもやり方次第でどうにかなりますよ」と言ったら、それこそ大変です。

③騒いだ人が問題?
この報告書の問題はかなり明らかにしましたが、この報告書自体はそれほど強気ではなく、以下のようなくだりがあるくらいです。
「(5万円、2000万円の不足額について)この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。当然不足しない場合もありうる」(p.21)
と明記しているのに、尻馬に乗った報道関係者・政治家が最も問題・悪質かもしれません。
この報告書の報告「案」が発表されたのが、5月22日付。
最初に取り上げたのは、朝日新聞の5月23日付の朝刊。
かなりのスピード感で、質的に異なるものを「政府の方針転換」かのように大胆に切り取った朝日新聞の報道に疑念を持つのは、うがった見方でしょうか。
朝日新聞の購読歴32年の一読者としては、いつかこの経緯こそ知りたいものです。
それにしても驚いたのは、最近は、役所の数字の改ざんなどが非常に問題視されてきましたが(法案の判断に影響のない資料のミスでも、法案への審議拒否がありました。)、この問題に限っては、役所のいいかげんな数字を追及するどころか、そのデタラメな数字に乗っかって、政局を動かそうとする人たちがいることです。
また、先日昼休みに見たTBSのテレビ番組では、このような状況にもかかわらず、この報告書の趣旨と意図に沿って、金融商品をずっと紹介・解説していました。財務・金融の手下?

私の個人的な感想としては、
以前、トップページで呟きましたが、
報道関係者・政治家で騒いでいる方で、
この報告書の背景・目的を理解していないなら「無能」ですし、
この報告書の背景・目的を理解しているなら「悪意」でしょう。

 

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