政府の政策を多角的に点検し、現実的な対案を示す。野党がそんな論争を仕掛けてこそ、国会に緊張感が生まれよう。

安倍首相の施政方針演説に対する代表質問が始まった。先月の就任後初めて質問に立った民主党の岡田代表は、首相の経済政策「アベノミクス」についてPenguins「成長の果実を分配する視点が欠落している」と批判した。

低所得層が増加し、格差が拡大しているとも主張した。

首相は「税や社会保障による再分配後の格差は、おおむね横ばいで推移している」と反論した。

どの指標を重視するかで、格差の現状認識は異なる。重要なのは、世代を超えた格差の固定化を避けて、「機会の平等」を確保することだ。子どもの貧困対策や教育の充実、非正規労働者のキャリアアップや処遇改善が欠かせまい。

岡田氏は格差是正策として、富裕層を対象に、所得・相続税の課税強化を検討するよう求めた。

だが、行き過ぎた所得再分配は、経済や社会の活力を失わせる。民間活力を喚起し、「稼ぐ力」を高めて、国民生活の向上を図るアベノミクスの方向性は妥当だ。

成長を維持しつつ、いかに格差を是正するか、与野党は、さらに議論を深めてもらいたい。

疑問なのは、岡田氏が、集団的自衛権の行使を限定容認した政府の新見解について「立憲主義に反する」と批判したことだ。

新見解は、従来の見解と一定の整合性を維持した、合理的な範囲内の憲法解釈の変更であり、批判は当たらない。民主党は、集団的自衛権行使の是非について党見解をまとめることが先決だろう。

今夏に発表する戦後70年の首相談話に関し、岡田氏は、村山談話の「植民地支配」「侵略」などの表現を明記するよう求めた。

首相は、先の大戦への反省や戦後の歩み、今後の国際貢献などを盛り込む考えを表明した。

過去への反省を踏まえ、未来志向の談話を目指す方針は適切である。国際的に注目される中、表現には工夫が求められる。

維新の党の江田代表は、「アベノミクスの方向性自体には賛成」と言明しながら、規制改革などが不十分だと指摘した。

政府の農協改革は「看板の掛け替え」に過ぎないとして、非農家の「准組合員」の利用制限など抜本的改革の断行も主張した。

維新の党が、規制改革や安保政策で、民主党と異なる視点から建設的な提案を行う意味は小さくない。その姿勢を維持すべきだ。

2015年02月17日 01時24分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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